イケメンの泳ぎ方5 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

でだ、今に比べたらそこまで親しくなってない時期にイケメンから夜間の仕事を紹介された。



その時の僕は海外にいる社長と連絡が取れなくて給料が入るかどうかさえ不安になっていたので、この状況での取っ払いで現金が貰える仕事は渡りに船だと。



しかも夜間に3時間の労働で1日2万、2日で6時間で4万なら悪くない。



相手の希望する人数が2人だと言うのでイケメンにとっても人数合わせの為に僕が誘われたことにもなる。



お互いに金には困っていた。



その仕事の前日くらいにイケメンは自分の描いた絵が30万で売れたと喜んでいた。



これで金には困らないと。



イケメンの性格からすると、これで夜間のバイトは行く必要性のない仕事になるのでドタキャンするだろうなと思ったが、まだ30万は入金されてないからとバイトには行くことになった。



昼間の仕事が終わってからバイトの集合時間まで時間がある。



イケメンからしつこく自宅に誘われた。



飯食って風呂入って仮眠してから行きたいっしょ?と。



近所に銭湯もあるからと。



飯は何が食べたいのかと。



ラーメンなら4ヶ所あるけど、どれがいいかと。



口説かれてる女の気分とはこんな感じなのかと思った。



ラーメン屋でイケメンはビールを注文していた。



イケメンは酒に強いのでそれくらいでは酔わないのにビールを飲む意味が普段酒を飲まない僕には理解できない。



仮眠する時間が少なくなってきたので銭湯には行かずにイケメンの部屋にあるシャワーを浴びることに。



ガラス張りなのだ。



丸見えなのだ。



デザイナーズマンションなのだ。



シャワーのカーテンを閉めれば見えないがガラス張りなのはお洒落なのか疑問である。



それにシャワーも湯沸し器タイプではなくて、熱湯と水を調合してから適温にする旧式なので暫くは冷たくて寒いのだ。



お洒落とは寒さとの闘いでもあるのだろう。



イケメンは過去に何度も引っ越しを繰り返しているらしい。



年間では最高で7回とか。



大家ともよく揉めるらしく、それだけの何かこだわりがあるのかよくわからない。



彼はコンクリートの打ちっぱなしの部屋にも住んだこともあるらしいが、当然ながらコンクリートが丸出しで断熱材がないから冬は寒くて寝袋で寝ていたと。



夏場でもコンクリートが結露して床がビショビショになると。



お洒落というのは便利とは違うみたいだ。



僕が先にシャワーを浴びてからイケメンが入ることになった。



ガラス張りのシャワー室に入る前に全裸になったイケメンは僕の方を向くと、ポコチンを股で挟んで後ろに隠した状態で両手を左右に広げた。



まさかのイリュージョンである。



そこにあるはずのポコチンが消失したのだ。



くだらねえ(笑)



2人だけの空間でこれはキツい。



彼は全身ツルツルなのだが、なぜか陰毛だけはモサッとあるのが逆に気持ち悪かった。



ポコチン隠し芸をやった場合には普通なら風呂場のドアを閉めて自らフェードアウトをすることで完結する面白さなのだが、いかんせんガラス張りなので中に入ってからもずっと見えてるのだ。



彼の元カノやセフレ達もこの隠し芸を見させられたのだろうか?



プライベートや自宅となると職場よりもキャラは濃いめになる。



子供の頃でも友人の自宅に遊びに行くと学校とはキャラが変わるやつもいた。



問題は寝床なのだが、引っ越し用の段ボールを床に敷いて寝ることにした。



僕は眠ければどこでも寝れる。



最初はイケメンが自分のベッドのマットレスの凄さについて語っていた。



バネが普通のバネとは違うと力説していた。



もうすぐ引っ越すから住所を教えてくれればマットレスを送りますよと。



中古のマットレスは嫌だと拒否すると彼はこう言った。



「色んな女のマン汁が染み付いてますからね」



嫌だわ!



