友達からの電話3 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

よし、更新すっか。



あれから不安な日々を過ごしていた。



自分のことが不安なのと、やっぱ友達が心配というのもある。



巷ではiPhoneⅩが発売されたというのに、結局は繋がらなければコミュニケーションの意味はない。



どっちなのかわからないのだ。



友達の残した着信履歴がグッドニュースなのか、バッドニュースなのか。



いや、というか、俺がバッドなガラケーなんかを使っているからいけないのだ。



この世界にはラインという名の素晴らしいグッドなアプリケーションがあるのだから。



そもそも神社で神頼みしてる時点でバッドが濃厚なんだけどさ。



グッドニュース、バッドニュース以前の問題で、これはガラパゴスニュースなのである。



職場にいる年上のイケメンはiPhoneを3台も常に持ち歩いているのだが、そのうち2台はiPhone8とiPhoneⅩなのだ。



これが侍の時代なら銘刀の三本差しである。



ちなみに彼は電子たばこのアイコスも二刀流でござる。



そんなイケメン侍が休憩中の喫煙所にやってきたのだ。



iPhoneⅩを片手に持ちながらやってきたイケメンが隣に座った時、俺のガラケーがポケットの中で震えたように感じたのは、バイブ機能なのか武者震いなのかそれはわからない。



イケメンはiPhoneⅩの画面を俺に見せてきた。



新しい機能だったり最先端のツールとしての遊び方の説明をしてくれるのだろうか?



画面には女の子が写っていた。



「この女、可愛くないっすか?」と聞かれた。



『え?まあ…可愛いですね』と無難に答えた。



イケメンは40才で独身というモテ期の向こう側にいるので、感覚が普通ではないところもある。



イケメンにはイケメンの苦しみがあるのだろう。



それは悟りの境地に近く、イケメンからすると女とはマンコ以上でもマンコ以下でもなく、マンコが歩いている感覚なのだ。



「可愛いっしょ?でもぉ、実はこいつぅ、ニューハーフなんすよ!どうすか?」



『いや、どうすか?言われても…(笑)まぁ、ヌケるかヌケないかで言ったら…?』






「ヌケますね。」
『ヌケますね。』



ガラケーとiPhoneⅩの差は何のかよくわからないが、機能と肉体は似ているわけで、イケメンという肉体で生まれた者と、ニューハーフとは男という肉体で生まれた者で、機能性と内面性に完全なる答えがあるのだとしたら、射精することがそれらを定めた神に抗う手段なのかもしれない。



話は戻るが、とにかく悩みなんてのは一人で抱え込んでても最短距離で解決するわけがない。



悩みの弱点とは誰かに相談されること。



悩みは脳ミソの風邪みたいなもんで、治すには他人の脳ミソを使って自分の脳ミソが感染した悩みのウイルスをやっつければいい。



友達の親友であるTちゃんに電話して相談したわけよ。



夜中の11時半くらいにね。



普通に考えたら失礼な時間帯だけどね。



Tちゃんとは友達と3人で深夜のファミレスで閉店間際に30分くらいしか喋ったことがないんだけどさ。



でも悩んでるときは脳ミソが風邪をひいてるからさ。



そういう時はとにかく喋ったら楽になるからね。



だけどTちゃんの彼氏は束縛が超絶激しいから、夜中に知らない男から電話が掛かってきたらそれで彼氏から誤解されて、すげえ迷惑だとは思うけど、だけどそこまで考えるとこっちの悩みが悪化するので、じゃあその悩みも相談してしまえばいいや、とTちゃんに電話を掛けたわけです。



はい。



そうです。



ええ。



もちろんこれも、正解なのは【LINE】だな、とは思います。



世の中は僕が思ってる以上に便利なんですね。



でも悩んでる時は仕方ないよ。



口があって耳があって言葉というものがある世界に生まれてきちゃったのだから、そんで右手には携帯電話ってのがあるんだ、電話したっていいじゃないか!



