日影規制の話6:日影チャートと逆日影チャート | 比嘉ブログ

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建築企画CAD「TP-PLANNER」開発者の日常・・建築基準法,天空率、日影規制講座などチャンプルーなブログ

2月21日土曜日 快晴の東京。

久々の朝練会場から定点観測の一枚。かすみか雲か、はたまた花粉か。
そろそろ天敵杉花粉が乱入をうかがう今日この頃。
空を眺めては身構えてしまうが、なんとなく目がしばしばと涙目になってきた・・・感じだ。

 前回ブルーな気分で金属アレルギーでは?と手の皮がむけた状態の報告をしたがどうやら勘違い。今週初め頃よりむけた皮の後のやわらかい赤みを帯びた小猿の手のひら状態になり順調に回復している。医者に聞いたら「汗疱状湿疹かな」の判断。手のひらにかいた汗からその様になるらしいが、趣味のことで金属を5時間程握りぱなし、思えばその日はあて布を忘れていた事を今更ながら思いだした。季節の変わり目におきる症状らしい・・・そう・・杉花粉との戦いはすでにはじまっていた。

 今週はじめにBIM関連の勉強会があり、その後4人ほどで軽く一杯となったが、その時の話題にピロリ菌持ちの話。実は今年初めに7年ぶりに健康診断をしたが唯一の警告が、ピロリ菌の疑いで要再検査となった。どうやら最近の研究ではピロリから胃がんに展開する可能性が高いらしい。・・・てな話をしていたら4人中3人までがピロリ保有者、または保有歴あり。残り一名は大腸ポリープ切除経験者。結局大腸ポリープのI氏に良い病院を紹介してもらった。なんでも内視鏡が上手な先生らしい。かつて内視鏡では苦しんだ経験ありで今回ピロリの件でも躊躇していたが、早速予約済み。3月中盤には結果報告予定。

 さて今週の講座には

TP-PLANNER10年選手に最新テクニックをレクチャー。南方系同士で暢気にフル機能パース作成まで解説。お疲れ様でした。


さて今回の講座で一連の日影規制関連の講座がひとまず終了する。最終日ゆえ長くなるので早速開始したい。


 前回は、時刻日影図を参照し日影規制をクリアーする方法を確認した。
若干おさらいすると

影の長さの計算式は

L=(H-4)×倍率




建物高さを太陽高度内に制限する事で影の長さを規制ライン内に納める方法。
 

 この場合、3時間の影が10m規制ラインを越えた為、影の発生元である建築物の位置から規制ラインまでの距離を測定し、その影の長さをLとし8時枠で3時間日影線を意味する11時の倍率1.813をそれぞれ下記計算式に適用し
L=(H-4)×倍率

建築物の高さHを逆算した。

ところが真北方向に対して幅が狭い南西向きの住戸は3時間の時間幅に納めるべく建物幅をカットする事で、

L=(H-4)×倍率
による高さを制限する事なく3時間時間幅におさまるエリアが算出された。

 これら時刻日影図を参照しながら建築物の可能高さ、幅を求める事を逆日影と称する。

 これらの逆日影結果による建築物で指定点日影計算すると

北東側ではジャスト3時間のカ所あり北西では2時間59分と手動逆日影計算としてはまずまずの結果。それらの算定位置から半天空図で太陽との関係を確認すると

まず北西側3時間を示すP4では

 太陽が13時から6階屋根に隠れ影になる。16時まで建物背後にある為3時間の日影時間となった。この場合、道路に近い側は5階、NG幅でカットされた6階の位置が太陽高度限度一杯である事がわかる。

そこで日影チャートの事を解説したい。

 日影チャートの詳細は当社 鈴木剛のレポート 「鈴木剛日影チャート図ガイダンスから」に詳しい。震災直後の比嘉ブログに掲載したが今だ人気の回だ。


 日影チャートは、太陽の軌跡と規制ライン上の任意の位置を結線して平面投影した図の事だ。半天空図を眺めた位置(指定点日影ポイント4)からの日影チャートは

 

