友達の価値観3 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

友達と旦那の関係を整理してみようと思う。



旦那と知り合ったのは元からそういう裏社会の連中とつるんでいたからだという。



友達はスパイみたいな仕事をしていたそうだ。



回転式のギャンブルには設定というのがある。



ある店の従業員の女がその情報を知ってるらしいので、友達もその店で働きながらその女のシッポを掴むことが仕事だったと。



それは裏と裏のシノギ合いになるので、バレたら危ない仕事でもある。



万が一、相手側に拉致られた時の為に友達はGPSを持たされていたという。



かなり危ない橋を渡っていたことになる。



そんな時に出会ったのが今の旦那なのだ。



男女が恋愛に発展するケースとして吊り橋効果というものがある。



吊り橋を渡る時のドキドキ感と異性に対するドキドキを脳が勘違いするという。



それだけ危ない吊り橋を渡っていたら勘違いも段違いだろう。



まぁそっちの世界は1度でも踏み込むと、そうそう足抜けは出来ないので、力のある男に守ってもらうのが女としては常套手段だと思う。



そもそも女のヤンキーなんてのは強い男の前で股を拡げて腰さえ振ってりゃいいのだから気楽なもんだ。



まぁ最終的には書類上の社長にされて、しこたま借金を背負わされて捨てられるパターンだけどね。



俺も友達に対して旦那との馴れ初めについて詳しいことを根掘り葉掘り聞くのは野暮だから、友達が喋った範囲でしかわからないのよ。



付き合って半年で両親の反対を押し切って結婚したと。



絶縁状を書いてまで結婚したのは、それだけ二人が愛し合っていたことになるのか独身の俺には理解できないでいた。



ただ、ある時、友達がボソッと言ったのは「もう、その時は、別れるのもヤバかったからね…」



つまり逃げることも出来ない状況に追い込まれていたのかもしれない。



ただ、自分がどれだけ貢がれたとか自慢話に聞こえるエピソードもあった。



カシミヤの30万のコートをプレゼントされたり、夜景の綺麗なホテル付きのゴルフに誘われたとか、極め付きは何が欲しいと聞かれて冗談半分で言ったベンツをプレゼントされたことだ。