少なくとも俺は迷惑だとは感じない。



「どう思う?」と。



そしたら、旦那がいない時に電話を掛けてきたんじゃない?って言うわけ。



なるほど、それならハロウィンで俺のこと思い出して電話してきたのかな?ってのは理由としては繋がると。



だけど、電波が届かない相手に3回も続けて電話を掛けるような子じゃないよね?って、Tちゃんに聞いたのよ。



Tちゃんは友達とは小学校からの親友だからお互いに根っ子の部分の性格を知ってるからね。



そしたらTちゃんも「まぁ満月満月(友達)は、そんなしつこくするようなタイプじゃないね」と。



でしょ!と。



やっぱりこれは旦那が掛けてきたのかな?と。



で、俺もハッキリしたことをTちゃんに言いたいんだけど、これは友達がTちゃんに旦那のことをどこまで伝えてるのかがわからないから、そこを確認したくて聞いたのよ。



「Tちゃんは、満月満月ちゃん(友達)から旦那さんのこと、どこまで聞いてるの?」と。



「どこまでって、旦那とは3人で会ったこともあるし、喋ったこともあるから、どういう人かは知ってるよ」と。



うーん。



頭文字が“ヤの字”のやつ言わなねえなと。



あんな旦那はどっからどう見ても“ヤ印”だろと。



俺の理想としてた答えは、Tちゃんから単刀直入に「旦那がヤーさんなんでしょ?知ってるよ」みたいな、登山者が山道で交わす挨拶のような爽やかな返しだった。



だけど、これは仕方ない。



Tちゃんも知ってて俺に黙っててくれてるのかもしれないしさ。



友達が地元にはもういないよって話を俺に教えた時にも、Tちゃんからは俺がその友達の行き先を知ってると言うまでは、自分から“大阪”という地名は出さなかったからね。



でも自分からは口を割らないというのは、むしろTちゃんに対する信頼関係に繋がるからいいけど。



なんだろな、Tちゃんとは喋ってるだけで信頼関係の基盤となるビンゴのようなマス目がどんどん埋まっていくような感じ。



ここのマスが埋まるってことはこっちのマスも埋まって、ということは、Tちゃんとこの列“友情”に関しての感覚はビンゴだな、みたいにとにかく話が早くて喋るのが楽ちんなのだ。



