「サファリツアーか。それはいい。是非企画してくれ」
私の誘いに、橋口は大いに乗り気なようだ。
この日、毎朝の定例ミーティングの後、私は橋口の部屋でとある提案をした。
橋口、宮野、北原、そして私たち夫婦の5人。
このメンバーで週末にサファリツアーに行きましょう。
私はこんな提案を投げてみたのだ。
「奥さんも来るのかい?」
「ええ。皆さんと行けると聞いて妻もとても喜んでます」
「そうか、そうか。奥さんも私たちと一緒に行きたいってか」
「はい」
満面の笑みを浮かべる好色な上司の顔、予想通りの展開だ。
妻が同行すると言えば、彼らが断るはずがない。
それは、ハネスが仕掛けた最初の罠だった。
勿論、種明かしなどできない。
私は穏やかな笑みと共に、上司に説明を続けた。
「橋口さんたちはサファリツアーにはもう何度も?」
「国立の保護区内のツアーは何回か行ったよ。どれもパッケージの少しばかり退屈なツアーだったけどな」
「今回は趣向を少し変えたものを用意しようかと」
「ほう。と言うと?」
上司の目が光る。
ふん。
どうせ、妻をまたものにできないかと考えているんだろう。
今度ばかりはそうは行かない。
「プライベートジープで回ろうかと」
「プライベート?」
「ありきたりのツアーではなく、普通のツーリストが行かないようなエリアに」
私の説明に、橋口は何かを想像するように顔を紅潮させた。
上司の興奮を煽り立てるように、私は続けた。
「橋口さん、ツアーの途中ではサバンナで休憩場所を用意するつもりです」
「休憩場所だって?」
再び光る上司の目。
これがハネスの用意した更なる罠とは知らずに。
「妻と一緒に小さなテントでゆっくりしてもらおうかと」
「奥さんと?」
「広大なアフリカの大草原の景色を堪能しながら、皆様、たまには妻とくつろいでもらおうかと思いまして」
たまには、か。
よく言うぜ、俺も。
「中川君、いや・・・・、いいじゃないか、それは」
興奮を交えた感動の面持ちの上司を前に、私は彼の心の風景を想像した。
草原の中、小さなテントで、妻を押し倒し、彼女のすべやかな美脚を押し広げる。
橋口さん、いやっ・・・・・・
嫌がる妻の服を剥ぎ取り、男を誘う肉体に愛撫を与える。
奥さん、この間はあんなに喜んでたじゃないですか・・・・・
あっ・・・・・、ああっ、駄目っ、そこは・・・・・・・・・
妻の秘密のスポットに吸い付き、溢れ出す蜜をたっぷり吸う自分の姿。
やがて妻は、彼に屈するように甘い喘ぎ声を漏らし始める。
おおかた、そんなことを想像し、朝から股間を硬くしているに違いない。
海外に駐在している身分で、そんな程度のことしか考えようとしない上司。
「ボス、罠にはめてやりましょうや、彼らを」
ハネス、目論見通りだぜ。
私は密かにそうつぶやいた。