「日本人いないんだね。この店。」
貴島は辺りを見渡しながら言った。
「俺の隠れ家的店だけどお気に召さな
い？」
蓮は奥の席に貴島を連れていく。
「洒落た店だと思うけど、俺を値踏み
するような視線がちょっと怖いね。」
「貴島くん、いい男だからね。」
蓮はクスッと笑いながらバーボンを
注ぎ、貴島に渡す。
「いい男は敦賀くんだろ？そんな男が
どうして京子ちゃんにこだわる？」
「……………」
「不破だろ？気にしてるのは。大原さん
や逸美ちゃんから情報収集済さ。ティー
ンのカリスマで歌手イケメンランキング
で常にレイノと競ってるとか。」
「……………」
「京子ちゃん、可愛いし、性格いいけ
ど、もっと魅力的な娘は山ほどいるよ。
どうして未成年でめんどくさそうなあの
娘なの？」
「彼女のよさは俺さえ判ってればい
い。」
「う…ん。敦賀くん、まったく女性に興
味なかったよね。皆でアッチの世界だね
と噂してたくらい。京子ちゃんに君を
蕩かすほどのテクがあるとも思えないし
…もしかして昔からの知り合い？」
「彼女の料理しか俺の喉を通らない。」
「ん？」
「彼女の上目づかいの眼差しにドキドキ
するし、彼女のコメントひとつひとつに
勇気が湧いてくる。」
「本当に好きなんだね。告白したらいい
じゃないか。」
「しない。」
「へ？」
「ずっと見守ってる。」
「まるで足長おじさんだね。俺が告白し
ちゃうよ。」
「いいよ。」
蓮は暗い眼差しで微笑んだ。
「君のライバルは不破だけという訳
か。」
貴島は苦笑した。
その時、蓮のスマホが鳴った。
「はい、俺です。え、最上さんが？！
病院は？すぐに行きます。」
蓮はテーブルに一万円札を置くと
「すまない、貴島くん。ゆっくりして
いって。」
おもむろに席を立つ。
「おいおい。京子ちゃんに何かあったん
だろ？俺も行く。」
End
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え？本誌もうひとりいたでしょ？
知らないよっ！
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