パワハラの方程式が解けた | 天狗と河童の妖怪漫才

天狗と河童の妖怪漫才

妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

パワハラには様々な形があるのですが、私の長年の研究からその中でも最も難問とされてきた
【優秀な上司からのパワハラ】
の解読に成功しましたので、それをここで発表したいと思います。



ええ。



優秀な上司ですからこの世に存在する全てのパワハラを自在に操れるわけですね。



このような完璧主義者からのパワハラというのがとても厄介なんですね。



まるで上手に蟹でも食べてるかのように、的確に部下の心をへし折っていきますからね。



まれにハートの強い部下もいますが、そういう場合にはちゃんとハートを削ってから折りますからね。



これの何が凄いかと申しますと、優秀な部下さえも確実に仕留めるボキャブラリーの豊富さですよね。



そうでもない部下には割りとシンプルな暴力や暴言で処理します。



世間一般で扱われているパワハラとはこのような新人シゴキだと思います。



それも立派なパワハラなのですが、それに奮起することで上達したり、ある程度の免疫ですとか回避する術もあるのではないかと私は思います。



それよりも問題なのは、自分でもよくわからないうちに、いつの間にか心を折られている、まるで居合い抜きの達人のようなパワハラ使いがいるのですね。



私もこれまでに何人ものパワハラの犠牲者を見送ってきました。



そのような先人たちが辞められる際には、残された私のようなパワハラ研究者に対し、解読を途中で断念したパワハラ論文の断編のような、辞世の句も拝聴してまいりました。



【同族嫌悪】という全く耳馴染みのない四文字熟語を聞いたのもその時が最初でした。



これはどういうことかと言いますと、完璧主義者である優秀な上司に育てられた部下とは、当然ながら上司と同族である完璧主義に成長するわけです。



お互いに完璧主義者と完璧主義者ですから反発することになるわけですね。



なぜ反発をしてしまうのか?ここの仕組みが解明されないまま鉄壁のパワハラの頂に挑むのですが、先人たちは皆敗れ去って行きました。



ちなみにパワハラの頂とはいえ我々の仕事とは社会の底辺なので世間から見たら落差はあまりないのです。



それに気が付いた時には自分でも恐ろしくなりました。



これは中卒と高卒レベルの“口喧嘩”でしかないと。



【同族嫌悪】という必殺技みたいな言葉を私に託して捻挫した先人は【専門学校卒】だったのです。



我々には決定的な弱点があります。



それは…

【難しい言葉に弱い】

これが弱点なのです。



指摘される言葉のチョイスによって心を削られてしまうわけです。



言葉の刃を立てる角度によっても刺さる深さが違ってきます。



どんなに教科書通りにガードを固めていても、その戦い方が実戦では通用しないことに気が付きます。



戦国時代の合戦のように鎧や兜のすき間から刃を突き刺すような実戦的で泥臭い剣術が必要になってくるわけですね。



こう言ったらこう返されるだろうなという、将棋のようなシュミレーションを繰り返すわけです。



シャドーボクシングのようにシャドーパワハラをイメージトレーニングするわけです。



傾向と対策、圧倒的な準備をすることが戦いには必須なのだと。



相手からのツッコミ(指摘事項)を事前に予測することで、メリットとデメリットの両方から考えた、これが現状での最善の一手であることを伝えるわけです。



先人たちが苦労の末に編み出した英知の結晶を私は引き継ぎ、悔しくて流した涙を決して無駄にはしません。



【クリアランス】という最先端の難しい言葉を仕入れてきて挑むも、天才的なパワハラにあと一歩で敗れてしまった先人もいました。



ひっとしたらあと少しで論破できるのではないかと私も思っていました。



【クリアランス】の意味は私にもわかりませんでしたけど、何か、勝てそうなイントネーションで使ってましたよね。



まさかの返し技にやられてしまいましたけど。



【能書きはいいから早くやれよ】の一撃で負けてしまいましたけど。



敗れはしましたが、【クリアランス】の一本槍だけで、あそこまでパワハラの天才を追い詰めたことに私は感動しました。



驚いたのはその後です。


あれだけ“能書き”扱いをしていた【クリアランス】を、パワハラの天才はまるで自分のオリジナルのような顔をして、私に対して「うーん、ここのクリアランスが…」と使ってきたのです。



前後の文脈から大体の言いたいことが伝わるだけに話を最後まで聞くしかないのです。



この落武者狩りのような言葉狩りが彼のパワハラの天才たる由縁なのでしょう。



単純な作業でも「クリアランスが取れてない」と言われると、何かイラッとします。



無知というバイアスによって会話のイニシアチブを握られてしまう“低学歴殺しの論法”なのでしょう。



そのような鋭いツッコミに対してどう対処するかをずっと考えていたわけです。



どうしてあのパワハラは鉄壁なのだろうか?と。



どうしてこんなにもストレスが溜まるのだろうかと。



一説によると、正解というのが彼の頭の中にあるからで、それを具現化する行為とは既に詰まれている状態にあると。



この場合の正解とは、彼のその日その時の“機嫌”によるものであると。




だとするならば、その機嫌が悪い原因とは何なのか?と。



嫁がお弁当に大好物の卵焼きを入れてくれなかったからと。



いや、それくらいのことが原因でのパワハラならば問題はない。



きっと前日の晩に嫁が抱かせてはくれなかったのだろう。



こんな理由でパワハラの強度が増すのである。



つまり、正解とは彼の玉袋の張り具合によって決まるのだ。



それならば、なぜ、嫁は抱かれることを拒んだのだろうか?と。



それは旦那から抱かれたくなるようなムードではなかったと、そう考えられる。



なぜ、そう推測するかというと、パワハラの時に我々が感じる空気と寝室のベッドで嫁が感じているムードとは漂う空気が同じだと思うのだ。



ただヤりたいだけなら抱かれたくないのと同じように、ただ説教がしたいだけの空気なのだ。



発散することの対象にされているだけで、その言葉には何の温もりも感じないからである。



要するに、天才的なパワハラとは的確なツッコミ(指摘)のようで実はボケ(空気が読めてない)なので構造的に笑えないのです。



心が通わない会話になるわけですね。



ですので、優秀な上司からのパワハラとは、こちらの(ボケ)に対する“ツッコミ”ではなく、ツッコミの形をした“ボケ”なんだと、そのような結論が出たわけであります。



パワハラの本当の正解とは嫁さんが握っているんでしょうね。