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【ダーウィンと同じく“進化論”を唱えたイギリスの博物学者・ウォーレスは、『香港人魚録』という奇書を残して1913年この世を去る。2012年、セントマリア島を訪ねた雑誌記者のビリーは、海難事故で人魚に遭遇する。マリア一号と名付けられたその人魚は、ジェシーという娘に発情してしまう。2015年、沖縄の海で遭難した大学生が、海底にいたにも拘わらず、三ヵ月後無事生還する。人はかつて海に住んでいたとする壮大な説を追って、様々な人間達の欲求が渦巻く。進化論を駆使し、今まで読んだことのない人魚伝説を圧倒的なストーリーテリングで描く渾身作。(Amazon商品紹介より)】
1997年に刊行された作品です。
久しぶりに再読しました。
もともとは1996年に公開された石井竜也(カールスモーキー石井)が監督した「ACRI」の脚本を依頼されたものの難航し、最終的には脚本を降板して後に小説として完成させた作品です。「ACRI」とは全然違うテイストのものです。
人魚ものというとファンタジーでかわいい話ってイメージがあるんですが、今作は主要人物に博物学者で生物学者のアルフレッド・R・ウォーレス、海洋生物学者のほか進化学や遺伝子工学の権威の人間などが多いんで、かなり専門的な考察などが多く出てきて、結構リアリティを感じる内容になってます。
本作で人魚とは人間が進化の過程のなかで、海へとその生息地を求めたものがいて、その生き残りが人魚とよばれるものという説になっていて「ホモ・アクアリウム」と呼称してます。
ちなみに今作に出てくる人魚は見た目はほぼ人間と一緒です。
まあ、地味といえば地味な作品ですが、岩井俊二の小説のなかではかなり娯楽性が高くわりと派手めの作品かなと思います(あくまで岩井作品のなかではですよ)。人魚同士の性行為のシーンをはじめ結構グロテスクな描写も出てきます。
文庫本で約570ページの長編ですが、退屈せずに読めました。ラストシーンも爽やかで読後感もよかったです。岩井さんの小説の中では一番好きです。ネットでも評価は高いですね。