ゲゲゲのおっぱい
退院して数日後には、傷口もだんだん綺麗になってきていた。鏡でみると、左胸にカタカナの「ノ」の字が書いてある感じ。実家のお風呂で初めてまじまじ見た時は、綺麗な傷跡だな。先生すげー。と思うと同時に、女性ととして何か欠落したような感覚に襲われて1度だけ泣いた。手術後、子供たちとお風呂に入る時が一番ドキドキした。小さな子供は、片チチのママを見て、どう思うのだろう。わたしが小さな時、よく近所の銭湯に行っていた。よく会うおばーちゃんが、今思うと、乳がん経験者だったのだろうと思う。今のわたしと同じ片チチだった。おばーちゃんは、もう片方が大きいせいか、すごくアンバランスで、子供の時は正直少し怖かった。自分の子供もそう思うのだろうか、と思った。でも、いざ当時3歳、もうすぐ1歳の子供とお風呂に入ると、娘はこう言い放った。「ママのおっぱい、鬼太郎っぽい!」「え?」「鬼太郎も目が1つしかないでしょ、そーゆーこと。かっこいい!」とドヤ顔で解説。ゲゲゲの鬼太郎の歌を爆音で歌い始める娘。まじか。かっこいいって言われるとは思わなかった。なぐさめて言ってくれているのかと思いきや、本気だったらしく、後日娘は、私の片チチを保育園でも自慢。わたしは毎回乳がんをママ友に打ち明ける羽目になるのだった。でも言ったら言ったで逆にスッキリしたのも事実だった。サンキュー、娘。もうすぐ5歳になる息子にとっては、物心ついた時から片チチの母。最近では、先生が病気だから切ったの?刀で?とわけのわからないことたまに言ってくる。刀で切るかー!笑そんなこんなで、初の片チチ披露は、緊張することなんてなかったのである。