年上のクズ2 | 天狗と河童の妖怪漫才

天狗と河童の妖怪漫才

妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

このままOさんが姿を見せずに職場を去る可能性が大きいので、その記憶をここに残そうと思う。



来るもの拒まず去るもの追う精神で相手の話を聞くのである。



Oさんがどんな人なのかはまだわからない中で、その人間としての面白さに僕は興味を抱く。



まず、Oさんは現在独身でバツイチだという会話になった。



プライベートの話は初対面では踏み込むべきかどうかを判断する必要がある。



別れた奥さんとの間には3人の子供がいると聞いた。



結婚生活は11年だったと。



この時点では離婚の具体的な原因はまだ聞けないが、その結婚してから11年の間に3人の子供に恵まれたのならば、2人が愛し合っていた期間の方が長いと思うのだ。



奥さんとの関係は悪くても、3人も産んでるのだから子供は好きなんだなと。



ここは踏み込めるだろうと。



「お子さん達とはたまに会ってるんですか?」



僕は独身なのでこの答えの正解はわからない。



半年に1度なのか、3ヶ月に1度なのか、もしかしたら年に1回しか会えないという、やや笑えない答えだとしても僕は受け止める覚悟をしてOさんの答えを待った。



任せてくれよOさん、僕が貴方を守るから職場の笑い者にしたりはしないよ。



子ども達に会いたくても会わせてもらえない、可哀想なのはOさんの方なんだと。



でもね、会えない時間が愛を育てるとも言いますからね。



さあ、おいで、話してごらん。



Oさんは真顔で答えた。



「別れてから1度も会ってない」







なぬ!?



【こいつ、クズなんじゃねえか?】



えぇ、この時はまだクズの確定申告が終わってなかったんですよ。



僕の見積りも甘かったんですね。



言葉が重い重い。



これはOさん、なかなか尖ってるねぇ。



これね、言ったらボケじゃないですか。



世間一般の感覚からはズレてますからね。



理想の父親像として最下位のやつですからね。



だとしたら、そこの感覚を考慮してOさんが笑いながら言うことで、ようやく安心して受け止められる言葉だと思うんですよ。



「別れてから1度も会ってない(笑)」



これなら自虐的な笑いとしてね、職場で子供がいても頑張って働いてる父親連中に対しても最低な親父でゴメンよと伝わるんですよ。



道徳とか世間の価値観から見たら情けない親父だなって本人の自覚がないと、周りは笑えませんからね。



笑えないことが本当の意味での笑い者になってしまうからね。



これはマズイと僕は即座に判断したので、子ども達には別れた奥さんが会わせない展開に持っていくしかないなと。



ここはひとまず別れた奥さんに悪者になってもらうしかないなと。



そうすれば子供達に会いたくても別れた嫁が会わせてくれない、可哀想なのはOさんだと。



ここは独身の僕も悪者になるしかないなと。



嫁を批判してやろうと。


嫁なんて結局は他人だと。



子供は血が繋がった自分の分身みたいなもんだからと。



なんで会わせてくれないんだと。



これだ、この流れだなと。



現場の状況としてはOさんが3人の子供たちとは「別れてから1度も会ってない」発言で、しーんとしてますからね。



大丈夫だよOさん。



僕がなんとかするからね。



「…じゃあ、別れた奥さんとはたまに会って…」



Oさん食い気味で



「嫁とも別れてから1度も会ってないよ」






Oさん、それ…



ロックスターしか許されない台詞のやつ(笑)



どうしてそれも真顔で言っちゃうのよ。



子供たちには会わせてくれないけど、たまに嫁と会って養育費のことだとかさ、子供たちの成長を聞いてる感じじゃないの?



でもまだ大丈夫だよ。



俺達ガテン系は許容範囲は広いからさ。



ダメ人間の集まりだから、生きてれば色々あるもんね。



ここからだから。



まだ何も始まってねえよ。



いいかい?Oさん。



僕がもう1度パスを出すから、Oさんは合わせるだけでいいからね。



Oさんのクールなキャラクターは大体みんな理解したと思うからさ。



独身の僕からパスを出すからね。



年下の結婚もしたことのない、独身のやつにはわからない、夫婦には結婚生活には色々と大人の事情ってもんがあるんだよって感じでゴールを決めましょうと。



行くよ!Oさん。



「やっぱ、結婚って大変ですよね。結婚してたら…色々とありますもんね?」



誰がどう見ても、ごっつぁんゴールに間違いないと思った。



あとはOさんがクールに「まぁ…色々あるよ(笑)」で大団円だと。



しかし、なぜかOさんの放った言葉はオウンゴールとなった。



「だって、酒飲ましてくんねーんだもん」





はあ?





