建築基準法「水平距離」考察。 | 比嘉ブログ

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建築企画CAD「TP-PLANNER」開発者の日常・・建築基準法,天空率、日影規制講座などチャンプルーなブログ

 

1月18日日曜日。

いつもの土曜日比嘉ブログではなく日曜日アップ・・

昨日は、毎年恒例の明海大学不動産研究センターで不動産鑑定士の為のCAD講習会の為早朝から浦安に出かけた都合。

これは昨年5月のキャンパスの様子だがパチリを忘れた為、再使用。

 

まずはその様子から

 朝9時から始まった講座は比嘉は午前の講座で「日影規制の基本と建物想定への適用法」から、手計算で日影規制をクリアする方法も解説。

 そして「高さ制限の起源から天空率への変遷と効果」と建物想定に必須基礎知識を解説。

 午後は津田が世田谷の実事案を通じて用地情報の入力から建物想定の手順を解説。各人操作しながらの講座は5時まで続いた。

皆さん7時間の講座終了後も元気いっぱい・・比嘉は疲労困憊。

津田の講座中操作レスキュー隊としてヘルプ要請があると駆けつけ素早くリカバリーする方法をレクチャー(操作は各人操作が原則です。)

・・・で土曜ブログが日曜日になりましたといういいわけ話でした。

 

今週の講座から

今週はユーザー新加入メンバーの2回目の講座。

 前回日影規制の法文の解釈法と手計算による逆日影計算法とTP-PLANNERによる逆日影法および精度チェック法を解説した。

 今回はその復習に続き形態制限可能範囲に共同住宅6階建てを計画容積率も5㎡残しと限界まで追求する方法も解説。

 さらに斜線断面を確認するとNGとなり。高さ制限の解説から天空率計算の起源から解析法を解説。

 次回は最終回だ!頑張ろう!

  

先週末、大阪講座帰りの立ち寄りパチリ。

 

 さて講座を開始しよう。

 サポートセンターに寄せられる質問で行政による

取扱基準図例の解釈に関する事も多くいただきます。

そのような場合、その取扱基準を確認しますが地域により法解釈が異なる事があります。

 

 今回は、それらの異なる表記に関して昨日の講座のおさらいにもなりますが過去ブログをブラッシュアップして考察します。

 

 それらで判断が曖昧なのが水平距離の解釈です。。

 

 建築基準法56条高さ制限および56条の2日影規制では、2点間距離を「水平距離」と表記したり「幅」と表記する事があります。

これらを曖昧に解釈すると変形敷地等に法文を適切に適用する事が困難になります。

 

 今回の講座は、この事を下記テーマでお伝えします。

 

①法56条の2:日影規制における「水平距離」考察

②法56条:高さ制限および天空率における「水平距離」考察

 の順に建築基準法における水平距離を考察します。

 

 水平距離を広辞苑で確認すると

「水平面内の距離。水平面内に投影された2点間の距離」とあり

ます。同一面内の2点間の距離ゆえ一定の距離を保った状態を表現する際に使用されます。

 

 一方「幅」は、「物の横方面の、一端から他の端までの距離。」で一見変わりないように思えますが「幅」に関しては、次の記述で水平距離との違いが判ります。

 

「細長く続くものの、両端を直角に切る長さ。」とあり川幅などの例が示される事から複数の2点間の距離が存在する時に使用されると解釈できそうです。 

 

①法56条の2日影規制における「水平距離」考察

 

 法文の解釈でその違いが顕著に反映されるのが規制ラインの作図法です。

基準法第56条の2の条文から水平距離が記述された箇所を抜き出すと

 

第五十六条の二 一項

第五十六条の二 別表第四(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域(*)に掲げる建築物は、冬至日の真太陽時による午前八時から午後四時まで(道の区域内にあつては、午前九時から午後三時まで)の間において、それぞれ、同表(は)欄の各項(四の項にあつては、同項イ又はロ)に掲げる平均地盤面からの高さ(*)の水平面(*)に、敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える範囲において、同表(に)欄の(一)、(二)又は(三)の号(同表の三の項にあつては、(一)又は(二)の号)のうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。・・・・・。

