不良楽団2 | 天狗と河童の妖怪漫才

天狗と河童の妖怪漫才

妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

これの続きというかオチを書いてなかったので、ざっと説明しますと…



俺が断トツのワルだったわけですよ。



ガテン系の職人というね、偏差値って漢字が書けないレベルの偏差値の連中が集まったらどうなるのかと。



2日間の講習ということでね、詳しくは前回の記事を探して読んで下さい。



年齢も職種も様々な、お互いに名前も知らないバカな男が集まると面倒なことになるんですよ。



俺の方がワルだぜアピールが始まります。



トイレ休憩の時間になっても、講師の先生が伝えた開始の時間をとっくに過ぎてるのに堂々と戻ってくるとかね。



誰かが決めたルールになんか縛られるなんて御免だぜ!!って感じで、遅れたことにビビってねえぜとわざわざ講師の先生の前を横切って席に戻ったりね。



ワルというか、時間にルーズなだけなんですよ。



休憩の度に徐々に遅れて戻ってくる人数は減るんですけど、仲間で参加してる連中の先輩のやつだけは最後まで遅れて戻ってくるんですね。



後輩の前でカッコつけてる感じなんでしょうけど。



結局ね、ゆとり世代の不良なんてこの程度なんですよ。



学生時代とは違うんですよ。



義務教育ではなくて、これは受講料を払って講習に参加してるわけで、嫌なら帰ればいい。



社会性と不良性をどのように表現するかの違いが、まだわかってないんですよ。



本当の意味での社会のルールや物事の本質について理解していないわけでね。



で、講習の途中からは5~6人でグループを作ってミーティングみたいなのになったんですよ。



最初に簡単な自己紹介をしてくださいと先生から言われてね。



グループも運営してる係りの人が決めたんですよ。



リーダーと書記係りも決められた紙が貼り出されてて机を移動して各グループに集まったわけですよ。



僕のグループは40代の人と30代の僕と、20代後半のやつと、19と20の若いのが二人でした。



ミーティングの制限時間があるので名前と年齢と職業を言う簡単な自己紹介だと思ってますからね。



みんなそう聞いてるからね。



僕の班は40代の人がリーダー役で、その人が「じゃあ、リーダーのオレから自己紹介するわ」と。



これが、長ぇの。



名前と年齢まではよかったけどさ。




「で…、ペンキ屋を20年くらいやってたんだけど、まぁ思うところがあって…土木関係の?現場監督みたいなのをやってくれないか?っつーことで…」



もうね、若いの二人は顔面から「おっさん話が長ぇよ」って出てるのよ。



でも、40代のバリバリヤンキー世代のリーダーは制限時間なんて関係ないぜって感じでね。



硬派なヤンキーの集会みたいになってんのよね。



「…それで、オレとしても…やってやるぜ!っつー感じで…仕事ってのはさ…」



熱いバカは嫌いじゃないんですけど、他の班はミーティング作業を始めてるからね。



「…つーことで、夜露死苦!!」



次が若いの二人で、一人目は気が強そうなハッキリ喋るやつで鳶職をやってると。



こいつは職人だけど頭はキレるタイプで、リーダーの長話を受けて簡潔に自分の仕事内容と講習にきた経緯を説明してたのよ。



二人目は優しそうな顔だけど、胸に入れかけのタトゥーがガッツリ入ってるやつでね。



この若いの二人は同じ職場の仲間みたいで、タトゥーのやつは名前と年齢を言ったら「……あとは隣と一緒ですw」みたいなね、先輩から可愛がられるタイプのやつ。



次の20代後半のやつは職人じゃなくて設計事務所から来た管理職だという真面目な大学生みたいなやつでね。



耐震計算がどうのとか、仕事内容を彼なりに簡単に説明してたけど、ほぼ理解できなかったからね。



このインテリ坊やは純粋に賢いんだけど、リーダーは賢いやつでも年下には負けたくないタイプだから後々面倒なことになるんですよ。



で、僕が最後に自己紹介してミーティングがやっと始まりました。



自己紹介が長かったから他の班からは大きく出遅れてしまったわけです。



