天狗と河童~劇場版・妖怪でごめんね~ | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

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天狗「好きな恋愛映画だと?
そんなもん決まってんだろ!」



河童「なんか嫌な予感がするんだけど…
その好きな恋愛映画のタイトルってなに?」



天狗「そりゃ、お前
【劇場版・妖怪でごめんね】
に決まってんだろ!」



河童「それ、お前が世界で一番好きな曲のやつじゃん!
失恋ソングじゃなくて復讐ソングだとかほざいてた最悪の曲だろ?」



天狗「バカ野郎!
この映画の主題歌だぞ。
曲の世界観が映画化されるパターンだよ」



河童「駄作の王道パターンじゃねーかよ!
大体さ、アニメでも小説でも実写化して成功したためしがないだろ?」



天狗「魔女の宅急便とかあるだろ?」



河童「旬の駄作だよ!!」



天狗「お前はさ【劇場版・妖怪でごめんね】の世界観を知らないからそう思うんだよ」



河童「はあ?じゃあ、どんな世界観だって言うの?」



天狗「【劇場版・妖怪でごめんね】は人間に恋をした妖怪の淡く切ない恋物語なのだよ。
結ばれぬ定めの1人と1匹の禁断の愛を描いた映画史に残る名作なのだよ」



河童「つーか、1匹とか言うなよ。
それでストーリーはどんな感じなの?」



天狗「ヒロインである女妖怪が一人前の妖怪になる為に、人間界へ修行にやってくるところから物語は始まる」


河童「それ魔女の宅急便じゃねえのか?」



天狗「いやいや、妖怪ってのは人間を怖がらせるのが仕事だから、その為には人間というものをよく知らないといけない訳だよ」



河童「それでいつ人間の男と恋に落ちるの?」



天狗「つーか、これネタバレしちゃわない?
大丈夫?」



河童「うるせーよ(笑)」


天狗「ある日、偶然立ち寄ったレンタルビデオショップで運命の出会いが訪れる。
店内を見て回り気になった作品に何気なく手を伸ばした妖怪女。
その指先に別の指先が触れ合ったのだった」



河童「そんなベタな展開なのかよ!」



天狗「『あっ、すいません…』
『こちらこそ、すいません』
『どうぞ…』
『いえ、どうぞ』
『どうぞどうぞ』
『どうぞどうぞ』
『いえいえいえ…』
『いえいえいえ』
『いえいえいえいえ』
『どうぞどうぞどうぞ…』
このやり取りが冒頭の30分延々続く」



河童「映画の尺おかしいだろ!!」



天狗「妖怪女は自分のことを全く怖がらない人間の男の態度に、
『私は妖怪としては失格だわ…』と落胆する。
『だけど1匹の女としては…』」



河童「なんじゃそら!!
でも、それだけじゃ恋愛には発展しないだろ?」



天狗「そうなんだよ。
偶然から運命と感じるまでに妖怪女は凄い時間が掛かるのよね。
その後も幾度となく、その人間の男と出会うんだけど、なかなか恋愛に発展しないんだよ」



河童「そうなの?」



天狗「焦れったいぜぇ。
しかも2回目の偶然の出会いっていうのが、また同じレンタルビデオショップなんだけど、そこで同じように指先が触れ合うのよ」



河童「それ脚本に問題あんだろ!!」



天狗「全部で70回くらいレンタルビデオショップで指先が触れ合ってるのよ。
どうもスポンサーがTSUTAYAらしいんだけどさ」



河童「スポンサーに媚び過ぎだろ!」



天狗「あとは妖怪女が買い物をした帰りにつまずいて、買い物袋からフルーツとかコロコロと転がり落ちて、それを慌てて拾い集めてるとそれを拾ってくれた人がいて、顔をあげると指先に包帯を巻いた人間の男だったりね」



