年上のクズ | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

会社に年上の新入社員がやってきたのである。



年齢は48歳でバツイチ、名前はOさん。



このOさんなのだが、入社して2週間ちょっとになるが、出勤したのはトータルで7日間だけなのである。



そのうち1日は膝が痛いから病院に行くと言い出して、午後イチで早退したのだった。



しかもそれが入社2日目の出来事である。



もちろんOさんは、ゆとり世代ではない。



時代が彼に追い付いたのである。



善良な読者の方々には信じられないかもしれませんが、Oさんは実在します。



僕も35歳ですから年齢的な錯覚を経験したことはあります。



例えば、高校球児が年下であることに違和感を感じたりだとか、横綱が年下という現実に対して己の老いを実感したりすることもあります。



逆説的ではありますが、僕がOさんに対して感じたことはそれと同じようなことだと思います。



【こいつ俺より年上なのにクズじゃねえか】



ちょっと言い過ぎじゃないの?と思われるかもしれませんが、今週は月曜と火曜の2日間しか来てませんからね。



水曜日の朝には僕の携帯にOさんから連絡があって、膝の痛みが再発したから病院で注射を打ってもらうから今日は休みますと連絡がありましたよ。



で、その翌日は祝日だったんですけど、Oさんから「明日は祝日だけど出勤だよね?」と確認をしてきたので、「出勤ですよ」とOさんに伝えたんですね。



そしたら「明日は行けると思います!」って声は元気だったんですよ。



やる気はあるなと。



やる気はあるけど膝が痛いんだろなぁと。



で、その翌日、木曜日の朝にまた電話があって「先生から休めるなら休んだ方がいいと言われたから今日は休みます」と。



なるほど、医学的にね。



やる気はあるんだけど、ドクターストップ的なやつね。



それは仕方ないよね。



Oさんも明るい感じの声で「まぁ今日は膝の様子、見る感じなんで明日にはもう大丈夫ですんで」と。



で、金曜日は朝から音信不通というね…(笑)



【こいつ俺より年上のくせにクズじゃねえかよ】



やっぱ、こうなりますよね。



でもまだ、年上の人に対してそれはちょっと言い過ぎじゃないの?って言う優しさはわかりますよ。



これが普通の会社だったら中途採用ということになりますからね。



しかし、我々の業界はガテン系の職人なので会社のようで会社ではないよ。



そう、普通じゃないんです。



普通の一般の人達が生涯関わることのない人材が 集う業界なんですよ。



普通の会社員だったら定年退職するまでに感じることのない種類のストレスを感じることになるんですよ。



感じる必要性も生産性も何もない、この世界の時間が一瞬止まったように感じるストレスが存在するんですよ。



本屋に置いてあるような自己啓発だとか職場での人間関係に関する本をいくら読もうと、そんな小手先のノウハウなんか一切通用しない人材が流れ着く場所なんですよ。



ですから、我々にはクズに対する優しさは標準装備されてますので安心して下さい。



その上で、



【こいつ俺より年上なのにクズじゃねえかよ】



なんですよ(笑)



音信不通ですけど、何かあったら心配だから社長にOさんの実家に連絡するように伝えましたよ。



Oさんは実家で両親と住んでますからね。



短い間ですけどちゃんとOさんとはコミュニケーションは取ってましたからその辺の情報は本人から聞いてますからね。



社長から連絡があって、実家に連絡してOさんのお母さんと話したと。



朝はちゃんと家を出たと。



【こいつ俺よ…



いやいや、お母さん巻き込んだらさすがに言えないよ。



母ちゃんは何も悪くない。



ただ、この状況をOさんはどうやって切り抜けるのだろうか?と。



はっきり言うと、正直に素直に抱えてる悩みがあるなら打ち明けてくれればそれでいいのよ。



Oさんからしたら僕は会社の立場だと先輩になるけど、僕もクズなんですよ。



いつも寝坊して遅刻ばっかりしてるんですよ。



いまはまだOさんが職場の人達と馴れてないだろうから頑張って寝坊しないように努力して朝なんかクソ寒いのにちゃんと布団から起きてるんですよ。



オナニーしたら明日の朝は起きれないかもしれないと、でもオナニーした方がすぐに眠れるかもしれない、いや、統計的にオナニーしたら寝坊するだろう、リスクマネジメントとはこういうことなのさ。



でも安心してオナニーも出来ないなんて、これじゃまるで社畜だな。



会社組織としてはその時代に合わせた状況判断が不可欠であり、それらが日本の経済を支えてきたのである。



誰もが皆、時代の荒波に翻弄されながらも苦渋の決断を下す、そんな眠れぬ夜を越えてきたのだろう。



優しい気持ちで目覚めた朝は大人になっても奇跡は起こるよと。



そうだ!



