書籍 『影踏亭の怪談 (創元推理文庫)』大島清昭 | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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 【僕の姉は実話怪談作家だ。本名にちなんだ「呻木叫子」というふざけた筆名で、民俗学でのフィールドワークの経験を生かしたルポルタージュ形式の作品を発表している。ある日姉の自宅を訪ねた僕は、密室の中で両瞼を己の髪で縫い合わされて昏睡する姉を発見する。この怪現象は、取材中だった旅館〈K亭〉に出没する霊と関連しているのか? 調査のため〈K亭〉こと影踏亭を訪れた僕は、深夜に発生した奇妙な密室殺人の第一発見者となってしまう――第十七回ミステリーズ!新人賞受賞作ほか全四編を収録する、怪談×ミステリの最前線。(「BOOKデータベース」より】

 2021年刊行。

 初読みの作家さんです。
 4つの短編が収録されてます。

 本作の主人公は実話怪談作家の呻木叫子です。怪談の舞台になった現場を訪れ、できるだけ多くの関係者に話を聞くというルポルタージュ形式の作風を得意としてます。
 この呻木叫子が怪談の取材中に遭遇した(時には被害者にもなります)事件を解決していくのですが、その事件の様子を描写したパートの間に「呻木叫子の原稿」と題したルポが挟み込まれるという構成になってます。

 各話不可思議な怪談話が存在する現場で実際に殺人事件が起こります。それも密室殺人です。人間の仕業とは思えない状況での殺人ゆえに心霊の仕業かとなるんですが、呻木叫がその真相を暴いていきます。

 本作は怪談とミステリーがブレンドされたスタイルなんですが、実際に心霊現象も起こる中での殺人事件で最後まで謎のままで終わる部分も多々あります。

 どの短編も怪談の部分はなかなか気持ち悪くていい感じだし、文章も上手いんで非常に引き込まれるんですが、最後のミステリーの真相部分にちょっと物足りなさを感じました。
 極端ないいかたをすると、なんということもない事件を怪談を絡めることで非常に惹きつける物語に昇華していくというパターンで、それはすごく上手いなって思うんですが、起承転までが抜群におもしろいだけに真相部分にどうしても肩透かし感を覚えてしまいましたね。

 でも全体的にすごくクオリティは高いと思うんで、ミステリーよりもホラーに軸足を置いて読めばかなり楽しめるのかなと思いますね。
 同じ主人公で長編作品もひとつ文庫化されてるんで、とりあえず読んでみようかなと思ってます。