我が夫婦を結んでくれたかけがえのない「会」が、58年の幕を閉じたことを知りました。
カミさんの母校の同窓会が運営して来た結婚相談所です。
3月に届いていた同窓会誌を遅ればせながら開いて巻末に小さく載っていた告知記事をカミさんが見付けて知ったのです。
半世紀余りの間に、多くの会員が在籍され、400組近くのご成婚がございましたが、時代も変化し、近年は会員数の減少が続いてまいりました。それに伴い、会の運営を継続することが難しくなりました。」
確かに「時代も変化し」、結婚観や婚活スタイルもそれに連れて多様化しているとは言え、2021年に行われた国の調査によれば、適齢期の未婚男性の81%、女性の86%が「いずれ結婚するつもり」と回答しており、結婚願望は依然として高いのです。
しかし、私達が結婚した41年前に比べ晩婚率と未婚率がぐんと高まっているのも実情です。
2020年の50歳時未婚率は、女性18%・男性28%で、私達が結婚した3年前の1980年が男性3%・女性4%だったのに比べ、一桁違う高さです。
背景には、この40年の間に女子の大学進学者数が男子を上回り、仕事や研究に没頭する女性が増えて喜ばしい半面、多忙な独身男女の「出会いの場」は少なく、気が付けば「婚期」を逃すケースが増えているという事情があるようです。
また、恋愛至上主義とでもいうべき風潮が広まり、確かな出会いの場であった「お見合い」が廃れてしまったのも大きな要因と思われます。
恋愛から結婚に至るケースでは、仕事に慣れてきた20代後半で相手を見付けても結婚に至らなければ、失恋の傷を癒し次の相手を見付けて交際して成就させるまでに10年近く掛かってしまい、気が付けばアラフォー!
これに対し、お見合いの場合は、交際期間3ヶ月程度で両方の合意ができなければ「次に行く!」ことができ、10年も浪費することにはなりません。
タイパの良さに加え、お見合いを繰り返すうちに「自分が結婚に望んでいるもの」が明確になって行くというメリットもあります。
伝統的な「お見合い」には2つのタイプがあり、「顔が広い世話好きな人か要職にある人」が手持ちの見合い写真と身上書の中から選んで持ち掛けて来るタイプと、中流以上の家に出向いて茶道や華道やピアノや英会話を教える先生が「個人的に依頼された見合い話」を狙いを定めて持ち込むタイプです。
女子大同窓会の結婚相談所は、これらのいいとこ取りをした機能を持っています。
未婚率が高まっている現代だからこそ、確かな出会いの場である「お見合い」の機会を提供してくれるこの「会」の存在意義は益々大きくなっていると思っていたのですが・・・・。
女子大同窓会が運営する結婚相談所なので、申込み資格があるのは、同窓会会員、会員の家族か親戚、会員が責任を持って紹介する人物に限定されています。
OGのボランティアのおばさま方による運営なので、利用料金は会費も紹介手数料も婚約成立時の謝礼(寄付)も極めて低く抑えられており、民間業者とは桁違いの安さです。
それだけに、入り口は狭く、条件は厳しいのですが、入会後は、担当者のおばさまが親身になって支援を続けてくれる一方、浮ついた考えを捨てる等といった本人の自助努力も求められました。
さて、同窓生ではない私がこの会に入れていただけることになったのは、次のような経緯によるものです。
営業訪問先企業の課長が気に入ってくれて、部下の素敵な女性を紹介して下さろうとしたところ、豈図らんや、その人には既に婚約者がいて叶わず、課長と奥様が気の毒がって、奥様が母校のこの会への入会を手引きして下さったというわけです。
私はその時点(28歳)の前年に海外研修生としてロンドンに7ヶ月間派遣されていたのですが、それまで全く結婚を考えたことが無く、上司から持ち掛けれた取引先の偉いさんの娘との見合い話も断ってばかりいたのに、海外勤務に独身で派遣されて来ている先輩の様子を見て、いずれ自分が海外勤務に出される時に独身のままでは辛過ぎると痛感、帰国後に婚活を始めたのでした。
私の「婚活」は、まずは勤務先企業部グループが福利厚生施策として運営していた結婚相談所に入会したことです。
何人か紹介されてお見合いし1勝1敗といった状況のところでこの同窓会の相談所へも入会でき、並行して進めるうち、この会で3人目に紹介されたのがカミさんだったのです。
そして、件の課長に紹介され損なった女性は、カミさんの知り合いだった!というオチまで付いてきました。
そんなわけで、我が夫婦の生みの親であるこの会がひっそり幕を閉じてしまったことは残念でなりません。