書籍 『怖ガラセ屋サン』澤村伊智 | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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 【誰かを怖がらせてほしい。戦慄させ、息の根を止めてほしい。そんな願いを考えてくれる不思議な存在――。「怖ガラセ屋サン」が、あの手この手で、恐怖をナメた者たちを闇に引きずりこむ! 怪談は作りものだと笑う人、不安や恐怖に付け込む人、いじめを隠す子供、自分には恐ろしいことは起こらないと思い込んでいる人……。こんなヤツらに、一瞬の恐怖なんて生ぬるい! 気づいたときは、あとの祭り。 “怖がらなかったこと"を、後悔させてあげる――。 一話ごとに「まさか! 」の戦慄が走る、連作短編集。(Amazon内容紹介より)】

 2021年に刊行された作品で、7つの話からなる連作短編集です。
 ざっくりいうと「怖ガラセ屋サン」なる人物が(その時々で名前は変わるけどショートの黒髪と黒い服を着てるとこは共通)依頼を受けてターゲットとなった人間を怖がらせに行くという話なんですが、単に怖がらせるっていうだけでなく、ターゲットとなった相手は精神崩壊したり、自殺に追い込まれたりします。

 この「怖ガラセ屋サン」ですが、霊的なものではなく、かといって人間でもなく、都市伝説に出てくる化け物みたいな感じですかね。

 特に気に入った話を紹介します。
 第3話「子供の世界で」は小学校が舞台になってて、仲良し4人組の一人の子が、ちょっとしたことがきっかけで他の3人からいじめられるようになります。それがやがてクラス中に広まり、ある日その子は車に轢かれて死んでしまいます。
 1週間ほどして黒尽くめの女が自殺した子の家を訪ねてきたのをきっかけにいじめてた3人がどんどん精神的に追い込まれていく羽目になります。
 追い込まれかたの演出がなかなか斬新でよかったです。

 第4話「怪談ライブにて」は怪談ライブが舞台になってるんですが、主人公の男の怪談師たちに対する、その話や話し方についての批判が的を得ていて興味深かったです。澤村さんの何気に怪談師なる連中を小馬鹿にしてる感じが伝わってきておもしろかったです。

 第6話「見知らぬ人の」はくも膜下出血で入院してる男の同室の患者を毎日訪ねてくる女性がいます。年齢的に娘のようでいつも1時間くらい楽しげに話をして帰るんですが、この女の正体にゾッとします。さらに度肝抜かれるどんでん返しがあって非常に怖かったですね。
 ぜひ『世にも奇妙な話』でドラマ化して欲しいです。

 澤村さんが思う「恐怖とはなんぞや?」みたいなものが伝わってきておもしろかったです。
 作中に出てくる「恐怖とは嫌な予感である」って一文が非常に印象に残りましたね。