長坂塾の生徒たち「九谷焼」 | これでも元私立高校教員

これでも元私立高校教員

30年以上の教員指導を通じて、未来を担う子供たち、また大人の思考などをテーマに書き綴っています。
日本史と小論文の塾を主宰し、小学生から大学生、院生、保護者の指導をしています。

この何とも個性的な20歳の女性が私を訪れてくれたのは、石川県立九谷焼技術研修所を受験するために、小論文が必要だったからだ。


高校を卒業して、工芸デザイン科がある学校に進学。


もちろん目的は陶芸である。

それは趣味の域をはるかに越え、自分の生きる道を定めての進学だった。


そしてさらに九谷焼への道を歩もうとしていた。


受験は石川県で1月初旬にに行われる。

その日に向けて、年内から小論文に取り組み、その間に、大好きな陶芸の話をたくさんしてくれた。


そして1月。

能登半島地震が起きる。

交通網は遮断され、受験への不安も大きかったであろう。


しかし、彼女の九谷焼への決意が全く揺らぐことがなかった。


彼女は、まだ余震が続く石川県に赴き、見事に合格し、春から九谷焼の地に旅立つ。


そんな彼女からLINEが来た。


「修了展を愛知県美術館でやっているので見に来てください」


寒い冬が続く能登半島では、いまだ避難所生活をされている方がたくさんいらっしゃる。


九谷焼を生涯の道と決めた彼女の修了作品は、そんな能登半島に、一足早い春をたくさんたくさん届けていた。