この結婚はどうせ
うまくいかない
【36話】
レビュー考察
カッセルの後悔
※このブログはネタバレありなので、閲覧ご注意ください。
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イネスが呼吸困難で倒れている間、ラウルがカッセルに、過去のイネスの病状を伝えます。
【36話】
軍医のマーソ大尉はラウルの話を聞きながらイネスの診察をすすめるが、原因は分からず、過労ではないかと。
(ちなみに、前は『マッソ大尉』だったけど、いつのまにか『マーソ大尉』に翻訳変わってました。ルシアーノも、最初はルチアーノだったけど、いつの間にか翻訳変わってて。この漫画よくあります。)
マーソ大尉曖昧な診察結果に、カッセルは怒ります。
そんな彼に、ラウルが真実を話し始めます。
イネスが16歳から、原因不明の病気であると。
16歳と聞いて、その頃の記憶をたどったカッセル。
確かに、あの頃から、全てが変わった、と。
イネスから、それまでうんざりするほど送られてきた手紙やプレゼントがピッタリとやみ、全ての社交行事も面会も拒否して、カッセルと会おうとしなくなった頃でした。
婚約契約では17歳で結婚する予定なので、15、16歳の頃のカッセルは、イネスとの結婚を前向きに考えていて、彼女を少しは笑顔にできるのではと考えていました。
イネスから全く接点を絶たれてしまったので、なんとか彼女に会おうとペレスに何度も足を運びますが、そこにあったのは、イネスの、男ではなく、ただの迷惑な子供を見ているような表情。
確かに、イネス的には、もともとカッセルは子どもにしか見えないだろうし、エミリアーノの夢で苦しんでた頃だから、今世の人生そのものを生きられていないわけで、今世の計画のための手駒であるカッセルなんて見えないし、見えても邪魔なだけですよね。
面会を拒否された数多くの日々の中で、怒りでもいいから彼女の関心を買いたくて、好きでもない女と仲良くしたり…。
わかります。
普通の、素直じゃない男女なら、そんな作戦もよくあるし、とにかく怒らせてでも自分の存在を認めてもらわないことには、対話することすらできないですしね。
彼がやけになって、初めて女と寝た日、取り返しのつかない過ちをおかしたと、死ぬほど後悔しました。
カッセルって実は、真面目だったんですね。
確かに遊び人のくせに、不倫を嫌がったりして、妙に真面目な兆候はあったけど、元々は純粋な真面目な少年だったんですね。
自分にとっての唯一の女性『婚約者』という存在に、憧れとか、理想とか、強い思い入れがあったのだろうし、『1人の人と添い遂げて幸せに暮らす』という価値観が強かったのでしょう。
だからこそ、その添い遂げて幸せになるはずの『婚約者』である、イネスとの関係がうまくいかないことに、人一倍悩んできたのでしょうね。
手紙では好きだって書いてくるのに、会うと冷たくて態度が悪いイネスの気持ちがつかめず、ちょっと外見も地味で、変人ぽくて評判の悪い生き方も不満だったし、最低限、人としても仲良くできない状態がストレスだったのだろうし。
それでも、極度のツンデレなだけで、とりあえずは好かれているはずだから、自分が本気で向き合えば心を開いてくれるんじゃないか…とか少年なりに前向きに考えていたんでしょうね。
とりあえず結婚は契約だし、イネス以外との結婚を考えたことがないわけだし、態度はイヤだけどイネス自体は嫌いなわけではないし、イネスが少しでも優しくしてくれたなら…たぶん一瞬で犬になる人間なわけですよ、元々。
それが叶わず、こじれまくったうえに、今度は自分の存在さえも消されて。
原作によると、他の女と寝てしまった後、極度の後悔で、自分がイネスのことを『好きだ』なんて思い浮かべただけでも、発作のような気が狂ったような気分になってしまったそうで、仕方なく負け犬のように士官学校に行き。
士官学校で、イネスのことを忘れようと、自分を虐待するように訓練し、任官後自ら望んで一年間の出征に出て。
まだ一度の誤ちを犯したばかりなのに、自分は元々『遊び人』の気質の人間なんだと思うことで、彼の心は楽になり。
元々『遊び人』の自分が、自分に関心もない婚約者を気にしてどうする?
