世界は贈与でできている 2 | 野村孝博のブログ

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 一昨日の続きです。

 

 ダブルバインドともう一つ、アノマリーという言葉が登場します。アノマリーは「常識に照らし合わせたとき、上手く説明のつかないもの」一般を指すものだそうですが、この範囲が結構広くて、理解しきれませんでした。それでもシャーロック・ホームズとか小松左京の作品とかを引用して、面白く解説してくれるので、差し当たって、シャーロック・ホームズと小松左京を読みたくなりました。

 

 そこから、急に「止まって動かない、宙に浮いたうに見えるボール」へと話が飛びます。そう見えるボールですが、「止まって動かない」のは、くぼみの底のようなところで安定しているのか、はたまた丘の頂上のようなところで不安定ながらもつり合いが取れているのかと話を展開していきます。そこから、小松左京の作品も交えて、現代人が当たり前に享受しているライフラインは、実は丘の頂上で「止まって動かない」ボールで、それを安定させるために様々な力が働いているということでした。こういう話になると、我々の業界も一枚絡んできますが、それよりも停電時に復旧作業に勤める作業員とか、豪雪時に雪かきに出動する自衛隊とかも思い出されます。しかし、自衛隊は置いておくとして、ライフラインの維持は、著者のいうところでは「交換」に当たるのではないかと思えました。ですから、この辺りでも納得がいかないわけです。しかし、それらを維持しているのは実は功績が顕彰されることがない、歌われることがないアンサング・ヒーローだということでした。

 

 このアンサング・ヒーローは、本書では、「堤防にあった蟻の穴を、そのあたりの落ちている小石で塞いだ人」だとありました。塞がなかったことによって、その穴から堤防が決壊し、洪水に見舞われるところなのですが、穴をふさいだ本人はそんな意識はない、もちろん周りも評価しないアンサング・ヒーローだということです。作業前に「気をつけて」と声をかけることによって、その声が事故を未然に防いているなんていうこともありますから、分からない話ではありません。ですから、交換だけでなく、こうしたアンサング・ヒーローの存在も、安定には必要なのだということでしょう。

 

 そこから「市場経済のシステムの中に存在する無数の『すきま』そのものが贈与なのです。」とありました。この言葉が妙にしっくり来て、最初に自分が考えた「そもそも「交換」であるはずの、仕事の取引は信頼がなければ成り立たないわけです。」というところが、氷解していきました。

 

 でも、レビューした結果はこんな感じでしたが、最初に読了した時は、もう少しスッキリした読後感でした。そして、レビューを経ても、きちんと理解が出来ているわけではありません。でも、そんな感じではっきりしないのが哲学なのかもしれません。楽しく読ませて頂きました。