コンロッドの軽量化1980年代当初までは、すべての2輪車メーカーが、共通して20年も前の古典的な材料力学を踏襲していた。当時は未だコンピューターが普及して折らずCAEを用いてのシミュレーション解析とは程遠く経験によって材料強度の計算が行われていた為にコンロッド等やクランクケースには無駄なぜい肉が付き過ぎていた。GSX-R750の開発時にコンピューター解析を導入して、それらのぜい肉を取り除けば凡そ20%くらいの軽量化は可能ではなかろうかと見込まれていた。スズキの場合、1980年ごろにはコンピュータシミュレーション技術はほぼ確立されていて、業界の中でも導入としては早いほうであった。そのひとつに有限要素法(FEM:FiniteElementMethod)と呼ばれるコンピュータによる応力解析方法があり、この計算技法を用いれば、実際に品物を造って実験とテストを繰り返さなくても最適設計ができる。エンジンを構成するコンロッドには吸気の際にピストンを引っ張る力が働き、往復運動の慣性力、爆発圧力による圧縮力等が加わった時、壊れるか壊れないか、壊れるとすると、その場所はどこからか。壊れない時には、丈夫すぎる部分はどこかがすぐに判る。力の加わる度合いを応力(Stress)と呼ぶ。ある部品に所定の力が加わったとき、場所によって応力は均一ではない。過大応力の個所は壊れるし、過小応力の部分は無駄が多いことになる。これらはコンピュータグラフィックとして画面にカラー表示されるので、ひと目でその適否を判断することができる。過大応力部分は補強し、過小応力部分は除肉して軽い部品の形状を求めることができる。このことを、実際に部品を造らないで行うので、我々は、机上実験〃とも称していた。1960年頃に妥当とされた設計内容を、FEM技法などでチェックすると、無駄な部分がいっぱいみつかる。部品が大き過ぎたり、無駄な肉がついていたりして、エンジン自体の強度を上げている反面、エンジンを構成する部品が重量を重くしてしまっていた。GSX-R750のコネクティングロッドの軽量化に際し、従来のものをFEM解析してみると、強い部分と弱い部分がアンバランスに配置されていることが判明し、“コンロッド全体にわたり応力を限界値近くに合わせて、アンバランスをなくして軽量化する”との方針を打ち出している。GSX-R750が開発される以前のGSX750S3に使われたコンロッドはかなりのぜい肉が付いて高強度ながら重い。