 

「***敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える範囲において、******」

 

 規制ラインの基本的な作図法としては、「水平距離が五メートルを超える範囲」の記述から

図1

 このように「水平距離5mを超える」を判断する規制ラインは、このように作図されます。

*ちなみに10mラインの記述は、別表4の中で記述され

右上の赤枠で囲った箇所でやはり「水平距離が10m以内・・」と「水平距離が10mを超える・・」と水平距離と明記されています。

 

 その為、敷地境界線から5m、10mの2点間の距離が変わらぬ様に作図します。

 

 敷地の隅部からは、「水平距離」ゆえその距離を保持すると円弧状に作図されます。

 これが、規制ラインを作図する際の基本です。

 

第五十六条の二 をさらに読み進み3項の記述に注目

3 建築物の敷地が道路、川又は海その他これらに類するものに接する場合、建築物の敷地とこれに接する隣地との高低差が著しい場合その他これらに類する特別の事情がある場合における第一項本文の規定の適用の緩和に関する措置は、政令で定める

 

 

「***敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える範囲において、******」

の項は、「敷地境界線」と記述されますが3項で「道路、川等に面する場合・・」とある為

1項の「敷地境界線」とは、「隣地境界線」に対する作図法を意図します。道路に接する場合は、3項で政令で記述されるとあります。

 

3項で記述する「・・政令で定める。」の政令を確認すると。

 

( 日影による中高層の建築物の高さの制限の緩和)
第百三十五条の十二 法第五十六条の二第三項の規定による
同条第一項本文の規定の適用の緩和に関する措置は、次の各号に定めるところによる。
一 建築物の敷地が道路、水面、線路敷その他これらに類するものに接する場合においては、当該道路、水面、線路敷その他これらに類するものに接する敷地境界線は、当該道路、水面、線路敷その他これらに類するものの
の二分の一だけ外側にあるものとみなす。

ただし、 当該道路、水面、線路敷その他これらに類するもののが十メートルを超えるときは、当該道路、水面、線路敷その他これらに類するものの反対側の境界線から当該敷地の側に水平距離五メートルの線を敷地境界線とみなす。

 

 敷地境界線が道路等に接する場合の「幅」と記述されしかも2か所存在します。最後に10mを超える場合のみなし敷地の記述で「当該敷地の側に水平距離五メートル」で「水平距離」で記述されています。

 

この場合の「幅」の概念に関しては、

「建築基準法関係通達集 」「編集:東京都建築行政協会」「発行:東京都建築事務所協会」

では

図2

この様に道路等に面する隅部から複数の線分が作図されています

。それらが幅の概念です。角部からも道路の反対側までの距離は「幅」で記述されます。

 

・・・・ちょっとわかりづらいのでさらに実践的に解説された図が図3で道路幅が6mから12mに広がる例で解説されています。

 

 この作図法は、まず道路境界線の角部Dから道路方向に延長された複数の線分を作図します。

 Dから道路の反対側の境界線に達する距離が10m以内の場合その半分までを当該敷地境界とみなし、さらに5m延長した位置を10mラインとします。

 

 Dから道路反対側の境界線までの2点間の距離(幅)が10mを超えた場合、道路反対側から5m後退した位置をみなしの敷地境界線とします。

 

 道路境界線から外側延長方向5mの位置を10m境界点とし、それらの複数の5m境界点、10mライン点を結線する事で10m規制ラインとします。

 

  ただしこの事例の場合、AC間に接する道路幅は12mで10m超で5m規制ラインは道路反対側と一致します。

したがって10mラインは、5mラインから水平距離(この場合平行)作図された10mラインKLが採用されます。

 

  発散規制ラインは、住環境で無い道路等内には、日影規制チェックする必要がない事を意図した作図法です。

 

  ただし東京都では、規制ラインの作図法は「発散規制ライン」「閉塞方式」いずれでも良いと「安全条例」で記述されています。

図4

 