 影の始まりを示す位置がジャスト6階部である事を表現する。
可能高さはチャート図をセットする事で確認できる。

上図はTP-PLANNERの3D日影チャート図(指定点日影計算後、建物入力で右ボタンから選択可、主にNGの際カット位置を特定する為に利用する。)

全回手計算した「21.041m=(H-4)×1.813からHは 約15.6m、5階が可能でカット幅は3.5m分を5階にすればおさまりそうだ。」

この計算式で算出した可能高さは15.452mと表記されている。数値の若干の異なりはLを測定した位置の差。

 北西側P6も同様に検証すると
まず半天空図では

8時5分から北西側道路に面した5階部と太陽が重なり日影が始まる。11時04分に6階部の側面から太陽が見えた為、その間2時間59分の日影時間となる。

同様に3D日影チャートでは

この場合のチャートは時間幅のみを表示した。

ちなみに3D日影チャートでは日影のNGとなるブロック幅を自動カットする機能もある。


 
 さて日影チャートも結構だが敷地北側が凹んでいる場合など変形敷地に適用するには困難もある。日影チャートと同様の考え方でコンピュータ処理した逆日影の利用法を解説し本シリーズの最終回としたい。

 これまで解説してきた様に日影計算において建物幅がそのまま規準となる8時あるいは16時の日影時間幅となる為、逆日影計算を行う際にもその事を考慮したい。TP-PLANNERでは、建てたい建築物の範囲を「仮想建物領域」としてその外形状を設定する。

 例えばJWCAD等の汎用CADでエスキスを作成したとすると

当然そのエスキス状の建物枠内の可能高さを逆算したいとなる。
 土地情報発生時に営業担当者からよく言われるのが「何しろ敷地いっぱい計画してほしい!」。
だが、その意図するところは、建蔽率、容積を充分消化したいとの意味。
 建蔽率から考えても敷地形状と同等の形状の建物はありえない。(小規模敷地で商業ビルの場合は極めて敷地形状に近くなるが)

 従ってエスキスで描かれた建てたい建築物の形状を可能空間に反映させる必要がある。TP-PLANNERでは汎用CADファイルを読み込んだ後

この様にエスキス外形上を建物の可能範囲(仮想建物)として設計意図を反映させる。

*このエスキスは手動逆日影解説で用いた建物より西側の隣地境界に接近すべく建物幅を広げた。

 さらに逆日影計算では

ダイアログボックスで「高層建物型計算」を選択すると「逆日影チャート」が表示される前2回の比嘉ブログから読んで頂いた方、もしくは日影規制を熟知する設計者には逆日影チャートの意味するところが一瞬でわかるだろう。

 逆日影チャート図は敷地内でドラッグすると任意の位置に移動する事が可能になる。典型的な3例で逆日影チャート図の利用法の解説をしてみたい。

例①

 まず上図だがこの例では容積率が200%ゆえ6階程度の低層の建物を逆算出する事を意図する。

 操作はドラッグしながら図中で解説している8時方位線を東側の建物が始まる位置に設定し同時に16時の方位線を建物西側に設定する。

 敷地北側(敷地左上側)にドラッグする事により8時と16時の枠が確定する。その結果、10mライン上で交差する8時方位線と11時、16時方位線と13時方位線による3時間の幅の位置が確定する。

 以上の操作で解析方針が以下に様に想定される。


 8時枠、16時枠による3時間幅が重なった菱形のゾーンは時間幅で建物が確定するエリアになる。幅で確定する為、その幅の建築物であれば建物高は無限高に設定可能となる。(日影規制の制限のみを考慮した場合だが・・)

 そして「時間幅で確定」するエリアと8時方位線、16時方位線で囲われたエリア(薄いピンク)が太陽高度で確定する。(L=(h-4)×倍率の区域)、

 「計算開始」ボタンをクリックし逆日影計算を実行する。結果は瞬時に算出される。

まずは「鳥かご図」から無限高の部分は50mで制限した。

逆日影チャートで設定した設計者の意図どおりの結果となる。

高さを与えると可能高が等高線で表示される。3m階高で6階を指定すると

東側ブロックは手計算時と道路境界線からの距離が同じゆえ解析結果も同様の位置にあり5階。西側隣地方向に建物幅を広げた都合端部では4階が若干カットされ高層巾もその分狭くなる。

