明日は年に1度の健康診断なのである。
朝イチで尿検査があるので、今夜のオナニーはお預けになる。
1年の中で絶対にオナニーをしてはいない日、それが健康診断の前日の夜である。
そして、それは同時に1年の中で最も“逆に”オナニーがしたくてたまらなくなる日が健康診断の前日であり、今、この瞬間である。
なんだろう、尾崎豊が聴こえてくる。
自由って一体なんだい?
健康であることに縛られてやしないかい?
大人たちからの診断に支配されるべきなのかい?
尿を入れた紙コップの温もりを奪う権利などあるのかい?
尿を入れた紙コップを提出する所にある小さな窓ガラスを壊して回ろうか?
軋むベットの上で心電図を測る気なのかい?
大人たちがレントゲンで息を吸って止めろ止めろと言うが、俺は嫌なのさ。
こんな退屈な健康診断に何の意味がある?
視力検査で心に空いた穴まで見えるのかい?
聴力検査で魂の叫びが聴こえるのかい?
落書きの問診票と
外ばかりみてる俺。
名前を呼ばれ病室のいつもの席に座り、
何に従い、従うべきか考えていた。
ちっぽけな血圧の偏差値からの卒業
上も下もない世界への出口を探すよ。
こんなにも
騒がしい
病院に
佇む君は
とても小さく
とっても寒がりで
僕に微笑みながら
君は採血
せがむんだ
盗んだ車椅子で走り出す
行く先もわからぬまま
イメージしてたナース服と違う
覚えたての「セカンドオピニオン」吐き捨て大人たちを睨む
自由になりたかった
オナ禁の夜。