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【京都府警サイバー犯罪対策課の万田は、ITエンジニア誘拐事件の捜査を命じられた。協力者として現れたのは冤罪で汚名を着せられたハッカー、武岱。二人の捜査は進歩的市長の主導するプロジェクトの闇へと…。行政サービスの民間委託計画の陰に何が?ITを知りつくした著者が描くビッグデータの危機。新時代の警察小説。(「BOOK」データベースより)】
以前読んだ『ワン・モア・ヌーク』がすごくおもしろかったんですが、今作も期待通りでした。
2012年に起こったパソコン遠隔操作事件、佐賀県の武雄市図書館の官民連携システムをベースに描いてます。
今作のおもしろいとこは主人公の京都府警サイバー犯罪対策課の万田がかつてXPウイルスというコンピュータウイルスを作成、配布した容疑で自身が何ヶ月にもわたって取り調べをした武岱修(ぶだいおさむ)と組んで捜査にあたるという部分です。警察内には今回の誘拐事件に武岱が関わってるんじゃないかという疑念を持つものも多くいて、はたして武岱はシロなのかという謎をひっぱりつつ事件の真相に迫っていきます。
警察小説としても十分おもしろいんですが、IT業界の最大の闇ともいえる多重下請構造の中での、プログラマーたちの残酷な下請け状態や労働環境の悪さなどの実態も生々しく描かれています。
さらには個人情報保護法やマイナンバーカードの法的な不備にも言及されてて決して絵空事ではない怖さもがありましたね。
作者の藤井さんは元々ソフトウェア開発会社に勤務されててIT関連の知識に関してはプロフェッショナルなので描写に非常にリアリティがあるんですが、ただIT用語がバンバン出てきて僕のようなコンピュータにうとい人間にとっては難しい部分も所々ありました。
とはいえキャラクター(特にITのプロフェッショナルにしてレスラーのような肉体と格闘術を備えた武岱修)が魅力的なんで最後まで楽しんで読めました。