隣地天空率再考 2敷地区分方式とその問題点1 | 比嘉ブログ

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 9月1日土曜日

9月になると今年も残り1/3しかない。

しかし今週の暑さもすざまじかった・・・。

完全に沖縄の方が涼しく、特に朝夕の涼しさは気持ちよい。

どうやら沖縄は変わってないが、その他の日本全体が異常気象のようだ。

若干沖縄を思い出し赤花を・・・

 沖縄から東京に戻ると池袋方向に向かってスマホを向けている。

ポケモン騒動かとおもったら

 

 積乱雲の中で雷が連続でピカピカドッカンを撮影しているようだ。

あわててスマホを取り出して負けじとパチリだが今一のでき・・。雷のかけらも写ってないようだ。こちらに向かってきそうなんであわてて家路・・。今週は各地で積乱雲騒動があったようだ。

 

 さて今週から本格的に講座を再開した。

まずは火曜日、不動産鑑定士の皆さん。

若手2名を従えて約20年ぶりに比嘉の講座に参加していただいた。

後、2回頑張って下さい。

 

木曜日も不動産鑑定士の皆さん。

こちらは、約10年ほど前に集合研修で講座を受けた事がありますとの事。今回は2名で特訓の結果・・・自信のポーズに比嘉も負けじとポーズ。

 

 金曜日には、デべのベテランと若手の講座

最後に侍ジャパンのポーズでパチリ。

 

 さて本日は、「琉球美の宝庫」を見学の予定だ。

早めに天空率講座を開始して出かける事としたい。

 

天空率講座

先週から隣地天空率再考として隣地天空率を解説している。

 

前回はH/D比の増減による高さ制限(従来の斜線規制)では通風採光を確保する手段として適切ではない事を解説した。

今回は前回のその部分の解説を補足する事から始めたい。

 

 H/D比の増減比較においては、同一高で高さ制限を超えたA,B案は、いずれもNGとされる。ところが敷地内空地を多く有するB案の通風採光が、良好である事は一目瞭然。

 敷地内空地を評価する手段として、基準法56条7項に追加されたのが天空率による比較法。

 

  天空率は、高さ制限適合建築物と計画建築物の魚眼レンズに平面投影した面積の大小を比較する。

 

 高さ制限適合建築物は、従来の高さ制限に適合するつまり従来の高さを越えない事が基本。(その他令132条による区分、勾配区分などがある)がいずれもそれらの法規に適合した建築物を想定する。

 

 天空率を比較するとは

天空率は

((想定半球の水平投影面積)-(建築物+地盤の水平投影面積))÷(想定半球の水平投影面積)

 

 建築物等の投影面積が大きいと天空率が小さくなる。

したがって天空率とは、魚眼レンズに投影された水平投影面積を比較する事。

 

 このように文面での天空率比較を理解するには、困難がある。

が・・高さ制限適合建築物(緑)の天空図と計画建築物(灰色)を重ねて表示すると比較が容易になる。

 

 

 

 一般的に建蔽率、避難通路等の制限を受けない高さ制限適合建築物(緑)は区域(この場合敷地と同じ)幅全域に配置される。(道路天空率の場合、奥行は適用距離まで)

 その為、計画建築物(灰色)より区域内空地A,Bが魚眼レンズに投影されたa,b分視野角方向に広くなる傾向にある。

 一方計画建築物の高さ制限を超えたC部分が投影されたcは、計画建築物のみとなる。

 したがって天空率でクリアーする条件としては

a+b≧c

 ① 敷地内空地分のみ高さ制限を超える事ができる。

 ② 区域内で建物幅が狭い場合、相対的に空地a+bが増加する事

   になり高層建築物が可能になる。

 ③ 空地a+bが十分な面積がない場合高さ制限を超えるc部も

   小さくならなければならず高さ制限を大きく超える規模の

   建築物は不可となる。

 

 これが天空率の基本的な考え方。

 

 敷地内空地を正しく評価するとは、適法に高さ制限適合建築物を想定する事に他ならない。

 

 天空率施行直後の天空率審査方式を今一度振り返ってみよう。

 

 

屈曲道路でこのような設定を要求する行政があり混乱した。

 

 

 この場合の適合建築物作成の基本の考え方は、道路、隣地ともに境界点間で区分しその区分内で天空率比較を行うという方式。

 

 当然だが境界点間がせまい場合、その間のみの比較ゆえ十分な空地がない為、NGになり天空率が利用できない事態が続いた。

 

 泥縄的に、さらに法文に記述されてない屈曲幅が1mを超えてなければその間は連続した道路とみなしてよい、とする救済方法も試案では示された。がその解釈そのものが、敷地形状により容易ではなく解決にはならない。その為、恣意的解釈も多くみられた。法文にないルールを適用すると恣意的に逆利用されるケースが起こりうる。形態制限には危険だ。

 

さらに危険な設定法として

 

 窓方式という目的不明の解釈まで登場した。

入隅道路の場合は入隅角を半分に区分しさらに境界点間を窓に見立ててその間を通じて見通せる範囲を適合建築物とする。

「窓」・・・法文にまったく存在しない概念を適用した。

 

