前回までのあらすじ



それから彼の趣味の話になった。

 彼は会社の女性2人と御朱印集めをしている。 

女性2人は後輩だが彼は完全に舐められているそうで、御朱印に限らず、どこかに出かける時は彼がスケジュールを立てる役割を担っているらしい。 


 「2人がやらないからさー、でも文句は言ってくるから、私いつも完璧なスケジュール立ててるんだから」


 口を尖らす彼。

 43歳のその仕草は全く可愛くない、いや、男性のその仕草は全く可愛くないが、彼は中性的なのだから仕方ない。


 彼はスマホを何やら弄くると画面を私に見せてきた。


 10:00◯◯駅集合

 10:09◯◯駅から◯◯線乗車

 ↓移動30分

 10:40◯◯駅到着

 ↓徒歩15分

 レストラン◯◯到着

 ↓滞在1 時間 

12:00レストラン◯◯出発

 ↓徒歩15分

 ◯◯神社到着

 続く


 それは御朱印集めの一日の計画だった。

 彼は分刻みでスケジュールを組んでおり、確かにこれは完璧な計画に見えた。

 予定立てるの上手いのかな?
初回のデートは行き当たりばったりもいいとこだったけど。


 その日は23時頃に解散した。 


 3回目のデートの日が来た。


 この日は有楽町に行くことになっており、私が買い物をしたい、と申し出たため、買い物に行くことになった。


 前日彼からラインが来た。


 「デートプランは任せてね!」 


 力強い文面を読んで私は翌日に期待した。 


 当日は16時に駅で待ち合わせをして、予定通り私が店を見て回り彼はそれに付き合ってくれた。 

約2時間ほど歩き回って大体見たい店は見ることが出来た。 


 「買い物付き合ってくれてありがとう。もうこれ以上見るとこないや」


 「じゃあこの後どうしよっか?」


 え? 

デートプランは任せて、って昨日ラインしてきたよね? 


 「…この後の予定立ててないの?」 


 「うん。時間も時間だし夜ご飯にしよっか。何食べたい?」


 えー!店の候補とか考えてないの?

 何で御朱印の時はあんな緻密なスケジュール立ててたのに今日は何も考えてないわけ?


 色々思うところはあったが、「すき焼きが食べたい」と答えた。


 彼はグーグルで近くですき焼きを出す店を調べ始めた。

 初回デート同様に色気のないチェーン店に連れて行かれた。

 しかしすき焼きは美味しく、食べているうちに私の心のもやもやも晴れていった。


 その日の別れ際。

 人混みの駅の改札。


 「私と付き合ってください」 


 改まってそう言われた。 

 悪い人じゃないし、付き合って見てもいいかな。 


 「よろしくお願いします」 


 「ほんとに?ほんとに私でいいの?」


 「うん、いいよ」

 そう答えた瞬間彼に強い力で抱き寄せられた、と思ったらキスをされた。

 舌まで入れられた。

 手すら繋いだことがなかったのにいきなりのディープキス。 


 この人、人との距離感バグってる。

私は行き交う人々の冷たい視線を感じながら、早く別れよう、そう決意した。


つづく