友達の逆襲3 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

中断していた話の続きを書くとしよう。



友達は地元から離れた中学に通っていたそうだ。



イジメが原因かもしれないから詳しい理由は聞いてない。



だが、そこである事件が起きた。



友達が中学で喧嘩をして、その相手の女の子の顔に傷を負わせてしまったそうだ。



イジメられない為には戦うしかないのだが、それがその後の人生すら左右することになる。



友達はその事実を両親には伝えなかったのだ。



親にバレたら怒られるとか、親に心配や迷惑を掛けたくないという考え方だろう。



悪く言えば自分の罪を隠したことになる。



中学生とはいえ、女の行動力には驚かされた。



友達はその慰謝料を払う為に、中学生ながら繁華街のスナックだかクラブでアルバイトをしていたと言うのだ。



もちろん接客ではなく厨房での皿洗いや雑用だったそうだ。



その慰謝料を稼ぐ為に、夜の繁華街で中学生が一軒ずつ店の扉を開けて店内を覗いて働かせてくれそうな店を探して回ったと。



そして感じのよさそうなママに出会い、事情を説明すると働かせてくれることになったという。



友達は実に危ない橋を渡っていたことになる。



たまたまの偶然と、人を見る目があったからいいが、下手すれば危険な目に晒されたことになる。



親に迷惑を掛けたくないという心理は女には一切必要ないのだ。



娘の為なら喜んで死にたいのが父親なのである。



友達は夜の飲み屋でアルバイトをすることになった。



そのママから信頼を得たのか、働いてまもないのに友達が喧嘩をして顔を傷付けてしまった相手の親に対して、ママが偽装の両親役を演じて慰謝料を支払う場に付き添ってくれたそうだ。



