Δ短歌 実作Δ  歌誌「ハハキギ」作品 ―22― | のむらりんどうのブログ       ~君知るや ふたつの意識~

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2002年9月22日の早朝。目覚めて布団の上に起きあがった瞬間、私は「光の玉(球)」に包まれたのです。以来、「自我」(肉体と時間に限定されたこの世に存在する私)と、「真我」(肉体を超えて永遠に宇宙に実在する私)の、ふたつの意識を持って生きています。



   歌誌「ハハキギ」作品 ―22― (平成4年中期 1992

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[5月号]

 

取り出しし虫垂嚢を示しつつ医師はたらこのごとく皿に盛る

 

縄文人弥生人らは盲腸炎なるものを如何に処置しをりしか

 

盲腸炎は病のうちに入らぬと変な慰め方をされをり

 

目の前の茶碗の形にいとしさを覚えて来しは臥して四日目

 

日常の過ごし方まで反省をさせてくれしは病の部屋か

 

 

[6月号]

 

部を変はれど元同僚の転勤と聞けば宴に駆けつけてをり

 

遠目にも去年と変はらぬその場所に薄明かりして桜咲きゐる

 

ビルの底へ押さへ込まれてゐるやうにはりまや橋の朱色のあはれ

 

気になるは甲子園の高校野球ホテルを出づるまでテレビを見る

 

高知より南風8号にて徳島へ向かふ沿線わが初紀行

 

深き峡列車の窓より眺めつつ大歩危小歩危の霧のなか行く

 

子規の句が包装紙にも刷られをり阿波池田にて駅弁を買ふ

 

 

[7月号]

 

動くものどこにも見えぬ田園に幟の鯉は激しく泳ぐ

 

見知らぬ地ぶらぶら歩く愉しさよ右にせせらぎ左に若葉

 

墓誌の名は豪姫とあり苔ふかく物の香ただよふ松林の中

 

飛行機の窓より遠く山脈の切れたるところ虹の立つ見ゆ

 

春に来て旅の終はりに見しものは別子銅山廃鉱の跡

 

歌碑ひとつ別子の山に向かひあり山を畏るる言葉彫られて

 

ひと月に亘りし出張終へし朝わが家の庭に降る雨やさし

 

 

[8月号]

 

まづまづの額と認むるボーナスの総てが教育費となるこの夏

 

メリハリのつかぬ仕事となり来たり昼にはカレーライスを注文す

 

夕暮れの川の中ほど艇人はオールを上げて流れに従ふ

 

懸命にソフトボールの球を追ふこの日ばかりは町内ひとつ

 

いづこより流れ着きしか鴨三羽疏水の面をまるく泳げり