「行ってくるよ」
夕方5時。これが私の出勤時間だ。
「帰るのは朝8時頃かしら」
「そうだな」
妻に見送られ、私は仕事に向かった。
43歳の私が警備会社に転職して、もう3年になる。
喧嘩別れをするように前職を辞めた私に、次の仕事先を見つけることは簡単ではなかった。
子供はいないが、結婚して10年になる妻を養わなければならない。
私の5つ下、今年38歳になる妻。
自宅で翻訳のアルバイトをしている彼女に、それほど稼ぎがあるわけではなかった。
苦労した挙句、私はやっと今の仕事を見つけた。
私が今担当しているのは、とあるメーカーの倉庫の夜間警備だった。
昼間の勤務もある仕事だが、時間あたりの給与は夜間のほうがやはり魅力的である。
「夜シフトを中心にしようと思うんだが」
「いいんじゃないかしら。お金も助かるし」
現実的な理由で私は積極的に夜間のシフトを選び、妻も反論することはなかった。
最近では週に3、4日は夜間に出勤しているだろうか。