友達の作り方2 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

ご飯をご馳走してくれるというので、友達とショートメールでのやり取りをしていたのだが、予定が合わないのだ。



詳しく話を聞くと、週の大半は別の夜の仕事をしているという。



過去のことはどうでもいいとしても、現在進行形のことについては友達ならばちゃんと返答することになる。



ただ、それも生活の為なら仕方ないとは思う。



具体的な仕事の内容については野暮なので聞かないが、ご馳走してくれる話はどうなったのか?



どういうことなのか訳がわからなかった。



そしたら生理の時は多目に休みを貰えるからと言ってきたのだ。



夜の仕事で生理の時に休む仕事ってなんだ?



俺は、こんな悲しいなぞなぞを解いたことはない。



いや、仮にクイズだとしたらどうだろうか?



俺にとっては得意分野のチャンス問題じゃないか。



ジャンルで言うなら、風俗の50の問題だと思う。



スーパーひとし君人形なら使うタイミングはここしかない。



同い年というのは学年も一緒だった訳だ。



もし同じ学校なら同じクラスだったかもしれない。



同い年なら子供の頃は同じような物を見て、大体同じような経験をしてきたと思う。



過去に何があったのかは知らないが、友達だと思うとモヤモヤする部分はどうしてもあった。



俺の中での友達の定義だと、正直なところ少し戸惑ってしまうのだ。



それに女友達というのもよくわからなかった。



ただ、俺の話を笑い飛ばせる分だけの人生経験をしてきたのだろうとは思っていた。



幸せの定義もよくわからないけれど、こんだけ笑える感受性があるのに今の生活が幸せなのかどうかは疑問だった。



このラインが全盛の時代にガラケーの俺なんかとショートメールでのやり取りをすることにも友達としては好感が持てた。



ただ、友達だと思うと夜が来るのがなんか怖かった。



というか、この感覚が友達なんだと思った。



10年ぶりくらいに友達とゲラゲラ笑う感覚を感じていたのだ。



友達から夜の仕事が終わって駅前のファミレスにいるというメールが来たので行ってみた。



翌日が仕事だというのに、深夜のファミレスに向かって歩いている自分にも驚いた。



ただ、友達というのは何時だろうと駆け付けるもんだと思っていた。



友達の為に1歩踏み出せるかどうかで、その友達の人生そのものが大きく変化することは知っている。



その1歩を踏み出せなかったことで、その後ずっと後悔し続けることも。



そこには下心とは違う何かを感じていたのだ。



単純に喋りたいだけなのかもしれないけど。



ファミレスについたのは閉店間際で1:30を過ぎた頃だった。



店に入るなり店員の女性からまもなく閉店ですと言われたが、待ち合わせだと伝えて店内を見渡した。



友達は俺を見付けて笑っていたので、深刻な感じではないのだと安心した。



席に着くと女性の店員が、ドリンクバーだけなら今からでも注文できると言ったが、閉店間際にそれは迷惑だと思ったので笑顔で断った。



俺の上品な断り方が女性店員のバイト心を鷲掴みにしたのだろうか、女性店員が水を持ってきてくれたのだ。



そして、店には内緒でコーヒーを無料でサービスしますよと言ってくれたのである。



ホットかアイスか聞かれたので、アイスコーヒーを注文した。



友達が言うには、この店のコーヒーは400円もするらしい。



どうやら俺にはご馳走したくなるような貧乏神でも取り憑いているのだろうか?



そしてアイスコーヒーを運んできた女性店員は俺の好みがわからなかったのでと、ガムシロとミルクを2つずつ持ってきてくれていた。



か、完璧じゃないか!?



なぜ、君みたいな素敵な女性がこんな深夜のファミレスでアルバイトをしているのだろうか?



そんなことをいきなり聞ける訳もないので「ここのファミレスには美人しか居ないんですか?」と言うと、友達も店員も笑っていた。



閉店になり店を出ると友達が急に俺のアパートに行くと言い出したので断った。



俺の部屋は恐ろしく汚い 。



それに友達とはいえ異性というのも当然ある。



アパートの近くにある公園のベンチに腰掛けて喋ることにした。



なんだかんだと喋っていると、友達が実は俺に言ってなかったことがあると言い出した。



いや、ちょっと待てと。



なんか怖いなと。



どんな感じのことなの?と。



すると友達は、「多少は驚くかもしれないけど、そうだよね!と言えるくらいのこと」だと。



世の中には知らない方がいいことがたくさんあるし、色んなことを想定してはみたが、仕方がないので話を聞くことにした。



実は結婚していると。



いや、お前なにやってんの?と。



せっかくの友達1号が人妻ってことにも驚いたが、それよりも結婚をしている、つまり旦那がいるのだ。



それなのに夜の仕事をしている、その考えが俺には理解できなかった。



旦那の年齢を聞くと20才近く年上の50代だという。



俺の知ってる50代のおっさん達にそんなクソ野郎はいない。



100円玉を拾ってガッツポーズをするような貧乏で汚いおっさん達だけれど、惚れた女房にそんな仕事をさせたりはしない。



旦那は堅気じゃないだろ?と友達に聞くも堅気だと言う。



旦那はバツイチで大阪に子供がいると。



旦那と友達の間に子供はいるのか聞いてみた。



すると旦那はパイプカットをしてるから子供はできないという。



それ以上は何も友達に言えなかった。



俺は知っていた。



パイプカットとは竿を切るのではなく、精子の通る管を遮断することだ。



ようするに、子供はできないけど生でやる気持ちよさだけ残した…つまり変態野郎ってやつだ。



友達は自分たちは仮面夫婦みたいなもんだと言った。



なら、なぜ旦那と別れて他の仕事をしないのかとは言えなかった。



そんなことは承知の上での何かがあるのだろう。



そして仕事が終わると旦那が駅まで車で迎えに来ると言うのだ。



それが優しさなのか何なのかは俺にはわからない、とにかく経験したことのない夜風に全身がガタガタ震えていた。



そろそろ旦那が迎えに来る時間だと言うので駅前まで友達を送ることにした。



俺と喋ってゲラゲラ笑うのだから感受性は豊かなはずだ。



当然ながら表現力もある。



笑うということは、個人の性格や好みは別としても世間一般の常識やモラルを理解していることになる。



どんな人生を歩んできたのかは知らないが、友達があんまり幸せでないことは確かなことで、その現実はまだ俺には笑い飛ばせない大きな問題として首に巻き付くような息苦しさを味わった。



俺は友達に何を言えばいいのだろうか?



俺がやっと言えた言葉は「お前、強いな…」それしか言えなかった。



友達は「女は強いのよ」と笑っていた。



嘘つけバカ野郎!



駅前のロータリーまで友達を送ると旦那から連絡が入り、そろそろ来るというので先に帰ることになった。



深夜のロータリーを背にして歩きながら幸せについて考えたりした。



その向こうからライトを光らせて走ってくる悪そうな車とすれ違った。



そして、歩き続ける俺を悪そうな車が追い越して行った。



深夜の歩道を歩く俺は寒さに震えていた。



目の前の幸せなら、助手席に座る友達は迎えにきた車の中で温もりに包まれている。



どっちが幸せなのかはわからない。



ただ間違いなく言えることは、俺の中の少年は発狂していた。



続く。