友達からの電話2 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

友達の携帯から俺に掛かってきた謎の電話、その目的は何だったのかを考えるわけだ。



とりあえず、素直に考えれば持ち主である友達が俺に掛けてきたとするのが妥当だろう。



でも、どういう心境の変化があったら急に電話を掛けようとするのか?



ここがわからない。



だってさ、久しぶりに連絡を取るならメールからでもいいよね。



いきなり電話を掛けてくるってどういうことなんだろうと。



友達は何かを俺に伝えたかったのか?



圏外なのに3回も掛けてきたわけだから、何か切羽詰まってたのかな?



こればっかりは友達にしかわかんない。



女の考えてることだとか本心ってのは男には理解できないことがある。



その答えを聞いた瞬間に、女の口から出る答えとは最初の本心とは変化してしまうこともあるからね。



まあ男にも女には理解できない触れることすら出来ないキラッキラに輝く男心ってやつがあるわけでね。



だけど、友達に何かがあったと考えるのが普通だろう。



友達は良くも悪くも思ったことを言葉で伝えるよりも行動で解決しようとするやつだったから。



じゃあ、それを俺に電話で伝えることで何かが解決するのか?



解決することの出来ないことになったからこそなのか?



俺は随分前に友達と喧嘩をして着信拒否をされたのだ。



そんで仲直りした時に友達と1つだけ約束したのよ。



何があっても着信拒否だけはするなと。



友達の中での喧嘩ってのは絶交みたいな感覚だったからさ。



喧嘩というか口論だけどね。



口論の着地が無視ってのはズルいだろ。



友達がそうなるのもわからなくはない。



友達の両親は熟年離婚してて、二人いる兄貴もバツ1とバツ2だし、友達の仲間たちもみんな離婚してて、もちろん友達の旦那はバツ2なのよ。



こんな環境で育って生活してたら、そういう価値観になるのも当然だし、理解もできるからね。



そうすることで幸せになれることもあると思うからさ。



友達の家族はみんなバラバラになっちゃって、だけど家族が帰る場所である実家という空間だけは友達は娘なのに必死に守ってきたわけだよ。



母親との確執もあったから友達は同じ女として余計に一人で抱え込んだんだろな。



父親と兄貴と旦那と男連中の為に全部を背負ったんだと思う。



親の作った借金で実家が差押えになるからと、それを友達の旦那が金を立て替えてくれたと。



だけど旦那も普通の男とは違うから、実家の建物と土地の権利は旦那の物になったわけ。



それがたったの300万でだよ。



それだけじゃなく、旦那と離婚する場合には友達は旦那に一千万を支払うという内容の契約書が作成されたわけでね。



つまり、友達は20才年上の旦那が死ぬまでその面倒を見る契約を交わしたことになったわけだ。



契約を交わさなきゃ信じることが出来ないってのは文明として賢いことなのか俺にはよくわかんねえけどさ。



女としてどう生きるかってのは、まぁしんどいだろうね。



俺の中にある乙女心をいくら増幅させてもそこには、届かないと思う。



友達は俺に何を伝えたかったんだろう。



旦那が本職に戻る話は聞いていた。



旦那は実家を売って嫁である友達を連れて大阪に帰ると。



俺と友達は、大阪に向かう日を待たずに連絡を取らなくなった。



友達は俺との電話で、とてつもなく冷たい態度を取ってきたからだ。



俺からの連絡が明らかに迷惑だという態度だったのだ。



それから友達からの連絡は一切なくなったのだ。



俺からも連絡はしていない。



いや、友達の誕生日に“おめでとう”とだけメールを送った。



もちろんそれにも返信はなかったし、友達がどこにいるのかすら知らなかった。



旦那が本職になるということは、住む世界が違うということだ。



友達の親友であるTちゃんとも友達は予告したとおり、いつの間にか音信不通になっていた。



友達は優しいやつだった。



俺は高卒で就職する為に上京してきたわけだけど、それから何回も転職をすることになったけど、知らない世界、未知の世界、その先々でたくさんの先輩たちから仕事だけじゃなく、いろんなことを学んできたのよ。



後輩に対する優しさを学んだりだとか、嫁や家族に対する男としての優しさとかを学んだりしてきたわけよ。



俺が友達から学んだのは女の優しさ、主婦としての優しさだった。



友達からすればそれは当たり前のことなんだろうけど、俺は何も知らなかった。



部屋を掃除してくれたり、洗濯物を畳んでくれたり、料理を作ってくれたり、台所を綺麗にしてくれたり、そのやり方も友達は俺に教えてくれたのだ。



家事というものが完全なる仕事であり、それと向き合う姿勢を俺は友達から学んだのだった。



ゴミ屋敷みたいな部屋が綺麗になったのだ。



だけど友達と連絡を取らなくなると自分で部屋の掃除をするのも億劫になり、片付けをしなくても友達のように叱られる相手もいなくなったので、すっかりまた堕落した生活に逆戻りしていた。



ペットボトルの空き容器は増え続け、飲み残しやラベルを剥がさないまま70リットルのゴミ袋に満タンになったやつが玄関の側にずっと放置してあった。



回収日が隔週だというのもあり、なんかやる気が起きないまま月日だけは過ぎていた。



友達から着信があった日の帰り道、近所のゴミ捨て場の前を通る俺が見たのは、翌朝に回収する為に用意された空き缶や空き瓶と書かれた専用のプラスチックのカゴと、空ペットボトルを入れる網状の袋だった。