そして、その偽装の父親役というのが、ママの知り合いの男か、店のケツ持ちのヤクザだったと思うと。



ここでもまた、友達にはヤクザは頼れる存在として刻まれることになったのだろう。



偽装の両親役としてママは50万を肩代わりして支払ってくれたと。



友達は中学時代はずっと寝不足だったという。



その頃からグレ始めたのだろう。



学校を早退しての習い事と、夜は飲み屋でアルバイトをしていたと。



学校もほとんど行かなくなったと。



写真で見ると普通の少女なのだが、裏では何を抱えて生きているかはわからないものだ。



その店での給料はなかったが、たまにママからお小遣いとして1万円を貰えたという。



そして店で働くお姉さん達から化粧の仕方を教わったりしていたそうだ。



友達は学校では教えてくれない裏社会勉強を中学生の頃からしていたのだ。



自分を犠牲にすれば解決できる術を学んだのかもしれない。



高校は私立の女子高だったそうだが、ヤンチャばかりして遊んでいたそうだ。



友達の友達は援助交際をしていたと。



確かに当時はそんな時代だった。



それと同時に親父狩りなんてのもあった。



大人が大人として破綻していた時代でもあった。



友達は車の免許を取ってからは知り合いのママの運転手として銀座でベンツを転がしていたそうだ。



裏社会のエリートなのか同世代の普通の感覚からはかけ離れた裏の道を歩んできたのだろう。



とはいえ、女の不良なんてのは気楽なもんだ。



喧嘩の強い男に対して股を開いて腰を振ってりゃいいのだ。



金を持ってる男に対しても同じことだ。



男の不良の世界はどれだけ悪いことができるか?という大喜利みたいなもんで、そのバカげたお題に気が付くのが遅いと人生そのものが滑るというオチが待っているのだ。



実際に俺の高校時代の友人はヤクザに監禁されたり地元を追われたり、危険を察知したやつは中退してしまった。



俺が高校時代で学んだことは不良の巣窟を無傷で生き延びる術ということだけだ。



単純に親が辞めさせてくれなかったのもある。



小学生の時にイジメられて耐えきれなくて玄関先で泣き崩れたこともあった。



その時の母親は学校に文句を言う訳でもなく、兄貴にもそんなことがあったと俺に言って、その現実に耐えることを諭したのだった。



まさかの放置だったのだ。



中学の時に喧嘩をして殴られてアザを作って帰った時は喧嘩じゃないと言ったのに学校に連絡していた。



担任を通じて喧嘩した友人とは手打ちになったが、思春期の喧嘩はなかなか難しい。



そもそもの原因は俺がその友人をからかったのが悪いのだ。



名前さえ書けば合格する私立の高校にバカな仲間はみんな合格したのに、そいつだけ落ちたのだ。


たぶん、その理由は金銭的なことだったのだろうと今ならわかる。



友人は俺を殴るときに叫んだ。



「俺だって落ちたくて落ちたんじゃねーよ!」と。



その瞬間に友人の気持ちを理解したのでそのまま殴られた訳だが、それでも友人から謝るのはおかしい。



担任から怒られたから仕方なくという理由があってこそ、「悪かったな」と言えるのであって、だからこそ、「俺もバカにして悪かった」と仲直りできるのだ。



そんで俺が高校時代を無傷で生き延びたことにも、俺を殴ったそいつの悪名のお陰でそいつと同じ小学校だった他の中学から来た連中に手を出されずに済んだのは間違いない。



結局は母親と中卒の友人の上に俺の高卒はあるのだ。



そう、バカは些細なことで人生が変わるのである。



俺にしろ友達にしろ学生時代に勉強をちゃんとしなかった側の世界での話なのだ。



その世界で生きていくと男は人生を棒に振る可能性もあるが、女は男に抱かれてりゃいいのだから実に気楽なもんだ。



まぁ、そんなこんなで、友達が俺の部屋の鍵を返しに来ると。



これはちょっと危ないなと。



身に降る火の粉は払わないといけないなと。



友達だったとはいえ、怒った女ってのは、どんな仕返しをしてくるかわかったもんじゃない。



俺に女運がないのは前からわかっている。



友達は旦那の経歴からして極道の世界に精通しているのだが、そのネットワークは大阪まで及ぶ。



ママ友ならぬ、極妻友みたいなのがあるのかは知らないが。



駅名に対して、そこのシマである組の名前を答える問題なら友達は東大卒にも負けないだろう。



万が一の事態に備えなければならなくなった。



つまり、腹を括るということだ。



蛇の道は蛇。



その時は再び、百万円の貸しがある男達に会いに行くまでだ。



俺は過去に間違ってヤクザな会社に就職したことがある。



その話を友達にしたこともあったが、「満月満月さんのとこにいたの?」とフランチャイズのファミレスの話でもしているようで怖かった。



その会社は給料の未払いで喧嘩して辞めたのだけど。



その会社というか組織を辞める時に、そこを牛耳っていたおっさんに電話をかけた。



俺が堅気なのもあるが最後は穏やかな口調になり、だけど、奇妙なことをおっさんは最後に口にしたのを覚えている。



「…それからな、若い時は金に苦労したほうがいいぞ。金の有り難みがわかるからな…」



当時の俺からすれば給料も払わないくせに『お前が言うなよ!!』と怒り狂っていた。



今ならわかる。



俺には百万円の貸しがあるのだ。



証拠ではなく、それはつまり、その世界では義理を欠いたことになるのだ。



若い時の百万円の貸し、利息付きで返して貰えませんか?と。



なんせ若い時には金で苦労しましたからねと。



おっさんが、この論法を嫌いでないことも知っている。



まともな仕事は何も教わらなかったが、おっさんから学んだことは言葉や道理の裏を突けということだ。



そんなところで2年近くもよく働いてたなと思うが、過ぎたことは仕方ない。



金は引っ張れなくとも、それに見合った働きをしてくれればよしとしよう。



むしろ「賢くなったな」と誉めてもらいたいくらいだ。



友達に鍵は時間がある時にポストに入れといてくれればいいとメールをした。



すると、すでにこっちへ向かっていると返信がきたのだった。



もうすぐ着くと。



足音が聞こえた。



慌てて考えても友達は部屋の鍵を持ってるので、部屋の鍵を2つ施錠したところでなんの意味もない。



俺はちっとも賢くなんかなっていなかった。




そして、いい年した男と女が口喧嘩をすることになった。



その結果、口喧嘩に負けた男は、泣くのだった。



続く