朝、オナニーしようと。



これぞエポックメイキングだね。



まさにマインドフルネスだよ。



イノベーションというかさ。



マスターベーションの親戚みたいなね。



ペペローションの親友みたいなさ。



そういうね、性欲なんて人間だから誰だってあるんだからさ。



性癖だって人それぞれあるからね。



悩みやストレスもみんな抱えて生きてるわけでさ。



「昨日、飲み過ぎて寝坊しちゃいました」で、いいじゃんか。



そっち側の信頼関係の方が絶対に強いからね。



まともな社会人を装うよりも正直に謝った方が笑えるからね。



入社した2日目の昼で帰った時点で怪しかったからね。



段取りして途中のままの仕事が終わってないことに対して一言もなかったもんね。



せめて、そこは自分の膝の痛みよりもプロとして途中で仕事を放棄する心の痛みの方が上回るべきだったよね。



まぁそこは僕がフォローするなり、頭を下げれば済む許容範囲ですからいいんですよ。



まともな社会人は遅刻するくらいなら休んだ方がいいと思います。



その理由も自分が悪い訳じゃなく、家族に急病人が出て仕方なく休むパターンが理想でしょう。



そう、滅多に遅刻したり休んだりしないような普段から真面目な人がピンチの時に使う“言い訳”はウソ臭いのである。



職人の世界とは基本的に肉体労働なので頑張る人と頑張らない人の差が出るのだ。



本人的には要領良くやってバレてないと思っているが、誰かがその負担を補っているのである。



仕事をやればやるだけ些細なミスの確率は上がることになる。



色んな事情が絡んでの結果としてのミスだとしても謝罪をすることになる。



それでも頑張ってる姿勢は見てくれているので信頼関係は築かれることになる。



頑張らないやつが何をするかというと、真面目なポイントをアピールするのである。



無駄に朝早く現場に来やがるのだ。



朝早く来るイメージを定着させる作戦なのだ。



これが人身事故で電車が遅れてたりすると、それでも遅刻しない時間にちゃんと間に合ったのに、寝坊じゃないんですよアピールをしてくる。



つまり、真面目っていうのは戦略的な保険ってだけで、そういう人は仕事上のイレギュラーにも慌ててしまうのよ。



そもそも本当に真面目だったら、ちゃんと勉強してサラリーマンやってんだろ!!(笑)



頑張って仕事してたら寝坊するし、体調崩して休むし、ストレスが限界越えたら入院するんですよ。



だからOさんも仕事を無理して頑張ったから膝が痛いんだと。



ドクターストップならそれは仕方ないと。



でもさ、音信不通は違うじゃん。



音信不通で無断欠勤と、膝の痛みは関係ないじゃん。



何回掛けても「ただいま電話に出られません」という状況なのよ。



そしたら金曜日の夜に社長から電話があって、Oさんと連絡が取れたと。



もう、これはOさんも正直に言うしかないじゃん。



音信不通だった理由をね。



頼むよ、Oさんと。



ここは本音で喋るしかないよと。



Oさんは真面目を装うタイプじゃないもんね。



頑張ったから膝が痛かったんだもんね。



でも、なんでOさんは朝から音信不通だったの?



その答えを社長は言った。



「携帯がぶっ壊れてたから…」



【こいつクズ確定だわ】



お前で何人目だよ!!



携帯ぶっ壊れてたパターンのやつ前にもいたわ!!



つーか、家の電話あんだろ!!



あれか?アドレスは全部携帯の中だから会社の番号も俺も社長の携帯も連絡先は全てわからなかったのか?



なるほど。



でも、母親から朝はちゃんと家を出ましたけどって聞いた話はどうしたらいい?



「病院に行ってたんだって…」



おい、それなら膝より先にまず携帯直せや!!



まあまあ、過ぎたことはしょうがない。



それでもいい、それでもね、ちゃんと電話で状況を説明するだけ前のやつよりはいいじゃない。



ただまぁ、携帯が直ったのに連絡してくる時間が遅いのはどうなの?



そこはやっぱ膝が痛いから携帯ショップに行く時間が掛かったのかな?



代替え機とかさ、とりあえず連絡だけでも急げなかったのかな?



「Oさんの家の電話から掛かってきた…」



つまり、まだ携帯はぶっ壊れたままなのか?



え?



じゃあ、社長の携帯の番号はなんでわかったの?



家の電話に着信履歴が残るやつなのか?



職安の書類に会社の電話番号記載されてんじゃないの?



その書類ももう手元にはないの?



そこの謎は置いといて、土曜日も膝が痛いから休んで月曜日からまた来るらしいね。



だけど、その時は携帯が新しくなってないとダメじゃない?



Oさん、そこ今回の事件で結構重要なアイテムになっちゃってるけど大丈夫なの?




Oさんはそこまで悪い人ではないんだけどね。



満月区生まれの満月立区育ちってだけでね(笑)



あの世代でその環境で育ったのにヤ満月ザじゃない方が逆に異端児なのかもしれないけど。



高校生の時にやってたアルバイトがホルマリン漬けの死体洗いというね(笑)



それで5万だってさ。



そりゃ膝に来るよね(笑)



今とは時代が違うからね。



君の名は。とは世界観が真逆だからね。



キラキラしてないからね。



高校生が洗いながら「君の名は…」つっても返事はないからね。



前の会社をクビになったって聞いた時は、Oさんを擁護したのよ。



Oさんが仕事でミスして取引先から出禁になったらしくて、それでも社長が従業員を守らずに1人をクビにして取引先からの仕事を優先させるのはおかしいと。



でも、今ならOさんが前の会社をクビになった話も「でしょうね(笑)」って感じる。



今頃は飲み屋の姉ちゃんに「かったりぃから今日も仕事バックレてやったよハハハ(笑)」とか言ってると思う。



その話を聞いてる飲み屋の姉ちゃんはそれが仕事だということになる。



付き合ってる彼女は23歳でパティシエだと言う。



「でもオレ、甘いの嫌いなんだよなぁ」



うるせーよ(笑)



こいつのどこがいいんだよ(笑)



前歯が1本ないのに甘いのは嫌いってややこしいわ。



ばりばりのシンナー世代丸出しじゃねえか。



彼女がパティシエって左官屋の間違いじゃないのか?



こんなOさんが若い女にモテるのは何かしらの魅力があるんだろうと、仕事じゃなくそこの技術を学ぼうと思った。