そういうことかと思った。



部屋に着いてから大量のペットボトルのゴミと向き合った。



飲み残しを流したり、ラベルは剥がしてキャップも分別した。



たまたま着信があった日の翌日がペットボトルの回収日とは、これは俺がこれをやるための偶然なのだと感じた。



友達は俺の部屋でこれを3袋分もやっていたのだ。



俺が寝ている間にあまり音を出さないように気を使いながら、この作業をやって帰ったのだった。



相手が誰であろうと生活する為の環境を綺麗に保つ為の術を、それに取り組む姿勢を、友達は俺にお手本として行動で教えてくれたのだった。



そしてそれらは友達が母親から学んだことかもしれないし、元カレや旦那から教わったことかもしれない。



全ての結果ではあるが、最終的に俺の部屋が綺麗になったのだ。



連絡を取らなくなっても、友達からの着信履歴だけで俺がちゃんとすぐに行動できるようになったのは、それはきっと友達が真心で教えてくれたことだからだと思う。



さすがの俺も、そこまでは汚すことができない、それだけのことを友達から学んだのだった。



当たり前のことが他人にとっては当たり前じゃないことがある。



このタイミング、この流れでも、ペットボトルを捨てれないようなら罰が当たる、そんな感覚である。



おかげで部屋は片付いた。



親に頼れないとか、兄貴にも頼れない環境ってのは考えただけでも生きるのが困難でしかない。



自分の娘とか自分の妹だと考えたら男としては生きていけない。



俺の実家の価値観だとそうなる。



思春期の反抗期だった俺に母親から言われた言葉がある。



「人様に迷惑を掛けるような人間に育ったなら、それは育てた私に責任がある、だから社会に出る前にお前を殺して私も死ぬ、わかったか!!」と。



うちの母親は宗教をやってるのでこれはガチなのだ。



友達の母親も知り合いに勧誘されて宗教をやっているらしいが、家族を捨てて誘われたオバサンと一緒に暮らしているそうだ。



友達が反抗期に母親から言われた言葉はこうだ。



「あんたなんか産まなきゃよかった」と。



母親から言われた言葉とは、その爪痕がいつまでも残っている。



俺も友達も同じように。



だから俺がずっと連絡を取らなくなっていた友達の誕生日にだけ“おめでとう”とメールを送ったのは軽い気持ちではない。



優しい人間とはそれだけの悲しみを知っている。



友達とはくだらない話もいっぱいしたけど、たまに真面目な話もした。



大阪に行くかもしれないという友達から真面目なメールが来たことがあった。



メールをやり取りする中で、友達は俺に伝えた。



満月満月くんは私のことを初めてちゃんと人間として見てくれた。ありがとう”と。



重い言葉である。



このブログの読者である童貞諸君に伝えたい。



これは俺の自慢話でもなんでもない。



俺が君達に伝えたいのは、女の子の“初めて”とは肉体的な処女だけではないのである。



女の子には精神的な意味での“初めて”という、キラッキラに輝く処女膜があるのだ。



それがちゃんと人間を見るということだと思う。



だけど友達は優しいやつだった。



その優しさに俺が気が付かないこともたくさんあった。



だから、今さら気付いて申し訳ないけど、最後に友達が電話で俺に対して、とんでもなく冷たい態度を取ったのは、俺に対する友達なりの“バイバイ”だったんだろうね。



バカみたいに優し過ぎるだろ。



友達がどんな生活をしているのかはわからない。



どんなに崖っぷちに追い込まれていても何かを信じていれば奇跡は起きる。



ギリギリの状況だとしても、信じていれば笑える何かがきっと起きる。



どんなことがあっても俺が必ず笑いに変えてやる。



ただ、今だけは、俺が笑えない状況にいるような気がする。



不安です。



友達が親友のTちゃんと音信不通なのは話が違うと思います。



Tちゃんと俺が連絡先を交換した理由は、友達の身に何かあった時や、最悪、お亡くなりになられば場合に、線香くらいはあげたいので、その時はTちゃんから俺に連絡が来るようにと、そういう説明をしましたよね。



なぜ、Tちゃんと音信不通になっちゃったわけ?



裏社会の情報が友達からTちゃんに漏れることを旦那が潰したのか?



そんで、旦那が嫁である友達のスマホのアドレス帳を見てたら、謎の番号があったからそこに掛けてみたのかい?



問題なのは、そんな危機的状況である俺を、頼みの綱であるTちゃんが面白がっていること。



何回シュミレーションしても俺が殺されるパターンしか言わないのだ。



そんで最終的には、まぁ私は女だから大丈夫だけど…と、最後に変な沈黙で逃げやがるのだ。



これだから女子ってのは嫌なのよ。



小学校の時から何かあったらすぐ先生にチクったり逃げたりするからな。



そんでさあ、着信があった2日後の夕方5時半くらいに友達からまた着信があったの。



俺は現場のトイレでうんこしてたんだけど電話に出たのよ。



「もしもし」ってさ。



そしたら電話がすぐに切れたの。



これ、旦那からの電話だったら相手が男だってことがバレたよね?



物凄く声が低くてセクシーな男だってことがバレたよね?



声フェチからも誉められるこの低音ボイスが、仮設のトイレでうんこしてたからさらに響いてたよね?



そっからまたメールも電話も音沙汰なしよ。



もちろん俺からは何もアクションは起こせない。



相手は友達の旦那か、もしくはそっちの世界の兄弟の若い嫁さんかもしれない。



たぶん、連中は友達の優しさってもんに気付いてない。



電話を掛けてくる時間帯もおかしいし、電話に出た瞬間に切るのは友達の優しさではない。



これは着信拒否をする頃の誰も何も信じてなかったときの友達がやるような幼稚なことだ。



向こうの目的は読めないが、電話を掛けてるその相手とは連中からすれば想定外の男だと言うことだけだ。