この結婚はどうせ
うまくいかない
【38話】
レビュー考察
カッセルの涙


※このブログはネタバレありなので、閲覧ご注意ください。


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思いがけないカッセルの涙に驚くイネス。


【38話】

カッセルがイネスに覆い被さるように、涙を流して、イネスの顔にポロポロと涙が落ちます。


信じられないように、驚き、見つめるイネス。


ベッドに座り直した後も、肩を震わせ、顔に手を当てて、泣き続けるカッセル。


『君は賢いけれど…今回だけは間違っている』と。


自分を欠陥品のように扱ったり、病気を何かの弱点のような扱うことを哀しむカッセル。


イネスは貴族社会の価値観がガチガチで、人間らしい心を封印してしまっているので、病気さえも、結婚契約上の取引の道具のように考えています。


結婚契約の上で、『欠陥品』というヴァレスティナ側の『弱み』を知られることで、エスカランテ側が優位に立ち、結婚を継続するかどうかの決定権を握れるのだと思っています。


イネスの考えが、貴族社会的には正解なんでしょうけど、人としてどうなの?とは私達は思います。


『君の弱みを使って一体何をするというんだ?君がこんなにも苦しんでいるのに』と言うカッセル。


私達は、これが、本来の人の心なんだと思うけど、貴族社会では、そんな甘い考えではやっていけないのだろうし、カッセルのような人は珍しいのでしょうね。



同じ公爵家同士でバリバリの貴族であるカッセルだから、話が通じるだろうと言う前提で考えていたイネスには、心をむき出しにして、『ただの人』のように涙するカッセルは、あまりにも想定外で、信じられない思いだったのでしょう。



そうして、カッセルはイネスの返事を待たずに、部屋を出て行ってしまいます。



ただ、この寝室を出るだけなのに、イネスには、彼が引き返せない道を進んでしまったような気分になります。


イネスの視線は部屋をさまよい、カッセルが忘れていった制服の上着を見つけます。


ちょっとした口実を見つけたように、制服の上着を手にすると、カッセルが取りに来る前に届けに行こうと。


『そんなつもりじゃなかった…』って言いながら。



けれど、なんとかカッセルをなだめて、謝って、慌てて関係を修復しようとしている、自分の気持ちに気付いて、ハットします。



『いや…その必要がある?』と。



いつの間にか、これからも添い遂げるはずの普通の夫婦のような気持ちになっていたけれど、そもそも離婚するための結婚なのです。


『たぶん、今こそ距離を置くのに最適な時期かもしれない』と、ゆるんだ心を必死に引き締めるように、思い直そうとします。



そんなイネスの思考を遮るように、突然ドアが開いて、カッセルが入ってきます。


『宝石は?どうだったんだ?買ったのか?』と。


拍子抜けするような質問だし、制服を取りにきたのかもしれないけど、とりあえずカッセルは戻ってきました。



                          *


イネスは台所で、アルフォンソの代わりに銀食器を拭いているラウルのもとに向かいます。

(高価な銀食器の管理は、盗難・紛失等を防ぐため本来執事の仕事だけど、『従者』という高い地位のラウルも、特別に代理管理権を付与されているのでしょう)


カッセルの様子がおかしいから、ラウルがどこまで話したのかを確認するために。


ラウルは、全てではないけれど、肺病で起き上がれない時期があったことはカッセルに話していました。


夫であるカッセルに話すことは当然であると言うラウルに、イネスは激怒します。


ちょっとした病気のようなものではなく、まさに『欠陥品』と呼ぶくらい、精神を病み、自らの身体に傷をつけていたことを、どこまで話したのか!?と。


自分とカッセルは、一生添い遂げるような夫婦ではないのに、と。


このことが、どれだけ弱みになるのか、と。


ラウルは、カッセルが弱みを利用するはずが無いと言い張るが、イネスの心配はそこではなく。


『私は、あなたのように、私に同情して、カッセルの足手纏いになることが怖いのよ…』と。



そうなんですね。


イネスがここまで頑なに、貴族社会のルールを持ち出すのは、もう『誰の人生も壊したくない』という、イネスの切なる願いからなのでしょう。



そして、カッセルに話すべきだというラウルに怒ります。



確かに、普通に考えると、一時的な心の病ではなく、4年という長い間、1日もベッドから出られず、毎日、呼吸困難になり、自傷行為まで繰り返していた…となると、精神病の類いの症状としても、けっこう重症だと思うので、本来は家同士の結婚契約は難しいレベルなんだと思います。


 

