高橋是清が、財務大臣なら | これでも元私立高校教員

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30年以上の教員指導を通じて、未来を担う子供たち、また大人の思考などをテーマに書き綴っています。
日本史と小論文の塾を主宰し、小学生から大学生、院生、保護者の指導をしています。

戦前に高橋是清と言う大蔵大臣がいた。

81歳で最後の大蔵大臣を務め、226事件で、軍部の卑劣なる凶弾に倒れた。



その高橋是清が1934年、軍事費拡大を強く要求する。軍部との予算折衝でこのように述べている。


『軍事予算の膨張はいたずらに外国の警戒心を刺激し、外交工作の機会を少なくするばかりか、予算内容の国防偏頗(へんぱ)(偏り)が国民経済の均衡を破ることになる』


現在の日本政府の財務大臣の言葉ではない。戦前の日本の大蔵大臣の言葉である。


81歳の高橋是清は、人生最後の1936年度予算の編成で『公債漸減方針』を掲げる。つまり悪性のインフレを警告し、国債の発行を減らすべきだと主張したのである。

初回の予算閣議でこう述べている。


『ただ国防のみに専念して悪性インフレを引き起こし、その信用を破壊するごときがあっては、国防も決して安固とはなりえない』


さらに続く。


『国防というのは攻め込まれないように守るに足るだけでよいのだ』

『軍部が常識を欠いた幹部が政治にまで嘴(くちばし)をいれるというのは言語道断、国家の災い』


この厳しい軍部への批判が新聞で報じられ、2・26事件につながり、こともあろうか国家を守護すべき軍が、国家の大蔵大臣を殺害したのである。



 陸軍は、大国債は、どれだけ発行しても、国の借金ではないと考えていた。

結果として、1937年には日中戦争が始まり、日本は戦時国債(赤字国債)発行し続けて、日本は財政的な負け戦の状況で太平洋戦争に突入していくことになる。

そして、その戦時国債は、敗戦によってゴミクズとなるのである。


日本は今防衛費を大幅に増加しようとしている。しかも財源は無いので、増税をしようとしている。

むろんこれからも赤字国債を発行し続けるであろう。


高橋是清は、国際協調を重視した。今の日本政府も国際協調を重視して防衛費を増やすのかもしれない。

しかしそれはアメリカの軍需産業を利するためだけかもしれない。

クラスメイトがエルメスを買ったからといって、お金もないのに借金をしてエルメスを買えば、見栄は晴れるが後々困るし、見栄は際限がない。


高橋是清が、今の時代の財務大臣であれば、果たして防衛費を2倍にも増額するだろうか。

それとも、デジタルや教育予算を増やすだろうか。

国会百年の計とはこういうことである。