どこに寝るかの話になった時にも彼は「嫌じゃなければ一緒のベッドに寝てもオレはいいっすよ」と。



嫌だわ!!



僕は過去に勤めていた会社では仕事で終電がなくなった時には会社の近くに住む先輩の家に泊めてもらったこともある。



その先輩は布団派だったけど、彼女用の布団を出してくれたので快適だったのを覚えている。



優しい先輩だった。



イケメンはシャワーを浴びる前に僕が歯ブラシセットを持って来ていることに気が付いた。



「歯ブラシ持ってきたんすか?歯ブラシならあるのに…」



「そうなんすか?」



「どこの女が使ったかわかんねえやつがずっと置いてありますよ」



嫌だわ!!!



ドライヤーも終わり寝ることになった。



問題なのは僕もイケメンも朝が起きれない人種だということ。



僕「じゃ僕は寝ますよ」



イケメン「いや、目覚ましセットしたんすか?」


僕「一応、してますけど、携帯なんでね、目覚まし時計とは違いますからね」



イケメン「いや、ちょっと甘えてません?さっきからずっとオレに甘えてるよね?」



僕「いや、甘えるとかじゃなく、起きれるかどうかは寝たらわからないじゃないですか」



イケメン「いやいや、わかるでしょ?いつもどうやって起きてるんですか?」



僕「テレビのアラームをスムーズにしてますよ」


イケメン「ずるいわ、それはずるい。うち目覚まし時計ないから、いつも携帯のアラーム爆音にしてますよ」



僕「じゃあそれでいいんじゃないですか?うちアパートなんで爆音だと近所迷惑になるけど、マンションなら問題ないっすもんね」



イケメン「じゃあ、じゃあ、先に起きた方が起こしましょうよ」



僕「そうですね。起きれたら起こしますよ」



イケメン「うわ、出たよ。ずっこいわ~。いや、マジで起こしてよ!」



僕「とりあえずもう寝ましょう」



イケメン「あっ、そうだ、キムタクのドラマ観なきゃ!」



この忙しい状況下でもキムタクのドラマを観るというのは彼がモテる秘訣なのだろうか?



世代的にはわかるのだが、たぶん合コンでの女との会話のパターンから好きな芸能人として最大公約数であるキムタクをチェックしている、のだろうか?