リーダーはバリバリヤンキー世代で、書記係は19才のタトゥー入れたやつでね。



リーダーが進行してミーティングするんだけど、1つ1つの話が長いのさ。



講師の先生からは最低でも50個は問題点を書きなさいって言われてるんだけどね。



リーダーは先生のその言葉にもブレませんから凄いですよ。



「関係ねえよ。こういうのは量よりも質が大事だからさ」



いや、最低でも50個書き出せって言ってる時点で、質よりも量なんだよ 。



でね、書記係のタトゥーも漢字が全く書けないから全部ひらがなで書いてるのよ。



リーダーはバリバリヤンキー世代だから漢字には馴染みがあるから「これはさ…」みたいな口を挟むんだけど時間がないからね。



隣のインテリ坊やは賢いから口じゃなくて正解の漢字を余白に書いて教えてるのよ。



でも、タトゥーにはそれを書き写すのも時間が掛かるわけでね。



リーダーはインテリ坊やに対しても負けたくないから難しい言葉を使おうとするのよ。



「このテキストの文章は…ココとココの意味が『デフォルト』しちゃってるからさ…」



しーん。



…たぶん使い方は違うんだろうけど、誰もリーダーに突っ込めない空気になってる。



それでもまだ6個くらいしか書き出せてなくて、タトゥーに対してリーダーが大声で「おいおい、全部、平仮名じゃねえかよ(笑)」みたいな。



それは可哀想だし、僕も漢字は読めても書くのはできないから「漢字なんか書けなくても読めればいいんだよ」ってフォローしたりね。



そしたらタトゥーが途中からカタカナを入れてきたんですよ。



「おぉ!お前、カタカナいけんじゃん!」みたいな。



ひょっとして高卒か?みたいなね。



見た目はヤンチャだけど、こういうバカなんだけど愛されるやつはどうにかなるのよ。



自分の愚かさを晒せるやつね。



彼は薬指に指輪もしてたから結婚してるんだろうけど。



悪い先輩とか仲間に掴まると人生終わっちゃうから危ないけど、この自分のバカを晒せる勇気が一番強いからね。



教室とか世間の前で頭を下げたり恥をかけるやつはいいのよ。



講習中に居眠りしたり喋ったり、スマホいじったりとか自由に生きたいだけで、それが誰かの迷惑になるかどうかなんですよ。



結局はそこなのよ。



どこまでワルなのか?



ってあるじゃないですか。



少年院に行ったことで箔がつくとかね。



じゃあ、最終的には人を殺せることがカッコいいのかと。



思春期や反抗期の反動ならいいけど、それも結局は人間関係だからね。



自分が攻撃されない為に誰かを恐怖で牽制するというね。



親から愛されてないと、こんなことをしたら親が悲しむという感情も芽生えないわけですよ。



不良ってなんなんだって、人間として何かが欠落してるわけでね。



人間として不良品なんですよ。



で、講習の2日目なんですけど。



僕は講習のテキストを持ってくるのを忘れてしまったんですね…。



こういうことなんですよ。



本当のワルってやつはさ。



お前らは2日目も休憩の時間をオーバーしてんのに偉そうに戻ってくるよな?



居眠りを何度も注意されたり、スマホいじったりとか真面目に受講してないよな?



だけど、お前らちゃんと2日目もテキスト持ってきてんじゃん。



そういうとこは真面目じゃん。



ずるいじゃん。



俺なんか朝から慌てて頭下げて2千円払ってテキスト買ってるからな!!



家に同じテキストが2冊もあるんだからな!!



君達は所詮パフォーマンスとしての不良なのだよ。



自分が嫌になるよ。



完全にデフォルトしちゃってるよ。



学生時代は全教科の教科書を机に詰め込んでたから教科書を忘れることや持っていく発想がなかった。



自分が怖い。



ゆとり世代を笑ってる場合じゃない。



むしろ、ゆとり世代なら許されたかもしれない。



これだからゆとり世代は…っていう大きな言い訳が欲しかった。



独身だから何かあったら嫁や子供のせいにする既婚者の必殺技も使えない。



2度と忘れないように『テキスト』ってタトゥーをおでこに彫ろうと思う。