でぶるまんしゅーじですねん(間もなく閉鎖) -227ページ目

価値をつけられない君の笑顔

その女性に会ったのは、ある日曜の昼だった…



彼女の家は、少し変わった目立つ洋風の建物で、

とにかく窓が大きかった。


庭先にはベンチ。
彼女のものだろうか、大きな人形が置かれていた。

僕は誰に教わるわけでもなく、
なにかに導かれるように、その家の入り口に建った。

ドアは開いてた。


日本の家とは違って、

扉の奥はすぐにリビングダイニングになっていた。


その時、僕はひどく空腹だったので、

ダイニングの奥にあるはずのキッチンに向かった。


自分の家でもないのに、

なぜだか許されるような気がしていたからだ。


そして僕は、彼女を見つけたんだ。


広いアイランドキッチンタイプのカウンターで

彼女は可愛い笑顔で僕を待っていてくれた。


僕は迷うことなく彼女のところに真っすぐ向かい、

その笑顔の前に立ちどまった。


彼女の微笑み。


それはまさに、価値を付けられない笑顔…


すると彼女は、まるで僕の心を読んだかのように、

ここで食事をしていきませんか…と

優しく僕に訊いてくれたんだ。


「はい」


そういうのが精いっぱいだった僕。


彼女は優しかった。

そして、本当に気配りが出来る少女だった。

突然、勝手に入り込んできた男に、

驚きもせず、恐れもせず、そして咎めもせず、

食べたいものを僕に訊いてくれたんだ。


僕は本当に空腹だった。


パンと、肉、野菜。

そういったものをまとめて食べたい…


まるで彼女の夫のように、彼女のカレシのように、

わがままに望むままに応えてしまった。


まったくヒドい男さ、僕は。


それでも、彼女は笑顔を絶やさなかった。

そのうえ、もっと食べたいものはないかと

訊いてくれる笑顔の天使。


渇いた喉を潤すものも欲しい。

そうだな、何か冷たいデザートもいいな。


ほんと、僕は世界一のわがままな男さ。

彼女の笑顔に甘えてばっかり…



彼女はやがて、僕に食事の用意をしてくれた。


あなたの自由にどこでも好きな場所で食べて…


まるで僕が、この家の主であるかのように

彼女はそういった。


「ありがとう」


やがて僕は、大きくため息をついてから、

ようやく彼女の前から立ち去る決心がついた。

眼を閉じ、口をぐっとむすんで振り返る。


すると、彼女は名残惜しそうに

僕に向かってこういってきたんだ。


「お客様、こちら、ハッピーセットのおもちゃ、
 ドラえもんくるりんスタンプでーす」