とはいえ、意識高い系ならばテレビは見ないという前衛的なスタンスであってもおかしくはないはずだ。



時間とは平等である。



彼が仕事で躓くのも先輩とのコミュニケーションの時間が少ないのもある。



職人の世界では休憩中に煙草を吸う時間でさえも技術を習得する時間にもなる。



彼は煙草を吸うのだが基本的にはあまり会話に参加することはなくずっとケータイをいじっているのだ。



その時間で彼は別のインプット作業をしていることになる。



付き合う女によっても聴く音楽のジャンルや幅も変わると思う。



職場での彼は仕事中にイヤホンで音楽を聞いていたのである。



イヤホンで音楽を聴くというのは自己中になる。



外部からの音としての情報が遮断された環境になり、音楽というドラッグをキメていることにもなる。



駅のホームや車内でイヤホンをしている人は自分の世界に入ってるので全体の空気が読めていない。



急いでる足音が聴こえれば理由はともかく避けようと思うし、降りますという声も聴こえれば協力する。



イヤホンして自転車をごぐのは自殺行為に近い。



車のクラクションも聞こえないからだ。



音という情報が共感には大切なのだが、イヤホンをしてる相手との口論も面倒になる。



音楽というドラッグをキメてる相手は強気になるのだ。



昔、東西線に乗ってた時に次の駅で人が乗ってくるので後ろに詰めようとしたら動かないサラリーマンが真後ろにいたのだ。



僕が詰めて下さいと言っても無反応で、サラリーマンは掴まっている吊革で僕の後頭部を殴ったのである。



高田馬場で降りた時に捕まえて文句を言うとサラリーマンは頭を殴った記憶はないと。



じゃあ詰めて下さいと振り返って言ったのに、なぜ詰めないんですか?と聞いたら、イヤホンしてるから何も聴こえてないと。



サラリーマンはその場を立ち去るので後を追い掛けるしかなかった。



イヤホンをしている側がそれを武器にして逃げるのはおかしい。



改札まで追い掛けて再び捕まえると、さすがに相手も話を聞くしかなくなる。



やましいから逃げるのだ。



「じゃあ謝ればいいんですね、ご、め、ん、な、さ、い、これでいいですか?」



「いや、そういうバカにした態度がムカつくって言ってんの。もう1回ちゃんと謝れよ」



「すみませんでした」



音楽の力で無敵になるのは仕方ないにしてもマナーを守らないのは許せない。



職場でもイヤホンをしている職人はいるが、口論になると違和感しかない。



というか、滅多に口論にはならないのだからイヤホンから流れる薬物による影響だと思われる。



イヤホンしてるから相手の喋る声のボリュームも大きいし、集中力や周囲に対する視野が狭いから壊してしまったのだろうけど、こっちは大人の対応として今回のは補修はきくけど完全に壊れたら高い金額になるから気をつけて下さいねと忠告するのだけれど「だから、ごめんなさいってオレ謝ったよね?」と、この手のやつ特有の異次元論法を仕掛けてくるのだ。



クソみてえな音楽でも聞いてんのか?と。



この手のタイプとは関わらない、腹いせに仕事を壊されたりイタズラをするからだ。



ストレスに弱いタイプは音楽を聴きながら仕事をする傾向がある。



大声で話し掛けてもイヤホンを外しながら「なに!?」と、会話のターンをお前の音楽が奪ってることには本人の自覚はない。



ちなみにスピーカーでみんなに聴こえるように音楽をかける職人もいる。



これには癒されたりもする。



各自の音楽の趣味にもよるが、仕事中には絶対に合わないジャンルが1つだけある。



ジャパニーズレゲエである。



日本語のレゲエでガキの戯れ言みてえな歌詞を聴いてると、なぜかイライラするのだ。



持ち主も曲を途中で変えたけどね。



やっぱ仕事中は責任感でしかないので、無責任な歌詞にはイライラする。



別れた嫁に対する歌詞なのか、オレはこういう人間だから勝手にしろみたいな歌詞で、居たけりゃ居ろ、嫌なら行け、勝手にしろ、みたいなのがレゲエっぽい口調で流れてくるのだ。



いや、お前が何とかしろよ!!と。



その為に俺達はこんなクソみたいな環境でも働いてんだろうが!!と、ガキの戯れ言に心のザワメキが止まらなくなるのだ。



クズを肯定するというジャンルだとしたら底辺の商業的な音楽でしかない。



こういう歌詞がレゲエっぽいのか知らねえけど、お前の信者は社会に出てから苦労するぜ。



僕も社会人になってブルーハーツを手放した時期があったけど、ちゃんと戻ってきたからね。



話が逸れたね。




イケメンは仕事で僕と絡んでない頃はイヤホンしてたのよ。



今は違うけど、今はBluetoothでスピーカーからガンガンに曲を掛けて仕事をやってるからね。



音楽の趣味というか、これは付き合ってきた女の幅も関係あると思うのよ。



SMAPとか嵐も流れるのよ。



AKBとかジブリとかさ。



イケメンの趣味からすると意外なわけよ。



久石譲の曲なんだけど仕事中のジブリは、これ何だろ、切ない気持ちになるよ(笑)



イケメン「これ何の曲かわかります?」



僕「ん?これジブリのやつじゃないっすか?」



イケメン「魔女の宅急便です」



なんだろう、棒状のものを探して跨がりたくなる。



つづく