見上げられた男子生徒は苦笑しながら自己紹介を始める。
「俺は葉山翔也(はやま しょうや)。っていうか、後ろの席なんだけどな。」
後ろの席と言われ、美紗貴は記憶を必死に探る。
クラス内での自己紹介で、確かにその名前を耳にしていたが、容姿までは確認していなかったことに気付く。
「ご、ごめんなさいっ!さっきは緊張してて。まだ皆の名前と顔が一致してないの。」
あたふたと言い訳する美紗貴に手で制止すると、翔也は気にしていない旨を伝える。
「取り敢えず、練習の見学しようよ。と言っても男子部は練習してないみたいだけど。」
ステージに向かって歩き出した翔也の後を追う様に、美紗貴も続きステージに二人で上がっていく。
キュッキュッと規則正しく鳴るシューズの音が、二人の存在を迎え入れるかの様に止んだ。
「こんにちは、バド部の見学に来た葉山翔也です。よろしくお願いします。」
フワリという擬音が似合う様な身のこなしでお辞儀をする翔也に習って美紗貴もお辞儀をしながら挨拶する。
「こ、こんにちは。私は西浦美紗貴です。あの、見学させてください。」
今日は軽く見て回るだけにするつもりでいた美紗貴だが、勢いに流されてしまっていた。
一人で練習をしていた先輩はタオルで汗を拭いながら二人に近付く。
「こんにちは、ようこそバド部へ。と言っても今日は私しか練習してないのだけらど。」
爽やかな笑顔で受け入れてくれた先輩の顔を見て、美紗貴は見惚れてしまう。
「私は女子部の部長をしている麻木智恵子(あさぎ ちえこ)です。よろしくね。」
挨拶すると共に手を差し出し、二人に握手を求める。
翔也、美紗貴の順に握手を交わす智恵子は身長が美紗貴とあまり変わらないようであった。
美紗貴が見惚れる程の容姿で、中学生とは思えないくらい大人びており、まさに美人という言葉が似合っていた。
「葉山君はラケット持参なところを見ると、経験者なのかな?」
翔也が肩に掛けているラケットバックを見やりながら智恵子は質問する。