 形態制限の審査の現場では、日影規制ラインの閉鎖型の場合のように本来間違った解釈ですが慣習的に使い続けられた場合、利用が可とされ適法とされる事が多々あります。その一例です。

 

 その際、審査の現場で設計者が困るのは、正しい解釈を不可として慣用的に使用された間違った解釈のみを可とする場合です。

 

  残念ながら天空率審査の現場でもそのような相談をいただく事が多いのが現状です。

 

 不合理な解釈で用地の有効活用が進まない場合、その用地を実力以下に評価する事となり、究極は税収減など国益を損なう事になりかねないと感ずる事が多いのも現実です。

 

 

②法56条高さ制限および天空率における「水平距離」の考察

天空率においては、施行令132条の法文

第百三十二条 建築物の前面道路が二以上ある場合においては、幅員の最大な前面道路の境界線からの水平距離がその前面道路の幅員の二倍以内で、かつ、三十五メートル以内の区域及びその他の前面道路の中心線からの水平距離が十メートルをこえる区域については、すべての前面道路が幅員の最大な前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。


2 前項の区域外の区域のうち、二以上の前面道路の境界線からの水平距離がそれぞれその前面道路の幅員の二倍(幅員が四メートル未満の前面道路にあつては、十メートルからその幅員の二分の一を減じた数値)以内で、かつ、三十五メートル以内の区域については、これらの前面道路のみを前面道路とし、これらの前面道路のうち、幅員の小さい前面道路は、幅員の大きい前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。
3 前二項の区域外の区域については、その接する前面道路のみを前面道路とする。

 

 日影規制ラインを作図する際に確認した水平距離と同様に考え

2点間の距離を一定に保たなければなりません。

 

 「集団規定の適用事例集」では、水平距離の考え方を図示で解説しています。

 慣習的に使用されてきた区分法と水平距離に準じた正しい解釈を並記しています。

確認してみなしょう!

 

 まずは慣習的に利用された図例から検証します。

説明の都合上赤字で境界点を1~4まで追記しております。

「広い道路に平行に区域区分」

 図5

 この場合、、「幅員の最大な前面道路の境界線」の解釈を1,2間では、なくB道路越しの1~3間と解釈しています。

 境界線ゆえ1~2間が正しいと思われるます。・・・が

1~3とする事で水平距離2Aを平行線で作図区分しております。(これも簡便法です。)

 

 水平距離ゆえ2Aの距離は、一定でなければならなりません。

たとえば2~4の境界線がさらに右側に傾斜している場合、本来の2Aよりはるかに長くなり最大幅員の区域が広がる事から危険側になります。

 

 この事例は、水平距離と平行を混同した典型的な例です。

行政による図例が整形の土地形状などで示される事が多く、この程度の変形敷地に対しても整形地同様に例示するとこのようになります。

 

 一方、「集団規定の適用事例集」では、正しい作図法も例示解説しています。

図6

 「取扱2:円弧状に区域区分」と記載し水平距離が堅持されている事と「幅員の最大な前面道路の境界線」を敷地の境界点間1~2間である事を示しています。

 その際の円弧形状は、多角近似で良いとされるのがJCBAの見解です。 多角近似ゆえ多少の誤差を含む事を可としています。その分審査時には、三斜求積による天空率で安全差分が求められます。

 

 さらに円弧状の2A区分が正しい事を2例追加して解説しています。

図7

 A道路の延長方向が屈曲あるいは、行き止まりの場合においても最大幅員A道路がB道路側に同様に区分されます。

2Aを水平距離で区分すると行止り道路部から円弧状区分するのが正しい区分法です。

*簡便法も可とされていますので誤解のなきようお願いします。円弧状の区分を間違いとする考え方への注意喚起です。

 

 このような事例は、行政単位で確認すると散見さます。

2以上の道路では、令132条で区域区分法されその区域の空地の大小が問われるだけに正しい解釈で解析しなければなりません。

 

 本日もながくなった。ここまで!

気候の変動が激しい今日この頃さらに杉花粉も来週から本格的に飛散が始まるようですが・・・頑張ろう・・hi

次回までお元気で!

 

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