河童「これまたベタな出会いのパターンだな。
人間の男も指先に包帯を巻くって、どんだけ指先が触れ合ってんだよ。
怪我してんじゃん」



天狗「他にもいくつも偶然が重なってるのよ。
アパートの隣の部屋に住んでたり、バイト先が一緒だったり、同じ種類の飲み物を飲んでたり、好きな食べ物とか好きな音楽とか年齢とか誕生日とか全部一緒なんだよ」



河童「やりすぎだろ!」


天狗「それでも妖怪女は好きという気持ちを認めたくないんだよ。
傷付くのが怖いんだよ。
妖怪として人間の男に恐怖を抱いてる自分も許せないんだよ」



河童「てゆうか、物語の展開が遅くない?
これさ、もう上映時間が残り少ないよね?」



天狗「残りあと10分くらいだよね」



河童「ありえねえだろ!」



天狗「残り10分で妖怪女はダンスパートナーを探さなきゃいけない訳だよ」



河童「急展開すぎるわ!
ダンスパートナーって、アメリカの学園ドラマみたいになってんじゃん」


天狗「そんでラスト5分なのに伏線が投網の如く張り巡らせるのよ。
妖怪女のフィアンセを名乗る妖怪男が現れて、人間の男を襲ったりさ。
妖怪女が白血病になったり、人間の男も記憶喪失になったりするのよ。
実は妖怪女は人間なんじゃないかという疑惑だったり、それを知らずに妖怪から人間になる為の命懸けの試練に挑むんだけど、それは人間だと助かる可能性はない訳でさ。
仮に妖怪女が人間だったとしても、人間の男とは血の繋がった兄弟なんじゃないかという…
そして妖怪女は身籠もったのだった!」



河童「ラスト5分に詰め込みすぎだろ!!」



天狗「エンドロールでは人間の男側から見た世界観を楽しめる」



河童「それ余韻に浸れるの?」



天狗「人間の男はレンタルビデオショップに立ち寄った。
男はホラー映画が大好きだった。
お目当ての作品に手を伸ばしたその刹那、指先に激痛が走る。
指先から視線を辿ると、そこにはホラー映画から飛び出してきたような化け物が立っていた。
この作品を借りたら殺されるかもしれない…
そして『どうぞどうぞ』の攻防が果てしなく続いた。
友人に化け物の話をしても信じてはもらえなかった。
ホラー映画ばかり見ているからだと笑われた。
その日から人間の男は化け物に取り憑かれ始めた。
どこにいてもその化け物の姿が見えるようになった。
医師からはノイローゼの一種だと診断された。
ホラー映画を借りようとする度に指先には激痛が走った。
そこにはいつも化け物が立っていた。
常に視線を感じるようになった。
買い物帰りの女性が躓いて買い物袋から転がり落ちたグレープフルーツを拾ってあげた。
女性から拾ってくれた、お礼にと喫茶店でご馳走になった。
その翌日、昨日と全く同じ場所で買い物袋を抱えた化け物が立っていた。
こちらに気が付くとわざとらしく派手に転んだ。
買い物袋から落ちたスイカが派手に割れた。
化け物と目が合ったので走って逃げた。
その夜、喫茶店が不審火で全焼した。
化け物はバイト先を嗅ぎ付けてやってきた。
身の危険を感じて即日バイトを辞めた。
バイト先の店長が行方不明になった。
化け物が隣の部屋に引っ越してきた。
いよいよ、いつ襲われてもおかしくない。
霊能力者に相談して結界を張り巡らせた。
清めの塩を大量に買い込んだ。
それ以来、その人間の男の姿を見た者はいない…
レンタルビデオショップのホラー映画の棚は縮小された。
そこには新作の恋愛映画が大量に入荷された。
誰からも借りられぬまま【妖怪でごめんね】のタイトルだけがいつまでも並んでいた…」



河童「どこに感情移入すればいいんだよ!!」



天狗「やっぱさ、スイカに塩をかける場面は泣けるよね」



河童「どうでもいいわ!!
いい加減にしろ!!」