 これはすぐに問題になった。

入隅を構成する一辺が狭い場合に、円弧で示す部分は、天空率比較されない。

 その部分に高層建築物が存在したとしても、比較する必要がない事になる。

 この方式では、通風採光比較の為の天空率として機能しない。

 

 敷地境界点間で比較する目的は、採光通風には関係なくより厳しく審査したいとの思いで設定したかもしれないが、このように極めて危険側になるケースが多い。

 

 安全側か否かの前に適法に区分されているか否かが問題である事は言うまでもない。

 

 これらの道路天空率関連の多くの問題は、JCBAが適用事例集で「一の道路」を提唱した事により解決した。

 問題は隣地天空率だ。

 今回はなぜ境界点間で適合建築物を作成するという方式を行政が採用したのか検証したい。

 

 原因は、各行政が適合建築物を作成する方法のバイブルとして利用した「平成14年建築基準法の解説」国土交通省住宅局市街地建築課編集の挿絵にあると考えられえる。

 

 挿絵のすべてが出隅敷地でほとんどが整形敷地。

この挿絵は面する部分の概念図にすぎないのだが、この挿絵で境界点間で適合建築物は、区分するものだ・・と判断した事が始まりと思われる。・・・・法文から判断してほしかった。

  

 現況の審査の指針を示すJCBAでは、前回もお伝えしたように隣地天空率に関して、JCBAホームページで解説している第3章 天空率に係る検討を参照していただきたいとの回答であった。適用事例集に記載されているのは区域毎に後退距離を採用するという記述と高低差区分するという記述の2項目で適合建築物の作成法は記述されてない。

ではその

第3章 天空率に係る検討で確認すると

 

P101では
 

 隣地天空率の手法としては「敷地区分方式」と「一の隣地方式」があるが「一の隣地方式が最も安全側であると結論づける。

 

  ところでこのレポートを読み進めると「一の隣地方式」の適法性は、算定位置も含めて十分に記述されている。(一の隣地の解説も順次行いたい)・・一方、敷地区分に関しては明確に記述されていない。

 残念ながら現況の敷地区分方式は慣習的に利用されているにすぎない。慣習的とはいえその区分法を解説する事から始めたい。

 

 これは当方が執筆を担当する「建築法規Pro2018」でも解説している。

 

まずは出隅部

 

➊ 出隅に面した部分の適合建築物は、法第56 条第7 項第二号の政令で定める基準線に垂直方向に適合建築物を作成する。その際他の隣地境界線からの高さ制限は考慮しない。

 

 

❷ 出隅、入り隅の判断は当該隣地境界点間で確定する。

 

次に入隅部

 

 

❸入隅に面した部分の適合建築物は当該の隣地境界線に垂直に区分される部分と入り隅角の半
分の部分までを一体の区域とする。
❹入隅部を有する隣地境の他の端部が出隅の場合は端部から垂直に区分する。
*以上の区分法は天空率施行以来の慣習的設定法で公に明確に記述されていない。

 

 さて敷地区分法を採用する際に不合理な結果になる場合は多い

平成14年~挿絵から解説

 

左側の敷地のみで出隅部で構成された右側の敷地でも慣習的に出隅垂直切断を適用すると

 敷地内空地のA部分が通風採光開放性に関して評価無しとなる。その事は安全側ではなくA部分にのみ超高層建築物が想定されたとしても敷地上側の算定位置からはノーチェックとなりきわめて危険側の区分法となる。

 例えば

上図を基本に北側境界線のみが隣地で建物高100mの事案で隣地天空率だけを検証すると

 

まず敷地区分方式で区分解析すると

 

北側隣地境界線に垂直方向に区分する敷地区分法ではA側の建築物は検証の対象にならない事になる。

 

 法文に照らすと

基準法56条

二 当該部分から隣地境界線までの水平距離に**が一.二五とされている建築物で高さが二十メートルを超える部分を有するもの又は*数値が二.五とされている建築物**で高さが三十一メートルを超える部分を有するものにあつては、それぞれその部分から隣地境界線までの水平距離のうち最小のものに相当する距離を加えたもの

 

(建築物の)それぞれの部分から隣地境界線までの水平距離は、全ての建築物は隣地境界線からの高さ制限が適用される事になる。もちろんA部分も対象となる。

 

その為、この事例では、クリアーした。

 

 A側部も円弧状に作成した隣地高さ制限適合建築物(一隣地方式)で作成するとA側の空地の有無が適正に評価され

 

NGとなった。

計画建築物の形状によっては、逆のケースも有り得るが敷地区分方式が常に天空率比較が厳しいわけではない事を確認していただきたい。繰り返すようだが重要な事は、法文に適合する高さ制限適合建築物を設定する事。

 

*尚、行政によっては敷地区分方式でもこのようにその隣地境界線を起とする高さ制限適合建築物は、上図のように敷地内全てに適用される。 どうも隣地境界線に垂直に区分する手法は適法性に欠ける感がある。

 

 敷地区分方式の不合理な事例は、実事案では数多く存在する。あと2~3例紹介したい。

 

 今回も長くなった次回にしよう。

来週早々に台風がやってくるようです、お気をつけ下さい。

次回までお元気で!

 
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