そして放課後、美紗貴は志保に連れられ体育館へと足を運ぶ。
二人は見学ではあるが、揃いの指定ジャージを身に付けていた。
「今日は見学だけなのに、やる気が溢れてる感じだよね!」
志保は笑いながら言い、軽い足取りで体育館へ続く通路を行く。
その背中を追うように美紗貴は続くが、志保の速度についていくため小走りのようになっている。
「やる気があるのは志保だけよ。私はどの部に入るか決まってないもの。」
やや抗議気味に言ってみるが、ジャージに着替えているのには変わりない。
走る足音やボールの弾む音が漏れる体育館の出入り口に立ち、中を覗き込む志保に追いつくと、その隣に並びながら遠慮勝ちに足を一歩踏み入れる。
体育館の正面玄関から入って手前のスペースでは、志保が入部するはずであるバスケ部がパス練習に入っていた。
「すでに始まってる!もう少し早く来れば良かったかな。」
志保の言葉にそうねと答え、美紗貴は体育館を見渡す。
奥のスペースではバレーボール部がストレッチをしているようだった。
「美紗貴もバスケ部の見学するよね?」
志保の問いに曖昧に頷きながらバレーボール部の方へ目をやる。
「私は色々な部を見学するつもりだから、今日はバスケ部とバレーボール部の両方を見るよ。」
わかったと頷いた志保はバスケ部の方へ歩み寄ると、既に練習を始めている先輩達に挨拶する。
「こんにちはっ!バスケ部に入部希望の杉林志保です!見学に来ました!」
志保の元気な声に、練習中の先輩達は手を止め挨拶を返していた。
他にも見学に来ている新入生が何名かおり、その集団と共に見学するよう伝えられる。
美紗貴もそれに習って見学位置まで移動すると、バレーボール部の奥にあるステージからキュッキュッとステップを踏むような音が耳に入った。
「あれ?あそこでも活動してるのかな?何部なんだろう。」
興味を惹かれステージのある奥へと進むと、一人の女性が前後左右に規則正しくステップしているのが見える。
その動きを見つめていたが、美紗貴には何部なのか見当がつかなかった。
「あれはバドミントンのフットワーク練習だよ。」
急に背後から声が掛かり、数センチ飛び上がってしまった。
驚いた表情のまま振り返ると、そこにはジャージ姿にラケットバックを担いだ男子生徒が立っていた。
「ククッ…そんなに驚かなくても良いだろ?」
笑いを噛み殺しながら男子生徒は続けるが、美紗貴はしっかり気付いていた。
「あ、あのっ、えっと…教えて頂いて有難うございます。す、すみません…。」
顔を赤らめながら俯く美紗貴に、男子生徒は笑ってしまったことを頭を掻きながら謝る。
「ごめん!笑って悪かった。あー、ちなみに俺も一年だから敬語はやめてくれ。」
その言葉に美紗貴は目を丸くし、再び驚いた表情で顔を上げる。