前回までのあらすじ



彼は病院でベッドの数の調整の仕事をしているわけだが、その部署には彼と彼の上司である看護師長の二人しか部員がいないそうだ。 

看護師長は仕事にはノータッチで実質彼一人の部署と言ってもいい。

 だから当然仕事も彼が一人でさばいている。

 彼の激務の原因は人材不足である。


 彼とのラインで少し気になった点があり、それは彼があまりに仕事の愚地を伝えてくることだった。 

 少しの愚地ならいいのだが、あまりに愚地ばかり聞かされるとこちらも滅入ってしまう。


 この愚地の多さには理由がある。 


 彼には友達が一人しかいないのだ。


 社内に親しくしてくれる女性が二人いるが、彼女たちは「私が可愛そうだから一緒にいてくれる」らしいが、友達という認識ではないらしい。 

 唯一の友達も色々トラブルを抱えており、愚地を言える状態ではないらしく、私一人が彼の愚地のはけ口となっているわけだ。 

 友達が複数いれば愚地も分散出来るのだが、現実問題友達がいないので私にしわ寄せがきている。

 愚地には少々参ったが、気になるのは友達が一人、という点である。

 色々変わった人なので理解出来なくはないが、友達一人というワードからは地雷感がぷんぷん漂ってきてそれが私を暗澹とした気分にさせた。 


 彼が私に恋愛感情を抱いているのは明らかだった。

 ラインでも直接的ではないにせよ、私に好意を寄せている、という内容の文章がよく送られてきた。

 声を聞きたいから、と仕事終わりの真夜中に電話をしてくることもあった。


 私はそんな彼をいじらしく思った。 


変わった人だな、とか、愚痴が多いな、という気持ちはあったが、わざわざ電話までかけてくる彼の熱意に私は飲まれかけていたのである。


つづく