「本当に遅くなってごめんね。愛してる
よ。君だけを愛してる。キョーコ。」
彼はそっと口づけた。
「最上さん、気がつかれましたか？」
「あ…はい。」
キョーコは見知らぬ場所で目覚めた。
話しかけてくれているのが、看護師なの
で病院なのだろう。
「残念ですね。先ほどまで彼氏さんいら
したのに帰られましたよ。」
「彼氏？」
「ものすごく背が高くてハリウッド
スターみたいな方。金髪で碧色の目を
した…」
看護師はうっとりしながら話した。
(…コーンだ！！)
先程の夢の人はコーンだったのだ。
妖精の王子コーンはキョーコに愛を
告白し、口づけした過去があった。
(…敦賀さんじゃなかった。)
キョーコは落胆した。
「最上さん、マネージャーさんからご伝
言です。事務所でトラブルが起きたの
で、退院は明日に延期しますとのことで
す。最上さん、女優の京子さんですよ
ね？事務所大変ですね。」
「えっ？」
「あ、ごめんなさい////余計なことを
…お大事に。」
看護師は慌てて部屋を出ていった。
(…事務所が大変って？？)
キョーコは胸騒ぎがしてTVのリモコン
を手にした。
画面に映っているのはLME本社前。
インタビューを受けているのは
松島主任。
「敦賀さんの熱愛報道ですが、事実で
すか？」
(…つ、敦賀さんの熱愛？！)
キョーコは大きく目を見開いた。
ベッドに正座して報道を凝視する。
画面に映るのはお洒落なお店から出て
くる蓮と美しい女性。
寄り添っていていかにも親密そうだ。
「初ロマンスがお色気女優というのに
我々驚いていますが事務所のご見解を
お願いします。」
幹事社のテレビ局が代表して質問して
いた。
「本人から友人のひとりと聞いておりま
す。」
「キスしている写真もあるらしいです
が。」
「軽い挨拶だと思います。なにせ抱かれ
たい俳優No.1ですから。」
松島主任の言葉に報道陣から笑いが起
きる。
キョーコはTVのスイッチを切った。
(…敦賀さんがキスした？あの胸の大きい
女優さんと…私があんな目にあってる
時にデートしていた…キスを…キスを…)
キョーコは溢れる涙を止めることがで
きなかった。
「うわあああん、うぐっ…敦賀さん」
誰もいない病院の個室でキョーコは
声をあげて泣いた。
(…敦賀さん、諦めきれないよぉぉ、胸が
苦しくて張り裂けそうですぅぅ。)
その人は涙に濡れた目元を指で拭った。
「可愛いキョーコ。泣いているの？何か
辛いことがあった？君にはいつも笑って
いてほしい。愛してるよ。」
彼はそっと口づけた。
「キョーコちゃん、おはよう。」
「おはようございます。」
「あの…キョーコちゃん、蓮のこと
聞いてる？」
社はおずおずと尋ねた。
「熱愛の？」
「それもだけど、あいつ行方不明なん
だ。ここに寄ってない？」
「いえ、いらしてません。」
「蓮はキョーコちゃんに逢いたがってい
たんだよ。あの日はオフで事務所で
キョーコちゃんを待っていたらしいん
だが、貴島くんに誘われて飲みに行った
らしい。」
「そう…ですか。」
「蓮、何やってるんだ。明日からもう
仕事始まるっていうのに…」
社は珍しく苦虫を噛み潰したような
顔をした。
「無遅刻キングですから大丈夫だと思
いますよ。」
キョーコは微笑んだがそれは営業
スマイルだった。
「君はなぜ起きていたの？」
「貴方をお待ちしていました。」
「ずっと君に逢いたかった。オーディ
ションの日に合わせて帰ってきたのに
あんなことになるなんて。」
「私も貴方をお待ちしていました。怖
い目に遭って…敦賀セラピーして頂き
たかったです！」
「わかった。おいで。」
蓮は両手を広げた。
「キョーコちゃん！！大丈夫？」
社はうずくまるキョーコに声をかけ
た。
「大丈夫です。すぐ駆けつけて頂き
ありがとうごさいました。」
「顔色悪いけど大丈夫なの？」
「えへへ。恐怖のあまり地獄に落とさ
れた夢を見ていました。」
「天に召されたとか言うんじゃない？
何故に地獄？とにかく無事でよかっ
た。」
「はい、ありがとうございました。」
End
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何故書いたんでしょう
触れたくない部分をあえて。またあの方の
舞台を見に行く予定になっているので浮かれ
ていたかも。
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