夜10時、塾の自動ドアが開き人影。
そこには外国人だと思われる女性が立っていた。
「こんばんは」
彼女は流暢な日本語で声をかけてきた。
「こんばんは、なんでしょうか?」
「私は中東からきました。この塾に興味があり、アルバイトはありませんか?」
話を聞くとなんとパレスチナ人。
しかもあのガザ地区出身。
貧しい家庭に生まれて、同級生は今もみんなガザにいる。
そこからレバノンのベイルート、UAEのドバイで学び、いまは名古屋大学で生物学を勉強している。
どこに行っても一生懸命勉強して、奨学金を得て努力を続けているそうだ。
約1時間ほど、色々な話をした。
ベイルートやドバイに住んでいた時、街は綺麗だけど窃盗にあった話、ガザは戦争をしているけど泥棒はいない、なんて話してくれた。
アラビア語、ヘブライ語、英語、日本語を話す明るいパレスチナ人だ。
そして私のクリティカルシンキング教育にも、日本らしくないと強い関心を示してくれた。
最後に勇気を出してイスラエルのことを聞いた。
しばらく彼女は黙っていた。
「イスラエル人はみんな友達です」
彼女は寂しそうにそれだけ答えてくれた。