ブロック表示では等高線が立体化され

これが、日影規制におさまるエスキスの外形となる。
さらにこの建物状のブロックを建物変換し

日影図を作成すると

当然、日影規制の限界ラインいっぱいで確定している。容積率200%で可能な限り低層で容積を確保したい場合には、この手法が良い。

 その他、低層を設定する方法としては、逆日影計算ダイアログボックスで

「低層建物型計算」を指定すれば良い。指定は3種あるが規制ラインから太陽高度でカットする「逆日影規準線」にチェックし「計算開始」とすればよい。
この事例の場合6階程度では、この手法でもほぼ同様の結果を得る事ができる。

 ただし円弧内で示す様に本来時間幅で可能な範囲も規制ライン(この場合円弧部)からの太陽高度でカットされる。
 したがって殆どの事案が逆日影チャートの高層ポイントを敷地内の北角に配置する事で低層型を兼ねる事が可能になる。

例②

 「低層建物型計算」はどの様な場合に有効か?

敷地が東西に長い場合で規制時間が3/2など時間幅が狭い場合だ。例えば

8時の方位線と16時の方位線が建物両サイドを包洛する事ができずその部分がカットされ中央部に高層域が残ってしまう解析となる。いずれの場合でもまず逆日影チャートで確認する事で高層型に対する有効製が判断する事ができる。この場合は不向きとの判断する。結果をみれば一目瞭然。解析すると

確かに等時間日影は規制ラインいっぱいギリギリで規制ライン内でおさまる建物形状に設定されるが

共同住宅には適さない建物形状が立ち上がる。

 この様な場合、「低層建物型計算」を指定し解析を行う。

等高線の赤表時は5階の可能範囲を示しほぼ4階建てが南向きのマンションとして設定される。
5mライン中央部で日影チャートで眺めると


半天空図で確認すると

朝、夕は太陽が低い為に影になるその時間がそれぞれ8時から9時29分の1時間29分、14時35分から15時59分で1時間24分でトータル2時間53分。左右のいずれかがちょこっと高くなるとそのままNGゾーンになってしまう。その為この形状が低層の限界。


建物イメージは

5階部はメゾネット形式として利用すれば全戸南向きのマンションが可能になる。


例③

 最後に元の事例に戻り容積率が400%超だとした場合の逆日影の位置設定を解説したい。
①の手法では低層になる為、容積確保はまず困難となる。そこで逆日影チャートを南側に移動すると

朝夕の3時間の時間幅が可能な高層可能ゾーンがとれそうだ。16時方位線より北側は全く建たないわけではない。規制ラインの手前で止まる影の長さの低層建物は可能になる。


 結果をまず鳥かご図で確認。最大高を50mで制限した。

逆日影チャートで設定したイメージの建物が可能になる。解析する事により具体的な可能高が算出される。階高を設定したブロック図では

日影図を作図し精度を確認すると

どうやら北東側10mラインの3時間、北西側の3時間の時間幅で可能な様だ。階段室の位置および形状は要検討(時間幅を超える)。指定点日影を行い検証をさらにすすめると、まず北西側は

2時間58分となる。半天空図では

北西側は

半天空図では


やはり2時間58分。これが時間幅により高層部を算出する手法だ。

・・・「道路斜線はどうする?」・・・・・企画設計者の声が聞こえてきそうだが

右側道路中心の一番厳しい区域で

ここから話は斜線規制から天空率へと展開する。天空率でもそのままは厳しいだろう。

ではどの程度幅をカットすると天空率がクリアーするのだろうか?

・・・・・・・・・さすがに本日は疲れた。次回のお楽しみとしよう。次回からまた天空率解説にもどる事にしよう。

 次回までお元気で!花粉にまけるナ! hi

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