【それは、お前が酒乱だからだろ?】



そう疑わざるをえない自殺点だった。




次の会話は住んでる地元の話になる。



これは僕の勝手な勘違いで、Oさんの住んでる場所は埼玉だと思っていた。



「じゃあ、Oさんて埼玉生まれの埼玉育ちなんですか?」



「だから、オレ住んでるの満月満月だから…」



慌てて会話を修正した。



「あー、満月満月は東京ですもんね(笑)赤羽が埼玉じゃなくて東京みたいな感じで勘違いしてました(笑)」



Oさんは少しムッとしていた。



満月満月ってどうですか?」



かなりざっくりした質問をしてみた。



ざっくりした質問の方が相手の選択肢も増えるので、トリッキーなプレイスタイルのOさんには合っていたのだろう。



「…いや、どうですか?って言われても…治安は悪いです(笑)」



「え?満月満月って治安悪いんですか?」



「昔に比べたら良くなってきたけどね」



「夜とか、一人で歩いてたらヤバい感じですか?」



「まぁ夜中に女の子とか歩いてたら普通に拉致られちゃうからね。可愛い子なんか特に」



「マジっすか!?じゃあ満月満月って可愛い子いないんすね?」



「いや、いますよ!満月満月可愛い子いっぱいいますよ!」



「どこにいるんすか?」



「え?飲み屋とか…」




Oさんは地元にあるキャバクラやガールズバー、フィリピンパブと、ほとんどの店にボトルキープしていると言った。



ラインの友達も100人が女だと言う。



やはり、そうきたか…。



(仕事<女)タイプだなと。



確かにOさんの発言は酔っ払ってるというフリが利いてたら笑えると思う。



酒場なら許される。



最初に早退してからの休み明けにOさんは膝に湿布を貼って職場で貼り替えていた。



辛そうだったので、マッサージに行ったらどうですか?と薦めてみた。



60分3000円のマッサージとか駅前とかにあるじゃないですかと。



するとOさんは僕の発言を否定した。



仕事でもそうなのだが、僕の指示を一旦否定するクセがあるのだ。



Oさんは自分しか見えてないのだが、こっちとしてはOさんみたいなタイプとは何回も仕事をしているので、その否定する精神を根気強く否定することになる。



この手のタイプにはその否定する意見を尊重しつつ譲れないものは譲れないと論理的に説明したり、絡みのある職人の性格や気質に配慮した結果として伝えても、自分の感情を優先するのである。



途中からは仕事の能率や効率を度外視した単なる意地だけで否定をしてくる。



この無駄なやり取りの時間だけで作業が終わっていることもある。



60分3000円の安いマッサージを否定したOさんは僕に一体何を言うのだろうか?



「それだったらフィリピンパブ行って、酒飲みながらマッサージさせた方がまだいいよ」



いや、まだいいよ、じゃなくて膝の痛みを早く治して普通に仕事しろよって意味なんだけど。



仕事よりも女好きなのだ。



Oさんが嬉しそうに携帯をいじっている時に聞いてみた。



「今の女っすか?」



「そーだけどぉ」



「え?彼女とかいるんですか?」



「ほぇ?いるよぉー」



「マジすか?いくつなんすか?」



「今、付き合ってる女はねぇ、23才の子」



「おい!!」



「パティシエやってる」


「おい!!!!」




これはいくらOさんが僕より1回り以上も年上でもタメ口が許される心からの叫びだった。



この年下の彼女発言には全員が度肝を抜かれた。



そして、全員で祈った。



頼むからブスであってくれと。



これがブスじゃなきゃ現場の士気がダダ下がりになる。



だけど、写真を見せてくれと言う勇気はない。



パティシエの1手が効いている。



看護婦とか保育士と似た我々のような肉体労働者階級が卑屈になる職業でもある。



我々のような虫けらが大卒の女を抱くことは生涯ないのだ。



そんな虫けらと付き合う時点で性格のいい女というのが嫌なのだ。



ブスってのは顔の形だけで、そんなのは、ぶっちゃけ、上っ面のもんなのだ。



どれだけ女から愛されてるかのリングで闘えるかどうかなのだ。



同世代の妻子持ちの男から今でも週一でセックスをして、嫁からケツの穴まで舐めてもらってると聞くと完全に負けたと感じる。



愛妻弁当と同じく羨ましいのだ。



ブスだろうが変態だろうが本音は羨ましいのである。



Oさんが太った女には厳しい意見を言ったことがあった。



脂肪を吸引してもらった方がいいんじゃねえか?と。



Oさんがデブ専じゃないのはわかったけど、痩せすぎは嫌だと思って聞いてみた。



「でも、ガリガリの女は嫌ですよね?」と。



「いや、前の嫁はガリガリだったよ」



【それは、お前のストレスが原因じゃねえの?】



と思いつつ、前の奥さんの胸のサイズを聞いてみた。



「前の奥さんは何カップだったんすか?」



冷静に考えれば、離婚してから1度も会ってない嫁の胸のサイズを質問するのは失礼な話である。



「んー?Aカップだったけど…」



まさかただのクズ野郎だと思ってたOさんと、Aカップの良さを語り合うとは思わなかった。



僕の価値観もおかしいけど、Aカップの女を抱けるOさんはそこまで悪い人ではないなと感じたのだった。



だって、そこはウソをついてもいいはずなのだ。



仕事を休むにしても下手くそなウソをつくOさんだけど、別れた嫁の胸のサイズにはウソをつかなかったことに僕は猛烈に感動したのだった。



Oさん、あとは僕に任せてください。



巨乳好きのやつらは僕が論破してやりますよ。




森を見て木を見てないやつらは、胸を見て女を見ていないと。



別れた奥さんとはOさんが最初に勤めた会社で出会った社内恋愛だったそうだ。



その会社を辞めてから奥さんの実家に引っ越して相手の両親と一緒に暮らしたり、転職したりと、聞けば色々と事情があるんだなと。



でも、それらを差し引いても、現在進行形でクズなのは仕方ない。



またOさんと一緒に仕事が出来るのかは本人次第だからね。



Oさんを出禁にした取引先も、それでOさんをクビにした前の会社の社長も、Oさんと別れた奥さんや子供たち、みんなから嫌われちゃったOさんだけどね。



その気持ちはわかるけど(笑)



彼女がパティシエだから、ブラウニーっていう美味いお菓子があるんですよって教えても甘いの嫌いだからの一点張りなのよ。



塩スイーツとか、甘いだけじゃないお菓子もありますよって言ってもダメなのよ。



それだけじゃなく休憩の時に自販機で買った“おしるこ”を飲んでる俺を全否定してくるのよ。



ありえないって。



これにはカチンときたから“あんこ”について語り合ったら、温泉饅頭は普通に食べるって(笑)