書籍 『氷の致死量 ((ハヤカワ文庫JA)』櫛木理宇 | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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 【私立中学に赴任した教師の鹿原十和子は、自分に似ていたという教師・戸川更紗が14年前、殺害された事件に興味をもつ。更紗は自分と同じ無性愛者ではと。一方、街では殺人鬼・八木沼武史が“ママ”を解体し、その臓物に抱かれていた。更紗に異常に執着する彼の次の獲物とは……殺人鬼に聖母と慕われた教師は、惨殺の運命を逃れられるのか?『死刑にいたる病』の著者が放つ、傑作シリアルキラー・サスペンス!(「Bookデータベース」より)】

 2022年に刊行された作品です。

 前回読んだ「侵食」はちょっと櫛木作品にしてはライトな感じで若干物足りなかったんですが、今作は文章的にも内容的にも重厚感があって読み応えがありました。

 ミッション系学園の中等部に本作の主人公である鹿原十和子が赴任してきます。実は14前にこの学園で戸川更紗という教師が殺害されるという事件があったんですが(犯人はまだ捕まってません)、その戸川更紗に鹿原十和子がとても似ている設定で序盤から不穏な空気が漂ってます。
 十和子の鞄に脅迫状が入れられ、頭上から鉢植えが落ちてきたり、書棚が倒れてきたり、さらには生徒の母親が殺されたりとどんどん緊張感が高まっていきます。

 十和子のエピソード並行して娼婦を殺し解体するシリアルキラーの八木沼武史の狂気的な動向が描かれていきます。

 犯人は最初から八木沼だとわかってるんですが、これが土壇場で意外な展開が何度もあっておもしろかったですね。
 
 今作では性的マイノリティ、虐待、毒親など社会的な問題にも多く触れられていて色々と考えさせられる部分もるし、主人公十和子の成長の物語にもなっていて読み応えは十分ありました。
 ラストも前向きで読後感もよかったです。