【1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは―。あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。(「BOOK」データベースより)】
横山さんの作品を読むのは『64ロクヨン』以来2冊目です。
解説ではじめて知ったんですが、日航ジャンボ機が群馬県の御巣鷹山に墜落した当時横山さんは地元群馬の新聞社の記者だったんですね。まさしくこの作品の記者たちと同じようにあの大事故を受け止めたひとりだったわけで、この作品のリアリティにも納得いきました。
ご存知ように映画化されてて、個人的にもすごく好きな映画なんですが、やっぱり小説のほうが心理描写も細かく、より深く描かれてておもしろかったですね。
社長派と専務派との陰湿な抗争、編集局と広告、販売、出版局との対立など人間模様がとてもリアルに描かれてます。特に主人公悠木が「大久保・連合赤軍事件」に中心的な立場で関わったことを鼻にかけた幹部たちに真っ向立ち向かう姿は読んでいて熱くなりましたね。
普通のエンタメ小説なら嫌な幹部たちに最後に一矢報いてカタルシスを感じる展開が用意されてるんでしょうけど、今作は最後まで権力には勝てずで終わるとこが多少やきもきもするんですが、リアリティもありましたね。
ただ、記者仲間たちの言葉には感動しました。あとラストシーンはほのぼのしていて読後感はよかったです。
新聞社内の人間ドラマだけでなく、悠木と息子との物語もよかったですね。
映画では省かれていたエピソードもいくつかあるんですが、どれもよかったですね。映画を観て少しでもおもしろいと感じた人には是非読んでもらいたいです。より深い感動を得られると思います。