前回までのあらすじ



彼は今の病院に20年勤めているそうだ。

 今の職場の前に2年間別の職場にいたが、そこが倒産してしまい、今の職場に転職して20年経つそうだ。

 彼の仕事は病院でベッドの数を調整する仕事らしい。
内容は何度聞いても理解出来なかったが、恐らく入退院にともなうベッドの数の調整、と私は理解している。 


 彼の仕事は9時始まりで、帰りは、月の1/3は終電帰りで残り2/3は22時帰りだそうだ。

 勤務日は月~土。 

休みは日曜のみ。

 それ、ブラックだよね。。。

 恐る恐る言う私に、「ブラックじゃないよ」と平然と言ってのける彼。

 いや、完全にブラックだろ。。。 


その思いを消せないまま話しは続くのだが、彼と話していてさっきからずっと気になることがあった。

 それは彼が一人称を私、と名乗ることである。 

私、のニュアンスが、社会人男性が名乗る私、ではなく、女子の「あたし」に限りなく近いニュアンスなのだ。

 変わった人だけどセクシャリティも変わっているのだろうか。

 私、っていつから名乗っているの?
と質問すると仰天の解答が返ってきた。

 「私~?中2から。俺、っていうのがすごく嫌でさ」
中2から私…。 

「私、姉と妹がいて、そういうのもあるのかも」
そういう問題じゃないと思うけど。


 私も彼に自分の仕事や趣味などを話した。

 読書が趣味だ、と言うと最近どんな本を読んだの?と聞かれたので、村上龍のユーチューバーだ、と答えると「村上龍って誰?」と言われた。

 好きな作家の話をしていて村上龍を知らない、と言う同世代は初めてだったので驚いた。

 でも読書しない人には通じないのかもしれない。 

ちなみに村上春樹は知っているようだった。


 キャッチの誘い文句に誘われ、まんまと入った雰囲気もくそもない店は2時間制で、その2時間が経とうとしており、私達は店を出た。

 まだ夜の9時と早かったため、私達は二軒目に行くことにした。 

彼に店を決めさせるのは危険と判断した私は、私の馴染の店に彼を連れていくことに決めた。


つづく




 最近買って良かったモノたちだあ!