現代のような自由な恋愛結婚で『愛しているから、それでも良い』と言うケースなら、結婚できなくはないけれど、原因不明で再発する可能性もあるなら、本人同士もかなり覚悟がいるし、親も反対するレベルでしょう。



ただ、バレスティナ側としては、イネス達が婚約した時は、そんなこと想定していなかったし、17年のうちの4年の不調と考えて、今、完治しているから、結婚させたこともわかる気もするけど、


当時の医学では、精神的な病の、原因とか治療法とかが確立されていなくて、『遺伝』する可能性が恐れられていたのだろうから、血統を重んじる貴族同士の結婚では、アウトなんでしょう。



それに、何より体裁を気にする社会ですから、少しでもおかしな傾向があれば、表舞台に立たせることはできないわけで、修道院だったり、どこかに隠されてしまう運命でしょう。



イネスはそんな貴族社会のことを重々承知の上で、『遺伝』性の病気ではないから後継者を産んでも問題ないし、『離婚』が前提だから、カッセルに狂った妻の面倒を見させて苦労させるようなことも想定していないから、バレスティナの嘘を知りながら堂々と結婚したわけで。



ここで、計画を変えるなんて、貴族としてのカッセル・エスカランテへのデメリットが大きすぎるし、貴族社会を知り抜いているイネスだからこそ、その為の罪悪感になんて耐えられないわけです。



けれど、物事は隠されたまま進み、彼らは結婚し、既にカッセルはイネスを愛してしまっています。


カッセルは、まだ、精神の病だとはわかっていないし、身体の病気なら、出来る限りのことをしたいと思っている状況で、イネスはギリギリ、ここまでで終わらせたいわけです。



これ以上のことを知られることは、前世や回帰のことを話さない前提ならば、単なる本当に狂った人だと思われてしまうし、そんなことはイネスのプライドが許さない。



かと言って、前世や回帰のことを話したなら、現代でもヤバい人だと思われるくらいなのに、当時なら、なおさらでしょう。


しかも、とても人に話せるような人生内容じゃないし。


どっちにしてもクレイジーなわけです。



私はスピリチュアルカウンセラーなので、前世とかいくつか知ってますけど、普通の人には話さないし、夫にもスピリチュアルな仕事のことは知ってるけど、前世がどうとか詳しくは言ってませんね。


そんなこと言っても、普通の人は意味わかんないだろうし。



この辺、けっこうハードル高いんですよ。



特に『転生輪廻』がある仏教系の文化圏より、キリスト教系の社会の方が理解され難いかもしれないですね。



怪しいこと言うと、『悪魔が憑いた』とか『異教徒』だとかって、すぐ『異端』審問とかされますしね。



しかも、イネスは、『回帰』『タイムリープ』と言う、時間が巻き戻るような特殊な経験までしてますよね。



現代でも、スピリチュアルな人同士のクローズな空間でも、私は聞いたことないし、かなり驚かれる内容だと思います。



そう言う意味でも、イネスは自分という人間が、普通の人生を生きる人々にとって、どれだけ『特異』か、社会的にも宗教的にもリスクが高すぎることを重々承知しているので、ある意味、冷静に突き離して、俯瞰した目で『欠陥品』と呼んでいるんですよね。



これを『そんなことはない』と甘い言葉で擁護したところで、普通の社会の許容範囲を超えたものがどうなるか、分かりきっているからこそ、最初から自分で『欠陥品』と呼んだ方が、人から言われるより、余計に傷付かずに済むのだと思います。



どれだけこの世界で『異端』であっても、自殺することはもう許されないわけですから、

ただ、できるだけ人と関わらず、迷惑をかけず、静かに『余生』を過ごすこと、緩やかに『死』を目指すことだけが、イネスの価値観において、許される唯一の道なんですよね。



ただ、カッセルは、イネスとは、また違う価値観を持っている人だから、イネスの計算通りにはいきません。



そう言う意味では、イネスの『異端』さと、張り合えるくらい、カッセルも『常識』を超えていける器がある人だと言うことなのでしょう。



そこが、2人の魂のバランスというか、人智の及ばない神の采配なのだと思います。



この作品のテーマは、


社会の常識・価値観とかの冷たい狭い『頭・思考』の領域よりも、

愛とか本音とか正直さという暖かく広い『ハート』の領域で生きられるか?


と言う人間社会への挑戦とも言えると思います。


改めて、テーマが深いですよね〜


                            


…そんなところで、今日は、ここまで。


では、次回またお会いしましょう。



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なんと声優さんが声を当てて漫画を読んでくれます。カッセルの声がイメージどおり✨初期の復習にもいいかも。