RIVERSIDE移籍後に大ブレイクしたWES MONTGOMERY、デビューは西海岸のPACIFIC JAZZレーベルからでした。

 

 

KISMET / THE MASTERSOUNDS (WORLD PACIFIC STEREO 1010)

 

THE MASTERSOUNDSは、この時代には珍しかったエレキベースのMONK MONTGOMERYとヴァイブラホンのBUDDY MONTGOMERYのMONTGOMERY兄弟にピアノとドラムスを加えたカルテット構成。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったMJQと同じ楽器構成が受けたのかPACIFIC JAZZ(WORLD PACIFIC)には8枚ものリーダー作があります。その中で唯一WES MONTGOMERYが参加しているのが、有名ミュージカルを題材とした『KISMET』です。ミュージカルを丸ごと取上げた場合、映画のサウンドトラックと同じで、物凄く良い曲がある反面、「何これ?」的な曲が必ず含まれていて興ざめになることもしばしば。『KISMET』にもスタンダード化した「BAUBLES、BANGLES、AND BEANS」や「STRANGER IN PARADISE」が含まれる反面、その他の曲との格差が激しく、アルバム一枚を通して聴くのは辛いものがあります。またWESはゲストレベルの参加で活躍は限られています。インパクトのあるジャケットとは対照的に中身は至って平凡。

 

 

 

THE MONTGOMERY BROTHERS AND FIVE OTHERS(WORLD PACIFIC PJ-1240)

 

この時期(1950年代最終盤)、BUDDY MONTGOMERYとMONK MONTGOMEYはTHE MASTERSOUNDSとしての活動の傍らWES を加えたMONTGOMERY BROTHERSとしての活動も始めます。WESもジャケットの右端に顔を出す実質的なデビュー作品、3兄弟の他にタイトルどおり5人が参加していますが、中では、これがデビューとなる若き日のFREDDIE HUBARRDの名前が目を惹きます。単調で暗かったMASTERSOUDSに比べ管楽器やWESのギターを加えたことで全体的に華やかになり音楽性も向上しました。「SOUND CARRIER」や「BOCK TO BOCK」は、その後も演奏される彼らの代表曲、WES MONTGOMERYとFREDDIE HUBBARDのデビュー作というだけでも貴重な作品です。

 

 

 

HAVE BLUES WILL TRAVEL(JAZZ WESTCOAST JWC-509)

 

前回のブログ(RICHIE KAMUCA)でも紹介しましたが、PACIFIC JAZZのオムニバス“JAZZ WESTCOAST”シリーズは本当に凄くて、このアルバムにもPACIFIC JAZZ時代のWESのオリジナル・アルバム未収録でありながら最高傑作の「FINGER PICKIN’」が目玉として収録されています。この頃のWESの奏法はRIVERSIDEの『INCREDIBLE JAZZ GUITAR』や『FULL HOUSE』のようなオクターブ奏法を駆使した超絶テクニックは未だ披露しておらず、どちらかというと一音一音、音を紡いでいく、のんびりとした演奏が多かったのですが、唯一の例外が「FINGER PICKIN‘」でした。タイトルどおりの指弾きでWESが既に抜群のテクニックを習得していたことを窺わせます。

 

 

 

MONTGOMERYLAND(PACIFIC JAZZ PJ-5)

 

前作に比べ更にWESの露出度が大きくなり、前作には自作が一曲もなかったWESが5曲も提供していて、“WES MONGOMERY WITH MONTGOMERY BROTHERS”の感が強くなりました。それでもBUDDY (ここではヴァイブではなくピアノ)やMONK(ベース)もWESに負けじと躍動感のあるソロで対抗しています。A面にPONY POINDEXTER(アルト)、B面にHALORD LAND(テナー)と管楽器を入れたのも音楽の幅が拡がり正解でした。「SUMMERTIME」「FALLING IN LOVE WITH LOVE」「OLD FOLKS」等、ゆったりとしたスタンダードが特に良い出来だと思います。

 

 

 

WES、BUDDY & MONK MONTGOMERY (PACIFIC JAZZ PJ-17)

 

このような寄せ集め(PACIFIC 時代のベストアルバム)を載せる必要はないのですが、私の様にレギュラー盤と勘違いして購入する人がいると思って敢えて・・・。WES MONTGOMERYがRIVERSIDE移籍後にブレイクしたため急遽発売したものと思われます。内訳は『KISMET』から2曲、『~AND FIVE OTHERS』から2曲、『MONTGOMERYLAND』から3曲で、未発表曲、別テイクは含まれていません。

 

ジャケットだけ見ているとベスト盤とは思えませんが、PACIFIC JAZZ(WORLD PACIFIC)にはBUD SHANKにも同様のケース(下掲参照)があり、うっかり購入した経験があって・・・・タイトルに『BEST OF PACIFIC YEARS』の記載でもあれば間違わないのですが・・・コレクター諸氏は気を付けましょう。