僕の上司、32歳、人妻(12) | 夫の知らない妻

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官能小説「他人に抱かれる妻」別館です。

「じゃあ始めて」

 

月曜日の朝。

 

僕が所属する営業部営業一課では、毎週月曜日の朝に「あさかい」と称するミーティングをする。

 

10人ほどいる課の社員が集まり、それぞれ担当する仕事の進捗を報告し合うのだ。

 

オフィスと同じフロアにある会議室。

 

ビル8階にある会議室の窓からは、今日もまた、よく晴れた東京の青空を見渡すことができた。

 

でも、どうやらこの会議室の空模様は外とは違うようだ・・・・。

 

「いい? それぞれ簡潔に。わかりやすく報告すること。いいわね」

 

ミーティングを仕切るのは、もちろん我らがボス、武川理沙課長である。

 

午前の太陽が眩しい大きな窓をバックに、今日もまた、課長はいつも以上に美しく輝いている。

 

ライトブルーのシャツ、そこから覗く白い肌、胸元にはシルバーのネックレスが光っている。

 

隠しきれない胸の膨らみ、その深い谷間が見えるか見えないか、シャツの隙間が男の視線を誘っている。

 

そして、膝丈のタイトスカート。

 

テーブルの下、ヒールの高いパンプスを履いた美脚を悩ましげにクロスさせている。

 

課長、今日はまた、いつも以上にお綺麗ですね・・・・。

 

だけでなく、今日はいつも以上に、御機嫌斜めのようでもあった・・・・。

 

「中島さん、あなたからお願い」

 

課長の年上になるのだが、部下である男性社員が指名された。

 

「は、はい・・・・。えっと、先月からクレーム対応しているノモトコーポレーションですが・・・・」

 

室内に緊張が走る。

 

テーブルの中央には、フルーツやおかしが山盛りになっている。

 

「ねえ、堅苦しいミーティングって私、嫌いなの。週の始まりの朝なんだから。リラックスしてやりましょうよ」

 

課長の提案で、このあさかいでは、いつもちょっとした食べ物が用意されるのが常だった。

 

みんな遠慮なくそれをぱくつきながら、ざっくばらんな雰囲気で行うのだ。

 

だが、今日はそれに手を伸ばす社員は誰もいない。

 

察しているのだ、みんな。

 

「やばい。今日の課長はめちゃくちゃ機嫌が悪いぞ」

 

しーんとした空気の中、中島さんの説明は次第にしどろもどろ状態になっていく。

 

「ですから課長、これはですね・・・・」

 

「言ってることがわからないわ、中島さん。そこが問題だったら、あなたはそれをいったいどうしたいの?」

 

怖い・・・・

 

隣に座る二個上の先輩社員、矢島さんが、走り書きしたメモを僕にそっと見せてくる。

 

「きげんわるいな、今日の課長」

 

無言のまま、僕は矢島さんを見つめて小さく頷いた。

 

「今日はあれの日かな、課長」

 

さらにメモを見せてくる矢島さん。

 

僕は課長に見られていないことを確認しながら、矢島さんに向かって、さあ、という感じの視線を送った。

 

「中島さん、どうなの?」

 

「ですから、課長・・・・、ですからですね・・・・」

 

大雨警報が発令されたことを感じながら、僕は矢島さんのさらなるメモを見た。

 

「小沢、お前、何か心当たりないのか?」

 

そのメモを見た瞬間、僕はおととい、つまり土曜の夜の記憶を苦々しく思い出した。

 

運命のポルシェ911。

 

中田絹沙に腕を掴まれ、夜の日比谷を楽しげに歩く姿を、まさか課長に見られるなんて・・・・。

 

そして、おそらくは課長の結婚相手であろう、イケメンの彼を目撃してしまった僕。

 

まさか、そのせいで今日の課長はこんなに機嫌が・・・・。

 

僕のせいなのか?・・・・

 

「いい加減にして、中島さん!」

 

どうやら雷雨警報も必要なようだ。

 

月曜あさいち、課長の叫び声に会議室一同の緊張は頂点に達した。

 

「ですから、ですからって、あなたの説明、さっきからそればかりじゃない。教えてあげるわ。ですからってのはね、相手を否定する言葉なのよ。中島さん、ねえ、あなた、私を否定したいのかしら。どうなの?!」

 

「め、めっそうもない・・・・」

 

うっかり八兵衛のような言い訳をする中島さん。

 

「いい、金輪際、ですからって言っちゃ駄目。取引先にも失礼よ、その言葉は。わかった?」

 

「わかりました・・・・」

 

「じゃ、続けて」

 

手元にある手帳を見つめ、中島さんは少し落ち着いた様子を取り戻し、再び口を開いた。

 

「えっと、ですから・・・」

 

その瞬間、僕は思わずははは、と笑ってしまった。

 

「小沢くん、何がおかしいの!!」

 

月曜の朝から、豪雨と雷、暴風、そして竜巻が僕を襲った。

 

会議室全員の、バカだなあ、お前、的な視線が僕に注がれる。

 

課長の顔を見ることもできず、僕は固まったまま、テーブルの端にちょこんと座る新人女性を見つめた。

 

「私のせい? いやいや違うでしょ」

 

そんなメッセージを顔に浮かべ、中田絹沙が自分のことを指差し、小さく首を振った。