11月25日に、現職の河村たかし氏の衆院選立候補にともなう失職による名古屋市長選挙が投開票されました。結果は元名古屋副市長で、河村たかし氏が後継指名し、減税日本、日本保守党が推薦する広沢一郎氏が圧勝しました。開票開始直後、開票率0%に近い状態で広沢氏の当選確実が出ましたが、この現象を「ゼロ打ち」というのだそうです。
立候補者は7名でしたが、広沢氏が392519票獲得して、得票率53.43%、次点の大塚耕平氏が261425票獲得して得票率35.58ですから、実質このお二人の対決だったといっても良いでしょう。大塚氏は国民民主党の参議院議員でしたが、今年の4月末に離党し、11月に議員辞職しての立候補です。国民民主党、立憲民主党、公明党が推薦しており、独自候補の擁立を断念した自民党も推薦と与野党相乗りで応援、大村愛知県知事も支援にまわっています。この候補者相手にゼロ打ちで勝つのですから凄いです。
広沢氏は河村市政での市民税減税を引き継ぎ、更なる減税も公約していました。他に保育料無償、市バスの子供パス無償などなどありましたが、名古屋城天守閣の木造復元、東山線の昼時間帯増発、東山動物園のコアラを抱っこできるようにすると目を惹くような面白い政策もありました。
大塚氏は、「家計のサイフ10%アップ!」と掲げ、給食費ゼロ、市バスだと思いますが敬老パス無償化、子ども・学生パスの導入、がん検診費ゼロなどを打ち出しています。「家計のサイフ10%アップ!」というと聞こえは良く、元国民民主党だけに国民民主党の「手取りを増やす」とダブりますが、中身を見ると減税策は一つもなく、無償化ばかりです。無償化というのは税金化と同意ですから、政策に共通点はあるものの、はっきりと「減税」を打ち出している広沢氏とは大きな違いがあり、その辺りがしっかり結果に反映されたのかなと思います。
大塚氏は落選を受けて「デマが浸透していた。選挙妨害に近い行為なので、今後どう対応していくか政治全体の課題だと思う」とコメントしています。この「デマ」というのがどいうものなのかといえば、読売新聞によると「河村氏の看板政策の市民税減税について、「効果を検証して判断する」と明確な態度を示さなかった大塚氏に対し、SNSでは「増税派」とする投稿が拡散。さらに、大塚氏を「移民推進派」と呼び、治安悪化につながるとする投稿もみられた。」というもののようです。これらについて大塚氏は動画で否定したそうですが、それでも明確に「減税」とは言えなかったのですから厳しいでしょう。移民推進派については「VOICE」の2003年9月号において「1000万人移民受け入れ構想 日本を『憧れの国』にしたい。民主党若手の共同提案 古川元久/大塚耕平ほか P 142」という記事に寄稿されているようです。流石に20年前の寄稿を引っ張り出されると気の毒な気もしますが、当時とは考えが変わった旨をきちんと説明すれば良いだけでしょう。自身の説明不足を棚に上げて、「デマ」というのは違うんじゃないかと思います。
投票率は39.63%と低迷しました。前回の42.12%よりも下がっていますが、前々回、前々々回もともに40%を割り込んでいますから毎回こんなものなのかもしれません。名古屋市民ではないので、現場の空気は分かりませんが、広沢氏で良かったのではないかなと思います。