この何とも個性的な20歳の女性が私を訪れてくれたのは、石川県立九谷焼技術研修所を受験するために、小論文が必要だったからだ。
高校を卒業して、工芸デザイン科がある学校に進学。
もちろん目的は陶芸である。
それは趣味の域をはるかに越え、自分の生きる道を定めての進学だった。
そしてさらに九谷焼への道を歩もうとしていた。
受験は石川県で1月初旬にに行われる。
その日に向けて、年内から小論文に取り組み、その間に、大好きな陶芸の話をたくさんしてくれた。
そして1月。
能登半島地震が起きる。
交通網は遮断され、受験への不安も大きかったであろう。
しかし、彼女の九谷焼への決意が全く揺らぐことがなかった。
彼女は、まだ余震が続く石川県に赴き、見事に合格し、春から九谷焼の地に旅立つ。
そんな彼女からLINEが来た。
「修了展を愛知県美術館でやっているので見に来てください」
寒い冬が続く能登半島では、いまだ避難所生活をされている方がたくさんいらっしゃる。
九谷焼を生涯の道と決めた彼女の修了作品は、そんな能登半島に、一足早い春をたくさんたくさん届けていた。