怒りを我慢する方法 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

今日は仕事中に怒りが込み上げてきてキレそうなったのである。



僕の仕事は建設業なので、クレイジーな輩がいる職場であることは当然わかっている。



仕事に対する情熱がぶつかった結果として喧嘩をすることは健全だと思う。



ただね、たまに性格が歪んでる輩がいるんですよ。



こちら側が手を出せないとわかったとたんに強気になる輩がね。



社会人ですから先に手を出した方が悪いのは頭では理解していますよ。



そこに漬け込んで、こちらがキレるようにとことん侮辱してくる輩がいるんですよ。



僕が作業をしていると背後からぶつかってきたんですよ。



こっちも相手に聞こえる声で「痛っ!!」とリアクションする訳です。



普通ならそこで、ぶつかった側が「すいません」と謝れば済む話なんですが、シカトされましてね。



まぁ、シカトしてるくらいだから悪気はなく本人もぶつかったことに気が付かなかったのかな?と許してやろうと思ったんです。



そしたら、ぶつかってきた相手がこうつぶやいたんです。




「邪魔だなぁ」



は?



これには誰だってカチンときますよね。



ようするに、先に作業をしている所へ挨拶もなく後から入ってきてぶつかったことに対する答えが「邪魔」だと言うことですからね。



しかも、そいつは入ってくる前に下見に来てたんですよ。



キョロキョロして作業内容を確認して戻っていったんですよ。



その時点でもこっちからすればそいつに対して『いきなり入ってきてキョロキョロしやがって邪魔なんだよ』という気持ちだった訳です。



そしたらそいつが工具を持って入ってくるなり、ぶつかってきてその挙げ句に「邪魔だなぁ」ですからね。



これは許せませんからね。



『おい、邪魔って俺に言ってんの?』



と、こうなりますよね。


すると向こうは僕らの資材を指差して「いや、これが邪魔なんだよ」と。



なるほど。



それらは台車に乗ってるので動かしながら空いたスペースで作業をする感じだったんですよ。



資材置き場としてちゃんと打ち合わせで許可を貰っているとしても、そいつの言う物理的な意味での「邪魔」というのは理屈としては通ると。



なので、『ああ、それのことか…』と軽く流したのが甘かったんでしょうね。



その僕の許しの速さで相手から完全にナメられた訳ですよ。



「…でさ、これじゃなくて○○屋さんに言ってるんだとしたら何?」



『は?』




「なに、うちらと揉めたいの?」



『いや、先に作業してるところに入ってきて邪魔とかおかしいでしょ?』



「うちらに言ってんの?」



「そんなに揉めたいの?」




「ねえ?ねえ?ねえ?」




もうこの辺りから怒りが鎮まらないのよ。




ただ、ここで揉めると他の同業者にも迷惑が掛かるので我慢する訳です。



大人の対応をしようとね。



だって大人の喧嘩は体重差でほとんど決まりますから身長からしても僕が勝つのは確定なんですよ。



ただ、大人の事情やシガラミのせいでこっちからは手は出せない訳です。



向こうは更に煽ってきます。




「いいよ?そんなに揉めたいなら揉めるで
(ほら、殴ってこいよってこと)
この階の○○屋さんは揉めるの好きみたいだから
(喧嘩腰で悪いのはいつもそっちだからな、と)」



どうやら僕以外の職人と前に揉めたような言いぐさで、それを根に持っていたような感じだった。



どっちにしろまともに相手にしても仕方ないので、怒りをこらえながら打開策の提案をしてみることに。




『狭い中で物を動かしながらやってるから、そっち側からやるなら俺は邪魔にならないようにこっちからやるから』



これでいいだろうと。



かなり譲ったからね。



で、そいつはドリルで天井に穴を開け始めまして、そして僕は逆サイドの床にしゃがんで床に寸法を出していた訳ですよ。


すると、どうでしょう。



次の瞬間に床にマジックで印を書いていた僕の頭上でドリルの音がこだまするではありませんか…


そして後頭部から床に大量のコンクリートの粉がパラパラと降ってくるではありませんか…




こんなのさ、キレるでしょ?



こんなの野島伸司の脚本以来じゃね?



家なき子とか人間失格みたいなイジメのシーン思い出したよ。



言葉はいらないのよ。



でも、ハッキリと聴こえてくるんだ




【ほら、キレてごらんよ】



って囁きがさ。



これね、社会人ならば我慢しなきゃいけない時ってあると思うのよ。



どうやって怒りを飲み込むかって言ったら、たぶん子供の顔だとか奥さんの顔を思い浮かべて、家族を養う為に怒りを押し殺すんだと思うんですよ。



手を出したら警察沙汰とか仕事を失う可能性もありますからね。



でも、僕は独身ですから、女房子供もいませんから怒りが震えが止まらないんですよ。



だからと言って飼い猫の顔を思い出しても仕方ないだろうし、彼女のことも考えたんですけどダメでしたね。



逆にボロクソ言われるイメージしか湧かなくて、嗚呼なんか、そこまで彼女のこと好きじゃないんだってのがわかっちゃたんですけど(笑)



とりあえず急いで部屋を出て、しばらくゆっくり深呼吸をしてから戻りました。



まぁ、仕事を辞める腹を括った訳です。



戻ってからはそいつと絡むことなく作業は終わったんで良かったですけどね。



こんなことを我慢するくらいなら子供なんかいらないと思ったね。



これで帰って嫁に稼ぎが悪いとか文句言われたら離婚するわな。



かなり穏やかな性格で、ユーモアがある僕でさえ怒りがこみ上げた場面だったので他の人だったら傷害事件になっていたかもしれない。



法的には罰せられたとしても、その当人の立場にならないとわからないこともあると強く感じた。