35年前の学校の労働環境 | これでも元私立高校教員

これでも元私立高校教員

30年以上の教員指導を通じて、未来を担う子供たち、また大人の思考などをテーマに書き綴っています。
日本史と小論文の塾を主宰し、小学生から大学生、院生、保護者の指導をしています。

今の時代の教員の方は、働き方がブラックだとか、待遇が悪いとかよく言われるようです。

今の時代に則して考えれば、確かにそうかも知れません。

 

しかし、大昔に比べてとても良くなったことがたくさんあります。

 

 

例えば、私が最初に教員になった時、定期テストの問題は全て「手書き」でした。

かろうじてワープロの存在は世の中ではありましたが、学校の現場にそんなものは存在しなくて、字が上手に描けない私としては、テスト中に生徒からの質問として、

 

「この字が読めません」

 

などと、字の汚さを指摘されるのが結構申し訳ないことでした。

 

成績をつけるのはもっと大変でした。

パソコンなんて存在しない時代でしたので、一人ひとりの個別カードを作って、そこに点数を記入、大きな机にカードを並べて順位をつけるのです。

これが、学年になると、250人の順位になり、それはそれは恐ろしい作業でした。

 

通知表も、もちろん評定をつけるのですが、その評定が5とか3とか全部一つ一つハンコで押していきます。

1人10個の評定があると、それが200人、合計2000回ハンコを押さなければなりません。

 

出席簿は大変です。

欠席遅刻早退は毎日のように手書きで記入し、さらに、それを縦横揃えて集計しなければなりません。一つ一つ指先で数えていくんです。

当然間違えるので、間違えたところには訂正印を押していきます。

すると、私のようながさつな人間は、出席簿に「訂正印の花」が咲きまくります。

 

さらに、指導要録というものがあります。

生徒の1年間の記録のようなものですが、これがまた恐ろしいことに全て手書きになります。

これは年度末に何日もかかって作成します。

生徒の性格や性質を表すコメント欄なんて、文例なんかないため、1人分を考えているだけで、1時間と言う時間が費されたこともあります。

 

そんなわけで、こうした仕事がすべてデジタル化されて自動集計などされると言う事だけで、仕事は恐ろしいほど減ります。

英単語や漢字の小テストが自動で作られるなんて嘘みたいな話です。

本当にうらやましいなと思います。

 

今、教員に戻って同じことをやれと言われたら絶対にできません。

 

しかも、そうした仕事をしている環境の中で、エアコンもないのです。

さらには、職員室の中で、タバコを吸う先生もたくさんいたので、その煙が流れてくると吸わない人にとっては、これまた地獄のような環境です。

もちろん、今よりもパワハラなんて教員間でもひどいに決まってるし、教員同士の飲み会なんて、先輩が後輩に無理矢理飲ませるものだし、教員は、みんな飲酒運転をして帰っていきました。

部活動の手当なんて、何もなく、遠征に行こうが、何しようが全て自己負担のただ働きでした。

女性に対する差別なんて全力であるに決まってるし、少なくとも35年前はこんな世界でした。

 

教員の世界と言うのは、大体いつも世の中よりは遅れています。

労働環境も同じです。

何度も言いますが、こんな35年前の環境で二度と仕事なんてしたくありません。

もちろん、今の労働環境が良いと思わないし、それを我慢すべきことでもありません。

 

ただ、こうやって35年前の教員の労働環境を書き残しておきます。

なお、35年前の教員でも、きっと個々には違う状況もあったと思います。