後に友達が運転するそのベンツの助手席に俺が乗ることになるとは、この時は考えもしなかった。



結婚式もグアムで行ったそうだ。



旦那はバツ2で、最初はバツイチと聞いてたが途中からはバツ2になっていた。



普通に考えればあり得ない結婚だろう。



友達は初婚である。



前科者の極道で国籍も違うとなれば納得する親はいないだろう。



だけど、ちゃんと結婚式を挙げるところが俺は純愛なのではと単純に思ってしまうのだ。



たぶん海外での結婚式は友達のリクエストだろう。



人生の中でも女が主役のイベントなのだから存分に見栄を張るのは理解できる。



で、その後の関係が悪くなったにしろ初婚での結婚式で感じた幸福感を超えることはもうないと言ったのよ。



それだけでも、その日の誓いの瞬間だけでも人生で最もハッピーだったろうと。



他の男にはそれを超える幸せを感じさせることは無理だと。



すると友達は少し間をおいてから「幸せじゃない結婚式もあるんだよ…」とつぶやいたのだ。



旦那の大阪にいる母親に会ったのは結婚してからだと言うから、式に出席したのは兄弟や友達だけだったのかもしれない。



さすがに詳しいことは俺からは聞けるわけがない。



結婚してからはマンションの角部屋で1年くらいはずっと二人きりで働きもせず遊んでいたという。



それなりに高価な家具に囲まれてプチセレブ生活を送っていたと。



友達がこの辺りのことを本当は自慢したいのは話し方で伝わってくる。



ただ旦那との仲が良かったのは最初の3年だけだったと。



それからは家政婦にもなれないなどの罵声を浴びせられたり、ひどいことをされたとか。



1度だけ友達に対して、旦那から何をされたのか具体的に言ってごらんよ、と聞いたことがある。


すると友達は「言えない。言ったら泣いちゃうから…」と。



で、さすがに旦那とずっと同じ部屋の空気を吸ってることすら耐えられないので、友達は昼間の仕事をするようになったと。



この辺りから話がおかしくなるのだ。



友達が天然なのもあるし、話したくないこともあるのかもしれないけどね。



旦那のシノギが焦げ付いたのもあるだろう。



旦那はピンク系の店と焼肉屋を経営していたという。



普通の旦那ならばピンク系の店に行ったことが嫁にバレても喧嘩になるかヘタをすれば離婚になる。



そのピンク系の店を旦那が経営してると平気で言える友達もその感覚がメルヘン色だなと。



ただ、その2つの店は中国人のママと知り合いの男に業務は任せていたという。



つまり旦那は経営者なのだが、稼ぎの大半はピンハネだったのだ。



それでママが再婚した男から足を洗うよう言われて店を畳み、焼肉屋は任せてた男と揉めて店を畳むことになったと。



友達の旦那は媚びを売るようなことはしないらしい。



友達の父親に対しても頭を下げたことは1度もないと言う。



俺は自分の両親に対して30歳を過ぎてから土下座をして謝った話を友達にしたことがある。



イカれた彼女と別れることを勧めた親に逆らったものの、最終的にはストレスから風邪を拗らせて入院を繰り返して迷惑を掛けたからだ。



すると友達は、私も散々悪いことをしてきたけど親に土下座したことはないと言った。



友達の両親は友達が結婚してから6年後くらいに熟年離婚をしているので、どんな親かはよくわからない。



ただ、その熟年離婚のせいで友達の人生は土下座よりも過酷な懺悔の日々が始まることになったのだ。



父親は兄弟の借金の保証人になったせいで役員だった株式や財産を手放すことになり、年金で自宅のローンを払うことになったと。



そのことに長男である本家は助けてはくれなかったと。



確かに弟二人が勝手に作った借金で企業のトップが私情に流されていてはダメだろう。



その会社の工場も結構な規模があるので、友達にはそれなりの血が眠っていると思う。



確かに真逆の方向に振り切った人生になったけどね。



で、母親は母親で怪しい宗教にハマって誘ったおばさんと一緒に住んでるとか。



それも友達が子供の時に習い事をしてた先で母親同士で知り合ったから、友達は習い事を選ぶ時に自分が違う選択をしてたら宗教にはハマらなかったと悔やんでいる。



その後も友達は選択を間違い続けるけどね。



で、思春期の時に家族会議になって母親に家族と宗教どっちを選ぶのかと聞いたら即答で宗教だと。



そんで遊び歩いてた友達は母親から「あんたなんか産まなきゃよかった!」と言われたと。



この母親からの台詞は友達から4回くらい聞いてるので相当ショックだったのだろう。



だけど娘と母親の関係性については男の俺にはさっぱりわからんのよ。



ただ、その母親も税金や保険を滞納してて、国から差し押さえがきたと。



300万くらいの借金があって、払わないと実家がなくなると。



そこで友達が頼ってしまったのが旦那だったのよ。



旦那がその借金を肩代わりする代わりに、土地と建物の権利は旦那の物になったと。



その契約書には離婚する場合は1千万を支払うだとか全て旦那の都合のいいように書かれていると。



で、実家に住んでた兄貴を追い出して友達夫婦が熟年離婚した父親と3人で暮らすようになったと。



だけど、家のローンに関して旦那は一切払わないと。



父親は年金だけで、家のローンや旦那との生活費は友達が稼ぐことになったと。



旦那からは、わかっとると思うけどやってくには昼間の仕事じゃ無理やろなと。



それで友達は父親と実家を守る為に夜の世界で働くことを決意することになったのだ。



ちなみに友達の兄貴については当然ながら俺も何をやってんだと。



そしたら友達の兄貴はバツ2で、しかも妹である友達を嫁と偽って借金をするようなダメ兄だった訳でね。



だけど、そんなダメ兄貴だけど、子供の時に友達がいじめられてた時に守ってくれた話も聞いてるからね。



兄貴は地元で有名な不良で、いじめっこの前で妹に「ここで変わらなきゃ、一生このままだぞ」と、行ってこいと送り出したそうだ。



それで妹は立派な不良になったとさ…。



ただね、友達は女なのにバラバラになった家族を自分がなんとかしようと頑張ってると俺は思うのよ。



その家という帰るべき場所だけは何としても守りたいと願っているんだろうね。



で、友達が夜の世界で働き始めて半年くらいの時に、無駄によく喋る客、つまり俺と出会うことになるのよ。



で、俺が友達に対して何をしたかと言うと……ほぼ説教ですよね。



いや~ほんと男って最低ですよね。



でもさ、自分がそんな状況なのに友達は困ってる俺に対して手を差し伸べてくれたのよ。



部屋を掃除してくれたり料理を作ってくれたりね。



彼女との悩みの相談にも乗ってくれたりもするのよ。



そこまで親身になってくれる友達に対して俺が何をしてあげたかと言うと……



えぇ、説教ですよ。



面白くないとか笑えないだとかね。



いや、だって天然だとは思ってなかったからね。



だけど、友達が天然だとすると全ての矛盾が旦那の視点で考えることで、ある答えが見えてくる。



それはつまり、旦那が友達のことを愛しているということになるのだ。



続く