2024.3.29(金) 19:30~20:10
劇工房MAKO企画アトリエ詩苑
カフェに一人で入って来た婦人が紅茶を二杯頼む
この女の人は何かいわくつきのモノを抱えているはず
追加で注文しないで、初めから二つのカップがテーブルに並ぶ事を望んだ
「後から直ぐに連れが来ますので」 と言わない訳は?
紅茶を持って来たウエイターに手紙らしきものを渡す
その内容が悲劇的なものである事はその婦人の表情から推測できる
その娘さんは、かってこの店に通っていた
ウエイターはその女の恋が成就する事を願って応援したが
結果は失恋し、女も持病の病に倒れてしまっていた
若くして病に倒れた女の手紙にドラマがある と思ったがそうではなかった
この芝居の主役としてスポットライトを浴びているのはウエイターだった
女が望んで座っていた「陽当たりの良い席」を敢えて予約席にした
もう二度と女が座る事のない席を永久欠番のように保存した
他のお客さんに座らせない席として
女の恋を応援していたウエイターは
「私は貴女が好きです」と言えなかった代わりに予約席を作った
と、思える
亡くなった人の為に出す食事を「陰膳」と言うが
その人が好きな飲み物でもそれに相当するらしい
だから、あの婦人は紅茶を二杯頼んだ
婦人はここで娘と二人で紅茶を飲めなかった事を残念に思っていない
娘が書いた手紙の相手が好ましい青年だった事にホッとした
なんとなく歌を思い出す
「オン・ザ・サニーサイド・オブ・・ストリート」