書籍 『長い長い殺人 (光文社文庫プレミアム)』宮部みゆき | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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 【轢き逃げは、じつは惨殺事件だった。被害者は森元隆一。事情聴取を始めた刑事は、森元の妻・法子に不審を持つ。夫を轢いた人物はどうなったのか、一度もきこうとしないのだ。隆一には八千万円の生命保険がかけられていた。しかし、受取人の法子には完璧なアリバイが…。刑事の財布、探偵の財布、死者の財布―。“十の財布”が語る事件の裏に、やがて底知れぬ悪意の影が。(「BOOK」データベースより)】

 1989年に雑誌で連載が始まった作品で、宮部さんデビュー当初の作品です。 

 一人の会社員のひき逃げ事件が妻の保険金殺人疑惑に繋がっていきます。さらにこの女の愛人の周辺でも殺人事件が起こっていて2人による保険金目当ての交換殺人ではないかと警察は睨むんですが、決定的な証拠がなく逮捕にはつながりません。ただ、マスコミはこの2人をほぼ犯人と確定したような報道を連日行い、容疑者の2人は一躍時代の寵児となります。

 全部で11章からなるんですが、各章ごとに違う目線で描かれるんですが、この作品のユニークなところは、各章の主人公の持つ財布が語り部になっているとこです。
 財布自体は周りの声が聞こえたり、見えたりするという設定になってるんですが、基本的にポケットやカバンに入ってるので所々聞こえなかったり、見えなかったりするところがいいアクセントになってます。

 犯人と目される2人の不倫関係にある男女がかなり強かで、マスコミをいいように利用して有名人になっていくんですが、この犯人像や作品に雰囲気はのちの『模倣犯』を思わせる印象を抱きました。さらにひとつの事件を複数の人間のドラマで描いていくところは『理由』っぽいですね。

 途中でまさかと思う人物が殺されたりして、結構引き込まれて読んだんですが、ラストの方で個人的にはやや不満な展開になったのは残念です。
 Amazonレビューでも低い評価をされてる人はほぼこの点に不満を抱いてましたね。

 この作品2007年に映画化されてるんですが、映画の評価は各映画サイト星3にも満たないというかなり低目になってますね。小説はそれなりにおもしろかったです。