イネスに対しての過去の想いを、全てなかったことのように消し去り、カッセルは初めて自由を得たのだそうです。
本当に、カッセル、健気で、ストイックで、真面目な少年だったんですね〜
結局は、『1人の女と添い遂げなければならない』という彼の過剰に真面目な価値観や理想が、彼自身を苦しめていたのであり、そこを振り切ったことで自由になったのでしょう。
イネスの苦しみに比べれば、単なる少年の色恋沙汰のように気楽に思ってしまっていたけど、
1人の少年の人生として考えた時、まともな精神的成長をしていないというか、6歳からのストレスの上に、その上、『人としての存在を認められていない』状態になってしまって、それはある意味人間としての根源的な苦しみだったように思います。
イネスが婚約者という、いずれ家族になる、切っても切れない関係だとするならば、心理的『ネグレクト』に近い状態というか。
もちろんイネス自身が病んでるから意図的なものではないんだけど、それに似たような心理的DVを受けるみたいな『無視』状態だったのだろうと。
一般的な10代の婚約者の『好き嫌い』とか『感情のすれ違い』とか『片思い』とか、そんなレベルじゃない、異様な状況だったのだと思います。
それが心を病んだ人との、接触の難しさであり、周りの人の方が病んでしまうという話もよくあることで、しかも、彼は彼女の状況を全く知らない10代の少年なわけで。
作為的に彼を操ろうとしていた子供の頃のイネスの方が、カッセルにとっては、まだ『人間』扱いされていたと感じるほどに。
つらい記憶を封印して、イネスのことを忘れて自由になったけれど、
心が擦り切れたような、本心なんて、もうどうでもいいような、ただ軽薄な感覚に身を委ねる日々だったのでしょう。
1人の女だけでは、まるで『恋人』みたいに思われるから、その関係濃度と相手の期待を薄めるために、多くの女と関係を持ち…
たぶん『抱かれたい男No.1』『国宝級イケメン』なわけですから、女の方から群がってくるわけだし、
カッセル的には、『処女と人妻には手を出さない』と決めていたそうだから、それを判別して拒絶するだけでも一仕事というか、彼が求めている以上に来ちゃった感で、さばくのに大変というか。
心は渡さないし、そもそも心を開いてはいけないから、ただ、軽い遊びとして、次から次へと…。
彼はイケメンな上に、公爵家の跡取りなわけですから、本気で狙ってくる令嬢達も多かっただろうし、イネスの弱みを探って破談に追い込もうとする策略も多かっただろうし、
それらをとにかく、蝶のように、華やかに、軽く軽くかわすことで、彼は自由を得ていたのでしょう。
そういう意味では、イネスが策略さえも出来ていない病んでいたその4年間が、計らずも、カッセルをイネスから引き離し、事実上の『遊び人』に仕立てたというのは、運命的だとしか思えないのです。
その『遊び人』の状態こそがイネスの望みであり、それでこそ結婚するのに意味のある男だったので。
イネスは、正気に戻ってからも『前世から遊び人だったからやっぱりね』くらいに見ていたでしょうけど、そこにはカッセルの長きにわたる暗い葛藤と、それと引き換えに、神の見えざる手が働いていたのだと言えるでしょう。
そうして、閉ざしていた恥ずかしい記憶の蓋を開けて、自分の本心をわかってしまったカッセル。
本当はずっとイネスを好きで、そして、今はすでに愛してしまっていることを…。
彼女の息が止まる瞬間を見たショックから、彼はもう自分を誤魔化すことなど出来ない男になり、ただ、イネスが目を開けて、彼の名を呼んでくれることだけを祈ります。
この作品、読めば読むほど深い話で、イネスの不幸は誰でもわかるし、イネスがおかしいこともわかるけど、
実はカッセルはカッセルで、かなり病んでいて、極限で反対に振り切れちゃって『遊び人』になってしまったのでしょう。
そして、彼はイネスの病気を知らなかったから、そんなバカな日々を過ごしてしまったと、心から後悔し涙します。
行動がバカで浅はかであるほど、そして深刻さに欠けた色恋沙汰であるほど、自分への恥ずかしさや、自己否定感、罪悪感も大きいことでしょう。
前世の記憶のあるイネスの方が、より苦しむ資格があるように思ってしまううし、実際、苦しんでいたけれど、
前世の記憶のないカッセルの一回の人生が、1人の人間として、イネスの3回分の人生よりも価値が劣るわけでは決してなく、彼なりに苦しんだことは事実です。
婚約期間を通じて、2人の行いは、客観的にはどちらも良いとは言えないけれど、どこか、2人のバランスを取るような『痛み分け』みたいな感じもします。
遊び人経験をしたことで、生真面目な枠が外れて、『清濁併せ飲む』みたいに、彼自身の器が大きくなったと思うんです。
だからこそ、イネスをからかったり、下品なこと言って怒らせたり、マイペースな図太さで論破したり、エロ攻撃で揺さぶったり、『優しさ』とか『誠実さ』だけじゃない、自由自在に全方向から、イネスの固い殻を破れる男になったような気がします。
それくらいじゃないと、人生3回目のイネスは、なかなか落とせないんですよ。
…そんなところで、今日は、ここまで。
では、次回またお会いしましょう。
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なんと声優さんが声を当てて漫画を読んでくれます。カッセルの声がイメージどおり✨初期の復習にもいいかも。