そんで俺が友達に送ったメールの内容をTちゃんに話して、どこかに問題点はないかの確認作業をしたわけ。



メールの内容だけなら性別はバレてないよね?と。



最悪は俺はオネエとして通すから話を合わせてくれと。



友達は天然なところがあるから無理っぽいけど、Tちゃんとはアドリブでも狙ったところに着地できると思うのだ。



それなりの度胸があるというか、肝っ玉も据わってるような気がする。



オネエだけでは弱かったら、時々、記憶喪失になるやつにするからと。



たまに記憶喪失になる設定で行こうと。



一番の問題は俺たちがどこで知り合ったかを旦那は疑ってくるだろうから、小学校のときの仲間で俺が転校したことにしようと。



これは3人が同い年という共通点を活かせるのと、小学校時代の低学年の頃の記憶なら話が多少食い違っても問題はない。



最低限の知識としてTちゃんと友達が通っていた小学校の名前を教えてと言ったわけよ。



そしたら「えーと、何小だったかなぁ…」と、Tちゃんが急に記憶喪失になったのだ。



いやいやいや、そこをボケちゃうと俺が殺されちゃうから!と。



電話の相手が旦那で喋ったときに訛りがあった方がいいかな?とTちゃんに提案した。



意味がわからないと言われた。



旦那は大阪にいるわけだから、俺の喋り方が東北訛りだったら大阪ー青森間だったら怒りも距離的に落ちるんじゃないか?と。



それか中国語訛りかスペイン語訛り、片言の日本語も国が選べるけどどうする?と。



そこまでする必要ないよ、と言われた。



じゃあ今から旦那が電話に出た時のシュミレーションをするから、Tちゃんならどうするかを教えてくれと。



「お前、誰やねん」



『お前こそ誰だよ』



いきなり強気で行くの?それ大丈夫なの?とTちゃんに聞くが大丈夫だと言うのだ。



じゃあもっかい最初からやるよ。



「お前、誰やねん」



『お前こそ誰だよ』



「わしが聞いとんねん、お前、誰やねん!」



『お前こそ誰なんだよ!!』



待て待て待って、2回目も行くの?これはマズイでしょ?旦那を怒らせてるようなもんじゃん、と。



別に問題はないでしょ、急に知らない相手から電話が掛かってきたらそう答えるのが自然だとTさん曰く。



確かにTちゃんはオラオラ系の彼氏と付き合ってるからそういう男の扱い方を熟知しているのかもしれない。



俺が知ってる男とはガテン系とはいえ組織内での感情を最低限コントール出来る男たちなので、女の前だけで見せる一匹狼の本性とは女だけが知っている可能性はある。



じゃあまた最初からやるから。



「お前、誰やねん」



『お前こそ誰だよ』



「わしが聞いとんねん、お前、誰やねん!」



『お前こそ誰なんだよ!!』



「さっきからごちゃごちゃうるさいねん!!!!こっちが誰か聞いとんやろが!!答えろや!!」



『だから、お前こそ誰なんだよ』



いやいやいや、Tちゃん!?3回目はないでしょ?と。



殴られるだけで済んだことがさ、3回目も行っちゃったらダメだよね?



殺される。これは殺され方のグレードを上げてるだけだよね?と。



旦那は電話の向こうで怒り狂ってるよ、これ、どうするの?



『そしたら電話、切っちぇばいいじゃん』



……。



無理だって、それは無理でしょ。



『まぁ最悪、私は女だから大丈夫だけどね…』



……ォィ!



ここで“男なんだから”を発動させるのかい?



突起物と球体が2つぶら下がってるだけの違いなんだよ。



「そのうちまた電話掛かってくるんじゃないの?それとメールだけは送らない方がいいよ。証拠が残るから」



それはそうだろうけど…



親友なんだろ?



「親友だよ!私だって出来ることがあるならやってるよ!!でも、どうすることも出来ないんだよ」



だけどさ…



「これは満月満月(友達)が決めたことだし、これが満月満月の人生なんだから」



俺さ、前に友達から昔の写真とか10代の頃のプリクラを見せて貰ったことがあんの。



その中のプリクラで、友達とTちゃんが二人で写ってるやつ見せて貰って、「これが私の親友のT」って紹介されてさ。



そんときに二人で変なポーズしてたの。



だけど、そのポーズ、俺はプリクラより先に見たことあってさ。



パチンコで勝った時に友達の吸ってる煙草、ワンカートンあげたの。



その時に友達はそのポーズをしたの。



だから友達は、嬉しいときとか楽しいときには、10代の頃からずっとこのポーズしてんだよ。



Tちゃんとのプリクラも、すげー楽しかったんだろなって、それが親友って言えるのいいなって思ってさ。



友達ってそういうやつじゃん。



「あいつは…何勝手に見せてんだよ(笑)」



……。



「…大丈夫。満月満月は死なないから!」



それは前に友達の口からも聞いたことのある台詞だった。



(大丈夫、私は死なないから)と。




うん。



いや、あの、その、それもそうなんだけど…



俺だよ!俺!!



俺が殺されちゃうパターン、俺が殺されちゃうバージョン、俺が殺されちゃうエディションは何も答えが変わってないだろ。



それからも友達からの着信がたまにあったが、それに対して俺から折り返すことは出来なかった。



それが自分の命を危険に晒すデスコールにも聞こえたからだ。



よろしくないね。



お望み通り、電話に出てやった。



大丈夫、俺も死なないからと。



たぶん。