昼夜昼夜昼という超過密スケジュールに挑んだ男の物語である。
まず、初日の昼は省エネモードで仕事をすることに。
筋肉を可能な限り使わないように心がけて。
男は考えたのだ。
仕事の疲労は3種類あると。
①筋肉疲労
②脳内疲労
③精神疲労
①は筋肉
②は頭脳
③は感情
①肉体労働による肉体的な疲労
②作業工程を踏まえた段取りや図面とにらめっこする疲労
③先輩や他職の職人たちとの総合的な人間関係に気遣う疲労
以上の3つが仕事で消耗する疲労である。
しかし、そのような疲労をしている場合ではない。
なぜなら、疲労を回復する暇もなく、昼夜昼夜昼と働くからだ。
ペース配分が重要になる。
初日はとにかく静かに過ごした。
無駄に喋ったりもせず、気分が乗ってきても踊ったりもせず、頭の中も空っぽにした。
水中で長く呼吸を止めるには何も考えないことが大切だと聞いたことがあった。
頭で何かを考えることで、脳内で酸素を消費してしまうらしい。
脳が疲労すると酸素だけでなく糖分も消費するので、頭で何かを考えることはそれだけ身体に負担がかかる。
なんにも考えないように目の焦点をボカシして過ごした。
心拍数を上げないように無駄な移動もなるべくしないようにゆっくりと丁寧に優しく動くことにした。
どっか具合でも悪いのか?と心配されるくらいに静かに黙って、必要最低限の会話はウィスパーボイスで囁いた。
すると、頭がなにを勘違いしたのか、急激に眠くなったのだ。
頭が勝手に勘違いして、(そろそろ寝る時間ですか?)と、こっちは省エネモードのつもりなのに、頭はすっかりスリープモードになってしまうのだった。
その甲斐あって初日の昼は体力の温存には成功した。