続きです。
メンタルインキャパシテーションですが、「広い意味で、一時的に合理的で正しい判断をすることが出来なくなっている状態を指す」とありました。車の運転でも「合理的で正しい判断」が必ずできるわけではなく、10人が10人「どうしてそんなことするの?」というような状態での事故があります。このメンタルインキャパシテーションの原因の一つとして、過労が考えられるとしており、大韓航空機のパイロットの月平均飛行時間は日本航空やアメリカの航空会社のパイロットよりもはるかに長かったとありました。大韓航空機については、この事件以外にもいろいろありますが、そうしたことが原因の一つと考えられてもおかしくないでしょう。
ここから再び、「なぜ撃墜したのか?」という疑問に立ち返ります。それというのも一年後に再びスパイ飛行説がマスコミをにぎわすようになったのだそうです。こうした事態もソ連側の工作とであるように書かれておりました。自国に都合のいいことを、様々な形で流布して、既成事実を作ってしまおうなんて言うのは、各国どこでもやるのでしょうが、なんとも嫌らしいやり方をするものです。
読み進めると、アメリカとソ連のいがみ合いが中心で、航路離脱の原因についてはソ連側が情報を提供しないために、様々な仮説から検討する必要があり、大変な回り道をしているようでした。それでも、しっかりと調べる執念はジャーナリスト魂でしょうね。残念ながら、遺族の気持ちは置き去りになっているような感じで、なんとも切ない内容に感じられました。勝手な想像ですが、ソ連側はブラックボックスなども回収していた上で、自国に不利な情報があるために開示していないのでしょう。一般の乗客が乗る飛行機を撃墜しておいて、「スパイ行為をする方が悪い」と居直るのですから、凄まじいです。すぐさま撃墜して知った背景には、国境の警備をする飛行機には、パイロットの亡命を防ぐために長い航路を飛べる量の燃料が積まれていないので、警告しながら追尾することが出来ずに、攻撃せざるを得ないなんて言う話もありました。根本的な国の体質の悪さを、対症療法で補ってきた結果のようにも思えます
結構お腹いっぱいになりましたが、まだ下巻がありますので、どのように展開していくのか楽しみです。